【傑作】エイリアン:ロムルス_『1』の正統続編(ネタバレなし・感想・解説)

クリーチャー・メカ
クリーチャー・メカ

(2024年 アメリカ)
世界観、テクノロジー、恐怖演出、グロ描写、すべてが完璧な作品で、その根底には『1』への深い深い愛情がある。さらには『2』~『4』、おまけに『プロメテウス』の構成要素まで取り込み、それでいて一切の破綻がないのだから、これは驚異的な傑作である。

感想

本作の前評判は凄かった。

ディズニープラスでの配信から劇場公開への格上げ、リドリー・スコット翁の太鼓判、全米での圧倒的高評価・・・

ここまでくると、期待値が上がりすぎて逆にガッカリするんじゃないかと不安でもあったが、私の上がりきったハードルを軽々と越えてくるほどの大傑作だった。

上映時間内のすべてのカットが好き。そう言えるほどの一押し作品である。

若者6人のグループが巨大な宇宙船でエイリアンに襲われるという、このシリーズの伝統的なフォーマットをそのまま継承しているのだが、シリーズへの愛が本当に凄い。

1~4、果てはファン的にも扱いが微妙な『プロメテウス』までの要素をすべてぶち込み、それでいて2時間のソリッドなSFスリラーとして手堅くまとめているのだ。

特に1979年の『1』への愛着は凄い。

冒頭からして、今見るとアナログな機械がカタカタと音を立てながら起動するという『1』をそのまま再現したものとなっている。

あんな動作音のやかましい機械なんて実用できるかとも思うけど、まぁそういうものだと思わせるほどの愛と説得力に満ち溢れている。

細かい点だと、水飲み鳥の小道具も出てくる。

ファンならご存じの通り、『1』でノストロモ号の船室に置かれていたインテリアなんだけど、さりげなくこれを再登場させることで、『1』と同じ世界線であることを印象付けている。

舞台となるのはウェイランドユタニ社が支配するジャクソン星。

親の代から過酷な鉱山労働を強いられてきた若者6人が、この星と己の運命からの脱出計画を企てる。

宇宙船はある、操縦士もいる、新天地の扉を開けるウェイランド社製アンドロイドもいる、冷凍睡眠装置だけがない。

そんな状況で、ウェイランド社に放棄されたと思しき宇宙ステーションが漂流してきた。

装置をサルベージしようと宇宙ステーションに乗り込むのだが、みなさんお察しの通り、そこはエイリアンがひと暴れした後だったというのが、ザックリとしたお話。

これまでのシリーズは、宇宙船、廃墟と化した宇宙植民地、中世に退化したような宇宙刑務所と、割と特殊な環境ばかりを舞台としてきたのだが、第一作から45年も経った現在になって、ようやっとこの世界での市井の人々の生活が描かれた。

そして社会構造もテクノロジーも『1』で垣間見えていたものの延長線上でデザインされており、拡張された世界観にも破綻がない。

監督のフェデ・アルバレスはリメイク版『死霊のはらわた』(2013年)や『ドント・ブリーズ』(2016)などホラーを中心に活躍してきた人物であり、本格的なSFは今回が初なのだが、世界観の構築やテクノロジー描写で優れたセンスを示す。

エイリアンの描写についても同じく

一匹でも相当厄介な完全生命体としての演出を徹底している。

『2』でジェームズ・キャメロンが大胆な方針転換をしたことには功罪あって、『2』の存在のおかげでエイリアンという素材はどう味付けしてもイケるということになり、その後の長期シリーズ化につながっていったのだが、『1』の雰囲気は豪快にぶち壊していた。

その結果、シリーズはデヴィッド・フィンチャーやジャン・ピエール・ジュネといった才能ある監督たちによる「俺のエイリアン」の発表会になってしまい、『1』のおかわりを見たいコアなファンの期待には応えきれていなかった。

生みの親のリドリー・スコットすら、エイリアンの設定を豪快にいじった『プロメテウス』(2012年)という扱いに困る映画を作った。

『2』の呪いはそれだけ強力だったということ。だってキャメロンだもの。

そこに来て本作は、『1』のトレースを基本としている。

未知の完全生命体に襲われる恐怖を前面に押し出しているのだが、そこはホラーで鳴らしてきたアルバレス監督のこと、ハラハラさせる見せ場やグロテスクな描写が抜群にうまい。

メインプロットは出世作『ドント・ブリーズ』のフォーマットの再利用でもあるので、演出は非常にこなれている。

『1』の惨劇後、ウェイランド社はリプリーに爆破されたノストロモ号の調査を行っており、エイリアンの回収にも成功していた。

そこで回収されていたのは、なんと『1』で暴れたあの個体だったというのだから最高である。

『ジュラシック・ワールド』で、『1』で暴れたのと同一個体のT-REXが出てきた時並みの感動があった。

リプリーに放り出されてから数十年も宇宙空間を漂っており、さすがに死んでるだろうと思ってたら、どっこい生きていてウェイランドの宇宙ステーションが全滅させられたというのが、本作の前日譚となる。

いつかこの部分も製作されるんじゃないだろうか。

そして下半身を溶かされた状態でラボに倒れていたのが、『1』のアッシュと同型モデルのアンドロイドなのだから本作のサービス精神には恐れ入る。

顔かたちは若い頃のイアン・ホルムのデータから作ったらしく、エンドクレジットではホルムへの感謝が表明されている。

フェイスハガーの襲撃から命からがら逃げだした若者たちは、唯一事情を知っているこのアンドロイドを再起動させて情報を引き出すのだが、我々観客はこのモデルが過去に何をしたのか知っているので、こいつの言うことをどこまで信じていいのか分からない。

こうした不安定要素の織り込み方もうまく、先が読めそうで読めない物語となっている。

かくして『1』の影響を色濃く受けたサバイバル劇が開始され、その正統続編としての風格を帯びてくる。

もしもあの時、脚本がジェームズ・キャメロンに発注されておらず、リドリー・スコットが続編の監督をしていたら、きっとこんな風になったのではというほどの愛ある出来となっているのだ。

これだけでもスゴイのだが、クライマックスに向けては『2』のパルスライフル大連射、『3』のエイリアン大接近、『4』の新種誕生、『プロメテウス』の人工進化論まで、シリーズで描かれてきたありとあらゆる要素がぶち込まれていく。

よくぞこれを一本の映画として仕上げたものだと感心したほどで、私としては『1』『2』をも超える、シリーズ一番のお気に入り作となった。

ファン必見の大傑作である。

≪エイリアンシリーズ≫
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【良作】エイリアンVSプレデター_両雄並び立つ
【駄作】AVP2 エイリアンズVS.プレデター_暗い、見辛い、酔う
【傑作】エイリアン:ロムルス_『1』の正統続編

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