【凡作】エンド・オブ・ステイツ_話はボロボロ(ネタバレあり・感想・解説)

軍隊・エージェント

(2019年 アメリカ)
米大統領暗殺という大それたことが恐ろしく低レベルで行われるので、話はボロボロです。主人公以外の人間はほぼ例外なく阿呆という。ただし見せ場の出来は良いので、アクション映画としての機能は果たしています。

作品解説

マイク・バニングシリーズ第三弾

本作は『エンド・オブ・ホワイトハウス』(2013年)から始まるマイク・バニングシリーズの第三弾。

毎回監督が変わることでもおなじみのシリーズなのですが、第一作のアントワン・フークア、第二作のババク・ナジャフィときて、本作はリック・ローマン・ウォーが監督しています。

リック・ローマン・ウォーはスタントマン出身であり、21世紀に入って監督に転向。ロック様が息子を救うために潜入捜査を行う『オーバードライ』(2013年)や、エリートサラリーマンが刑務所でゴリゴリのヤクザになる『ブラッド・スローン』(2017年)などの味のある映画を撮ってきた信頼できる人物です。

ジェラルド・バトラーとはよほど気が合ったのか、ディザスター映画『グリーンランド -地球最後の2日間-』(2020年)でも組んでいます。

2週連続全米No.1ヒット

本作は2019年8月23日に全米公開され、同時期に強力なライバルがいなかったこともあって初登場1位を記録。マイク・バニングシリーズで初めての快挙でした。好調は翌週も続いてV2獲得。全米トータルグロスは6,903万ドルというスマッシュヒットとなりました。

国際マーケットでも同じく好調であり、全世界トータルグロスは1億4750万ドル。製作費4000万ドルの中規模作品としては上出来な結果を収めました。

感想

モーガン・フリーマンの超絶出世

シークレット・サービスのマイク・バニング警護官(ジェラルド・バトラー)が大統領をお守りすることがシリーズの一貫したテーマであり、前2作ではアーロン・エッカート扮するアッシャー大統領役が警護対象でした。

シークレット・サービスと大統領という枠を超えたバニングとアッシャーの関係性が見所の一つとなっていたシリーズですが、本作ではアッシャー大統領がいなくなっており、代わりにトランブル大統領(モーガン・フリーマン)が就任しています。

トランブルは第一作から登場していたキャラクターであり、『1』では下院議長、『2』では副大統領と順調に出世を重ね、本作でついにトップの座をゲット。

『課長島耕作』ばりの出世を果たすモーガン・フリーマンを密かに見守るシリーズでもあるわけです。

FBI騙されやすすぎ

そんなトランブル大統領が休暇で釣りに出かけたところ、何者かからドローン攻撃を受けます。バニングはトランブルを捨て身で守るのですが、収容された病院で昏睡状態から目覚めるとバニングに暗殺未遂容疑がかけられていたというのが今回のお話。

当然のことながらバニングはハメられていたわけで、彼が身の潔白を晴らしつつ、その根っこにある陰謀を叩き潰すという方向で話は展開していくのですが、問題なのはバニング以外の人物・組織が頭悪すぎて不合理な動きばかりをするということです。

FBIは、バニングの口座に大金が振り込まれていたことや、ドローンの発射台でバニングの毛髪を発見したことから彼の罪を確信するのですが、そのどれもが第三者による細工が可能なものであり、あまりにもピュアに証拠を信用しすぎです。

仮にバニングが犯人だとして、なぜ首謀者が暗殺現場にいて負傷までしているのかという点に説明がつきません。普通なら大金抱えて高飛びしてるところでしょ。

暗殺の武器も簡単に入手可能な銃ではなく顔認証機能と自爆機能を持ったドローンであり、そんな特殊な武器を調達する伝手や、ハイテクを操るスキルを持っていたのかという点からもバニング犯人説には疑いの余地があるし。

仮にFBIは陰謀の黒幕側に立っており、彼らもバニングをハメるためのシナリオに沿って動いていたのであればまだ納得できたのですが、ただ単に粗めの偽装工作を真に受けただけという点がガッカリでした。

以降の展開でもFBIは黒幕に先を越されるということが度々発生しており、あまりの無能さに絶句してしまいました。

黒幕の不可解な行動

で、黒幕は黒幕で、FBIがまんまと騙されてくれたのだからほっとけばいいものを、バニングを護送するFBIの車列を襲撃するというわけのわからんことをやります。

護送隊を倒すという作戦の前段部分こそ成功するのですが、肝心のバニング拘束には失敗して逃げられてしまいます。冒頭の訓練場面でバニングがどの程度の相手であるかは熟知していたはずなのに、相応の対策も取らずに取り逃がしてしまうという詰めの甘さが酷いものでした。

その後も、FBIすら把握していないバニングの父親の家に兵隊を差し向ける、公安よりも早く動いて入院中の大統領を襲うなど、異常に高いリサーチ能力と、どこにでもすぐに人を送り込めるウーバーもびっくりな機動力を示すのですが、ことごとく返り討ちに遭わされるので有能なんだか無能なんだかって感じです。

だいたい、彼らは米大統領暗殺という大それたことをやった割には緊張感がないんですよね。

失敗はリカバリー可能くらいの悠長な姿勢がにじみ出ているし、いよいよ陰謀が破綻しかけても「今からでも大統領をぶっ殺してしまえばOK」くらいの軽いノリでワシントンD.C.に乗り込んでいくし。

首都に完全武装の兵隊が乗り込んでいって白昼堂々大統領を襲撃しても、暗殺に成功しさえすれば問題なしという論理が成立するのであれば、バニングによる犯行を偽装するようなめんどくさいことなどせず、最初からそうしていればよかったわけだし。

「戦士の本能」的なくだりの唐突感

そんなわけで大統領の首を取りに来た兵隊と、大統領を守るバニングとの戦いがクライマックスとなります。

ただしバニングが負けるはずなどなく敵の兵隊はどんどん戦力を削られていき、最後に残ったのはボスのジェニングス(ダニー・ヒューストン)のみ。

そしてバニングとジェニングスとの一騎打ちが始まるのですが、なぜかここでリック・ローマン・ウォー監督の持ち味である男と男のぶつかり合いみたいな要素が唐突に持ち上がります。

敵・味方の関係性で始まった一騎打ちも次第にスポーツマン同士の試合のような雰囲気になっていき、勝負あったところで清々しい顔をしたバニングとジェニングスが並んで座り、最後の会話を交わします。

ジェニングスによると今回の陰謀は銭カネの問題ではなく、戦士の本能を持つ我々の居場所が欲しくてやったとのことでした。

そんな訳の分からん理屈なのですが、バニングは「うん、分かる分かる」みたいな顔をして聞いているので、観客は完全に置いてけぼり状態となります。

今回ジェニングスがやったことって数十年来の親交のあるバニングを暗殺者に仕立て上げたり、バニングの妻子の元にまで銃を持った兵士を送り込んだりといった人として許せないレベルのことなので、最後だけ綺麗にまとめようとすることには無理があります。

ジェニングスにも一貫して騎士道精神みたいなものを守らせていればラストも感動的になったかもしれないのですが、そこに至るまでの過程があまりにもひどすぎたし、結構なことをやられたにも拘らずバニングがジェニングスに怒っていないという点も変でした。

アクションは素晴らしい出来

そんなわけでお話の方は普段に輪をかけて酷かったのですが、見せ場は素晴らしい出来だったのでアクション映画としての機能はちゃんと果たせています。

序盤のドローン攻撃は素晴らしい迫力だったし、トレーラーを使ってのカーチェイスもスピーディで楽しめました。

本当はインテリなのに今や偏差値ゼロのアクション俳優と化したジェラルド・バトラーによる銃撃や格闘はすべて様になっていてカッコいいし、スタントマン出身のリック・ローマン・ウォー監督は彼の身体的特性を効果的に見せ場に反映していきます。

ニック・ノルティのダイナマイトハウス爆破は気が狂ったような火薬量で盛り上がるし、クライマックスの銃撃戦の激しさも見逃せません。

ブルガリアで病院だった建物を借りて撮影したとのことなのですが、何をやってもいいと言われたので屋内を景気よく爆破しまくったのだとか。

そんな豪快裏話も込みで楽しい気持ちになるアクション映画です。映画としての出来は悪いのですが。