【駄作】007 ダイ・アナザー・デイ_壊滅的に面白くない(ネタバレあり・感想・解説)

軍隊・エージェント
軍隊・エージェント

(2002年 イギリス、アメリカ)
ボンドが00ライセンスを抹消されるというハード路線で始まったのに、いつのまにかムーア時代の緩い空気になっていくという中途半端な作品。シリーズの悪いところがギュッと凝縮されたような内容で、ブロスナンボンドでは最低の出来でした。

作品解説

ダブルアニバーサリー作品

本作は記念すべき20作目にして、シリーズ第一弾『ドクターノオ』(1962年)から40年にあたるという、ダブルアニバーサリー作品でした。

そのためか製作費も潤沢で、当時としては過去最高の1億4200万ドルがかけられた実にゴージャスなアクション映画となっています。

ブロスナンによると監督候補にも錚々たるメンツが並んでいたようで、ジョン・マクティアナン、ジョン・ウー、アン・リーらが関心を示していたとか。

そしてトニー・スコットが監督するという話も検討されていたのですが、スコットが「脚本をタランティーノにお願いしよう」と言い出した時点で、製作陣はターゲットの客層から外れてしまうと考えて断りました。ブロスナンはスコットとの仕事を希望していただけに、プロデューサーの判断にはガッカリしたようです。

結局、製作陣は制御可能な監督を望んだことから、ニュージーランド出身で大作の監督経験のないリー・タマホリが選ばれました。

ただし現場でひっきりなしに撮影方法を変えてくるタマホリのやり方にブロスナンは反発し、二人の関係は最悪なものでした。

世界的大ヒット作

本作は2002年11月22日に全米公開され、前週1位の『ハリー・ポッターと秘密の部屋』(2002年)を抑えて初登場1位。

全米トータルグロスは1億6094万ドルで、それまでの最高記録だった『ワールド・イズ・ノット・イナフ』の1億2694万ドルを大きく更新しました。

国際マーケットでも好調で、全世界トータルグロスは4億3197万ドル。こちらもこの時点でのシリーズ最高記録であり、2002年の年間興行成績で第5位という大ヒットとなりました。

感想

シリーズ屈指のアバンタイトル

冒頭の舞台は北朝鮮。世界各国を舞台としつつも、リアルな紛争当事国を扱うことはしてこなかったこのシリーズが、ガチの”火種”を取り上げたことにちょっと驚きました。

ボンドはいつもながら大規模な見せ場で目を楽しませてくれるのですが、その後には北朝鮮軍に捕まるという、こちらも異例の事態を迎えます。現実には華麗なる脱出とはいかない、これまたリアルの厳しさを突き付けてくるような鋭さがありました。

とはいえこれは娯楽作品、スパイが受ける拷問を直接的に見せるわけにもいかないので、タイトルバックにて象徴的な形で見せるという表現方法も冴えており、アバンタイトルの出来の良さはシリーズ屈指のものでした。

ハード路線から平常運転への急な転調

14か月に及ぶ拷問を受けた後、捕虜交換によりボンドはMI6に返されるのですが、組織はボンドを労うどころか情報の漏洩元はボンドだったんじゃないのかという疑惑をかけてきます。

お国のためハードな状況に耐えてきたにも関わらず半ば裏切者扱いされ、Mに00ナンバーを取り消されるという屈辱までを受けたボンドは、身の潔白を晴らすために施設から脱走し、単身で情報の漏洩元を突き止めようとします。これが作品の導入部分。

ボンドが組織からの支援を受けられなくなるというシチュエーションは『消されたライセンス』以来のものであり、本作は『消された~』と同じくハード路線を行くのかなと思ったのですが、その空気が首尾一貫しないので見ていて非常に混乱しました。

まもなく、何をやってもボンドが勝利するという大衆娯楽路線が復活し、00ナンバー停止中であるにも関わらず、普通にMと作戦会議をやったりQからの秘密兵器の提供を受けられたりします。

組織を離れたボンドが身一つで戦うという路線が早々に変更されたことには座りの悪さを覚えました。

ここからのボンドは平常営業に切り替わるのですが、悪い奴が人工衛星を使った大規模な陰謀を仕掛けるという荒唐無稽な話には、やはりしんどいものがあります。

コネリーやムーアの時代には受け入れられた話であっても、映像表現がノーリミットになった時代においては、物語が地に足をつけていないと取り留めもないことになっていくのです。

本作はまさにその罠に陥っており、見せ場が派手で大規模になればなるほど手に汗握らないという逆説的な状況が発生しています。

ボンドがプロのドライバーを超えるテクニックで氷上を駆け抜けた後、サーフィンで極寒の海から生還するという見せ場にはスリルも興奮も宿っておらず、やたら派手で音のでかい映像をぼんやりと眺めるという恐ろしいことになっていました。

本作はかなりの大ヒットになったものの、この路線に未来はないと感じたプロデューサー達が次回作として『カジノ・ロワイヤル』(2006年)を製作したのは見事な采配でした。

≪007シリーズ≫
【凡作】007 リビング・デイライツ_重厚な国際情勢を軽く描く
【良作】007 消されたライセンス_地獄のような壮絶さ
【凡作】007 ゴールデンアイ_良くも悪くも伝統に忠実
【良作】007 トゥモロー・ネバー・ダイ_戦うボンドガール
【凡作】007 ワールド・イズ・ノット・イナフ_アクション映画として不十分
【駄作】007 ダイ・アナザー・デイ_壊滅的に面白くない
【良作】007 カジノ・ロワイヤル_荒々しく暴力的なボンド
【凡作】007 慰めの報酬_ジェイソン・ボーンみたいにしちゃダメ
【良作】007 スカイフォール_Mがボンドガール
【凡作】007 スペクター_幼馴染みのブロフェルド君
【良作】007 ノー・タイム・トゥ・ダイ_目を見張るアクション

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