刑事ニコ/法の死角【凡作】パワーと頭髪が不足気味(ネタバレなし感想)

(1988年 アメリカ)
点と点を線で繋ぎながら巨大な陰謀へと迫っていくサスペンスはそれなりに面白いのですが、それを捜査するセガールが中途半端に強いので少々バランスを壊しています。中途半端な強さが本作の問題で、セガール無双に振り切れているわけでもなくアクションも爆発力不足なので、どっちつかずになったという印象です。

©Warner Bros.

あらすじ

シカゴ市警の刑事ニコ・トスカーニはプラスチック爆弾を持ったマフィアを逮捕するが、上層部からの指示で即日釈放された上で、これ以上捜査をするなという指示を受ける。ここから、法の支配を受けない悪との戦いが始まる。

スティーヴン・セガールのデビュー作

謎すぎるデビューまでの経緯

本作以前のセガールは日本での修行後にLAで合気道の道場を営んでおり、大物エージェントのマイケル・オーヴィッツにスター性を見出されたことからハリウッドデビューしたと言われています。

マイケル・オーヴィッツとは、トム・クルーズ、ダスティン・ホフマン、ケビン・コスナー、マイケル・ダグラス、シルベスター・スタローンといったビッグネームのエージェントを務めてきた人物なのですが、なぜ道場主のセガールがそんな大物との接点を持ったのかはよく分かりません。

また、どんなスターでもキャリアの駆け出しは脇役からスタートするものですが、セガールの場合は本作以前に演技をしていたという記録が一切なく、大手スタジオが直接製作する作品に何の経験も実績もない新人がいきなり主演するという破格の扱いを受けています。こんな例は前にも後にも他に存在しないのではないでしょうか。

新人らしからぬ鉄板メンバー集結

監督は1985年にチャック・ノリス主演の『野獣捜査線』をヒットさせたアンドリュー・デイヴィス。同作でチャック・ノリスの空手を最小限にとどめてハードボイルドテイストとしたことが好評で、以降は娯楽アクションを手堅くまとめる監督として重宝されていました。

なお、デイヴィスを監督に指名したのは『野獣捜査線』を気に入ったセガールだと言われています。こちらでもまた、新人俳優が実績ある監督を指名するという通常とは逆の現象が起こっています。

脚本はデイヴィスとセガールが共同で執筆したとされていますが、元はワーナーがクリント・イーストウッド主演を想定してストックしていた企画の中のひとつでした。デイヴィスとセガールはこれを自分達の企画として書き換えていき、最終的に『エイリアン』『トータル・リコール』のロナルド・シュゼットによる手直しがなされました。

大スターのために取っておいた企画を受け取り、それを自由に書き換えた上で、別の一流脚本家に仕上げをしてもらう新人俳優がどこの世界にいるでしょうか。

感想

サスペンス・アクションとしてはまあまあ面白い

これだけのメンバーが集まった作品だけあって、まあまあ面白いサスペンス・アクションとなっています。

チンピラに口を割らせながら豪快に進んでいく後年のセガール作品とは異なり、本作のニコ・トスカーニは点と点を線で結ぶ地道な捜査活動をしているし、一応は組織の決まりの中で動いているため捜査には多くの制約条件が加わり、最終的には追われる身にもなるため、その八方塞がり感がサスペンスらしい雰囲気を作り出しています。そして、陰謀の黒幕も分かりそうで分からないのでミステリーとしての出来もそれなりであり、二転三転する展開は楽しめました。

セガールに要求される内容ではない

ただし、セガール映画にはなっていないんですよね。

本作の時点でセガールのイメージは固まっておらず、後年のセガールなら容易に切り抜けられるであろうシチュエーションでもニコ・トスカーニは危機に陥るため、セガール・アクションを期待して見るとヤキモキさせられます。話がややこしい上に、そのややこしさがセガール作品に要求される本質的な面白さに繋がっていないことから、セガールが好きな人ほど本作を低く評価するのではないでしょうか。

作品のテーマを煮詰めきれていない

また、緻密なサスペンス・アクションとアクション・スターのワンマンショーのどちらをやりたいのかを最後まで決めかねているような印象を受けました。

脇役達の動かし方が総じて悪く、特にFBI捜査官・ニーリーと、CIAエージェント・フォックスの動かし方は最悪でした。この二人は本質的に悪人ではないものの、体制に染まり妥協している人間ではあり、”Above the Law(法の適用を受けない)”という原題が打ち出すテーマの体現者だったはずなのですが。

上からの汚い指示に対して「やってられるか!」と椅子を蹴る潔白なニコに対して、「組織が言うんじゃ仕方ない」と諦めるのがニーリー、正面衝突を避けつつ着地点を探ろうとするのがフォックス。こうした三者三様の姿勢を描けば作品のテーマが鮮明になったはずなのですが、中途半端にセガールのワンマンショーにしたためにこの二人には時間が割かれておらず、その結果、話をややこしくするだけの人たちになっています。

とりわけ、悪人っぽく登場しつつも、クライマックスでは真相を知って主人公の味方に回るニーリーは『逃亡者』のジェラード捜査官のプロトタイプとも言えるキャラクターなのですが、このキャラクターの面白さを全然追及できていないので非常に勿体ないことになっています。

セガールの生え際がやばい

セガールと言えばぴっちりオールバックで、そのヘアースタイルはデビューの本作から現在に至るまで不動なのですが、本作のみ、生え際が寂しい状態となっています。

第2作『ハード・トゥ・キル』(1990年)で突如生え際が前進するのですが、ヅラや増毛ではなく、自然に毛が増えたかのような錯覚を抱かせる凄みがセガールにはあります。

『刑事ニコ』(1988年)
『ハード・トゥ・キル』(1990年)
©Warner Bros.

≪スティーヴン・セガール出演作≫
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