【凡作】アナコンダ2_薄味で小さくまとまった続編(ネタバレあり・感想・解説)

クリーチャー・メカ
クリーチャー・メカ

(2004年 アメリカ)
前作とはほぼ無関係な第二弾。大作経験の豊富な脚本家が多数参加しているため設定などはよく考えられているのですが、肝心のアナコンダがほとんど出て来なかったり、人間側の動かし方がおかしかったりと、期待に応えるほどの出来でもありませんでした。なお、舞台となるボルネオ島にアナコンダは生息していません。

あらすじ

ニューヨークの創薬ベンチャーのチームは、あらゆる疾病に利く万能薬の原材料となる「不死の蘭」の採取のためにボルネオ島に向かう。不死の蘭は7年に一度しか開花しない幻の花であるため今季を逃すことはできず、危険な雨期の最中であるにも関わらず、一行はジャングルの奥地にある自生地を目指す。ただしそこは、不死の蘭を食して巨大化したアナコンダたちの住処でもあった。

スタッフ

監督は『死の標的』のドワイト・リトル

1956年クリーブランド出身。南カリフォルニア大学在学中に学生映画界で注目を集め、『KGB闇の戦士』(1985年)で映画監督デビュー。

人気ホラーシリーズ第4弾『ハロウィン4 ブギーマン復活』(1988年)、スティーヴン・セガールがブードゥーの魔術と戦う『死の標的』(1990年)、ブランドン・リー主演が素晴らしい身体能力を披露するアクション『ラピッド・ファイアー』(1992年)、少年とシャチの友情を描いた家族向けドラマ『フリー・ウィリー2』(1995年)と、サスペンスアクション『ホワイトハウスの陰謀』(1997年)と、80年代後半から90年代前半にかけては何でも撮る職人監督ぶりで重宝されていたのですが、これといったヒット作が出なかったことから映画界からは徐々にフェードアウト。

2000年代に入るとテレビドラマを中心に活動するようになり、『プリズン・ブレイク』『24-TWENTY FOUR-』『BONES』などの演出を手掛けています。

脚本家は『トップガン』と『ロボコップ』人たち

本作にはやたら大勢の脚本家がクレジットされているのですが、うちジム・キャッシュ&ジャック・エップス・ジュニアは『トップガン』(1986年)や『摩天楼はバラ色に』(1987年)の脚本家であり、前作『アナコンダ』(1997年)の脚本も執筆しています。

そして、彼らの初期稿を脚色したのはマイケル・マイナーとエドワード・ニューマイヤー。二人は『ロボコップ』(1987年)の脚本家であり、エドワード・ニューマイヤーは他に『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年)の脚本も担当。『スターシップ・トゥルーパーズ3』(2008年)では監督業にも進出しています。

作品解説

興行的には成功作

2004年8月27日に全米公開され、ジェット・リー主演の『HERO』(2004年)に次ぐ第2位を記録。翌週にもめぼしいライバルがいなかったことから第3位と高いランクを維持し、全米トータルグロスは3223万ドルでした。

世界マーケットでも同じく堅実に稼ぎ、全世界トータルグロスは7099万ドルでした。製作費2000万ドルの中規模作品であったことや、客層が極端に限られたジャンルであったことを考えると、作品のポテンシャルの割によく稼いだなという印象です。

本作の出した結果が更なる続編へと繋がっていきます。

登場人物

  • ビル・ジョンソン(ジョニー・メスナー):ブラディマリー号船長。現地事情に通じており一見すると頼りになるが、言うことがことごとく外れる。
  • ジャック・バイロン(マシュー・マースデン):バイオベンチャーの代表。アナコンダに襲われてもなお、蘭の採取にこだわり続ける。
  • サム・ロジャーズ(ケイディー・ストリックランド):大学を卒業したばかりの若い研究者でアシスタント的な立場だが、ジャックの会社の紅一点で複数人から言い寄られている。
  • ゲイル・スターン(サリー・リチャードソン):ジャックの会社に出資している大手製薬会社の社員で、プロジェクトのお目付け役。当初より蘭の採取に乗り気ではない。
  • コール・バリス(ユージン・バード):口数の多い面白キャラ。
  • トラン(カール・ユーン):ビルの相棒の東洋人。

感想

よく練られた設定

本作は『ロボコップ』(1987年)のエド・ニューマイヤーが脚色しているだけあって、設定が実によく考えられています。

『ロボコップ』はサイボーグ刑事という荒唐無稽なキャラクターにどうやって実在感を与えるかに腐心した作品であり、AIをベースにした試作機が失敗したので人間の脳を使うことにしたとか、ロボコップは企業の資産なので人権はないとか、実に気の利いた設定の数々に「ほーっ」と感心させられっぱなしでした。

本作についても同じくで、大手からの出資を打ち切られかけて切羽詰まった創薬ベンチャーが、起死回生のために新薬開発のカギを握る蘭の変種の自生地へと向かう。

その蘭が7年に一度しか開花しないので今季を逃すわけにはいかないという前提条件は、危険があっても進まねばならないのだという動機付けとして十分でした。

また本作のアナコンダ一匹の怪物ではなく、その地のアナコンダは蘭の影響で全部デカくて狂暴という設定には現実感があったし、一行が巨大なアナコンダを見て蘭の効果を確認できたことで、余計に深入りしていくという点も論理的でした。

肝心のアナコンダがほとんど出てこない

ただし、本作を鑑賞する全員が楽しみにしているであろうアナコンダの活躍がほとんど見られない点は残念でした。

水の中をす~っと動く様などは不気味で良かったのですが、いざ暴れ始めるとさほどのインパクトがなく、モンスター映画としての見せ場を作れていませんでした。そもそも登場する場面が少なすぎるし。

クライマックスにしても、せっかく大量のアナコンダが集合しているのにほとんど動きがなく、まとめて爆死というあんまりな終わり方をするので勿体ない限りでした。

キャラの動かし方が良くない

また、キャラの動かし方も効果的ではありませんでした。

船長であるビルが主人公格のポジションにいるのですが、現地事情に通じていて「川は俺に任せとけ」みたいな態度の割には船を滝から落としてサバイバルの原因を作ったり、ジャングルを突っ切って行けば一日で仲間に合流できると言っていたのに、その道中に想定外の沼が広がっていて「こんなはずじゃなかったんだけど」と言いだしたり、その沼を進んでいる最中にアナコンダに襲われたり、さっきのアナコンダの縄張りを出たはずだからもう大丈夫と言っていたのに2匹目に襲われたりと、見事なまでに言うことが外れまくるという無能ぶりで、見ているこちらも「もういい加減にしろ」と言いたくなるほどでした。

そして、このプロジェクトの実質的なリーダーであるジャックが前作におけるジョン・ヴォイトの立ち位置を担っているのですが、アマゾンに馴染んだ圧倒的強者という風情だったジョン・ヴォイトと比較すると、創薬ベンチャーCEOに過ぎないジャックではとても脅威を感じることができませんでした。

先ほどは頼りないと書いたものの、船長のビルには元特殊部隊という設定が置かれている分、余計にです。ジャックがビルにかなうはずがないので、まったくサスペンスが盛り上がりませんでした。

で、このパワーバランスの不均衡をどうやって解消したかというと、ビルに怪我をさせて反撃能力を奪うという、なんともガッカリな手段でした。

こんなことならば何らかの理由でビルがおかしくなり、パーティーを危険にさらすという筋書きにした方が良かったと思います。

ジャックとビル以外の登場人物は特段活躍することもなく、愛着や好感を持てることもなく、本当に無意味な存在でしたね。 で、こいつらなんですが、ラストでアナコンダを退治したはいいものの、貴重な蘭の自生地も破壊してしまうので、一体何しに来たんだかという状態となっています。

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