【良作】アポロ13_眼鏡やハゲのおっさんが輝いている映画(ネタバレあり・感想・解説)

災害・パニック
災害・パニック

(1995年 アメリカ)
ロン・ハワード監督が得意とする職業映画であり、派手なスペクタクルや宇宙飛行士たちの奮闘以上に、地上で対応策を考える眼鏡や禿げのおっさん達が輝いていました。おっさんというカッコ悪い生き物が輝いている映画はまず間違いなく面白い、それを地で行く作品です。

作品解説

ジム・ラヴェル著のノンフィクションが原作

本作はアポロ13号船長ジム・ラヴェル著のノンフィクション『LOST MOON』(1994年)を原作としています。

これを海兵隊出身で後に『キャスト・アウェイ』(2000年)や『PLANET OF THE APE/猿の惑星』(2001年)を手掛けるウィリアム・ブロイルス・ジュニアと、ドキュメンタリー映画『宇宙へのフロンティア』(1989年)を監督したアル・レイナートが脚色。

そして『セコーカス・セブン』(1980年)、『真実の囁き』(1996年)などを監督したインディーズ映画の雄ジョン・セイルズがドラマ要素を追加し、最終稿が完成しました。

プロデューサー達はジム・ラヴェルに顔が似ているという理由でケビン・コスナー主演を考えていたのですが断られ、次にジョン・トラボルタも候補に挙がったもののこちらにも断られ、トム・ハンクス主演に決定。

『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994年)に続き、トラボルタが断った後にハンクスに決まった映画となりました。

宇宙飛行士フレッド・ヘイズ役にはジョン・キューザックやチャーリー・シーンが考慮されていたのですが断られ、ターミネーター、エイリアン、プレデターすべてに殺された経験を持つ男ビル・パクストンに決定。

また宇宙飛行士ジャック・スワイガード役にはブラッド・ピットが考慮されていたもののピットは『セブン』(1995年)を選択し、ケビン・ベーコンに決定しました。

そして作品の要となるVFXですが、技術力は高いが値段も高いILMは不採用で、ジェームズ・キャメロンが設立した新興のVFX工房デジタル・ドメインに発注されました。

無重力シーンの撮影ではスピルバーグからの助言により、高高度からの自由落下により20秒間の無重力状態を生み出すボーイングKC-135低重力航空機が使用されました。KC-135はNASAでの宇宙飛行士訓練用にも使用されています。

全米年間興行成績第2位

本作は1995年6月30日に全米公開され、好調が続いていた『バットマン フォーエバー』(1995年)や同週公開の『ジャッジ・ドレッド』(1995年)に大差をつけて初登場1位を獲得。

翌週以降も1位の座を守り続け、4週連続1位という大ヒットとなりました。全米トータルグロスは1億7383万ドルで、全米年間興行成績第2位という大ヒットとなりました。

国際マーケットでも同じく好調で、全世界トータルグロスは3億5523万ドルにのぼりました。

感想

取り乱さないことの大事さ

宇宙を航行中のロケットで爆発事故が起こるという、常人ならば死を覚悟する危機から生還したアポロ13号クルー達の実話。

船長のジム・ラベル(トム・ハンクス)は、海軍パイロット時代に真っ暗な海で母艦を見失い、コクピットの照明まで落ちるなど最悪の状況に至ったが、照明が落ちたおかげで海中の発光する藻を誘導灯代わりに使うという策を見出し、何とか帰還できたという話をします。

この話の一義的な教訓は、危機的状況においては何が幸いするかは分からず、ある小さなアクシデントが大きなアクシデントへの解決策をもたらす場合もあるということでしょう。

アポロ13号で言えば、ジムが絶大な信頼を置く操縦士のケン(ゲイリー・シニーズ)が風疹に感染の疑いありとして打ち上げ2日前に下ろされ、補欠のジャック(ケヴィン・ベーコン)を使わざるを得なくなったこと。

実際、ジャックはケンほどうまくないので、爆発事故後にも「なんでこんな深刻な時にベストメンバーじゃないんだよ」と嘆きたくもなるのですが、結果的にはケンを地上に置いてきたことが成功要因となります。

ケンはNASAのスタッフ達と共に解決策の策定に奔走し、彼が作戦を考える側にいたおかげですべての問題は解決したからです。

そしてもう一つの教訓は、最悪の事態に陥っても取り乱さないことの重要性です。

爆発事故発生後には、酸素が足らないだの、二酸化炭素濃度が上がっているだのと死と直結する問題が次々と起こるし、極めつきは大気圏突入時に燃え尽きるかもしれないという、自分が当事者ならパニクること必至の状況までが発生します。

しかしクルー達は慌てたりせず、淡々と作業をこなして地球を目指します。

「死」という言葉を頭によぎらせず、「なるほど、このままだと酸素が持たないんだね。どうすればいいの?」と他人事ですかと言いたくなるほどの落ち着いた姿勢を見せます。これが大事なのです。

さすがに生死がかかった場面でこの落ち着きようは常人離れしていますが、期限が迫っているのに仕事が半分しか終わっていない夜などは、この姿勢を参考にしたいと思います。

地上スタッフこそ功労者

そしてハタと気付いたのが、アポロ13号クルー達は指示に従っているだけだということ。

状況の分析と解決策の策定を行っていたのはNASAの地上スタッフ達であり、本作は働くおっさん達の映画でもあります。

眼鏡や禿げのおっさん達が問題解決のため会議室に籠り、力尽きて床でくたばっている奴もいる。そして電卓もない時代なのでおっさん達は筆算と計算尺を使って解を求め、何人かで同じ計算をして検算をする。

アポロ13号を見守るさまぁ~ず大竹とトレンディエンジェルたかし

こうした地味でカッコよくない光景をカッコよく描写したことこそが本作最大の特徴であり、スペクタクルシーン以上に、こうしたおっさんの姿は輝いていました。

それまでも『ガン・ホー/突撃!ニッポン株式会社』(1986年)や『ザ・ペーパー』(1994年)など地味目の職業映画を得意としてきたロン・ハワード監督の手腕がうなります。

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