【良作】アバター:ウェイ・オブ・ウォーター_圧巻の映像美、話は前と同じ(ネタバレあり・感想・解説)

SF・ファンタジー
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(2022年 アメリカ)
並みの大ヒットどころでは回収できないというシャレにならない製作費を投じた大作中の大作であり、金とこだわりを炸裂させた映像美は圧巻の一言だった。ただしお話自体は前作とほぼ同じなので、映画館以外で見るとすんごいつまんないんだろうと思う。

感想

史上最高レベルの映像体験

本作は公開初日に予約していたんだけど、IMAXがぶっ壊れて見られなかったというのは先日の記事の通り。

その一週間後、同じ映画館に出直したが、今度は問題なく見ることができた。

くだんの機材トラブルは複数の映画館で起こっていたようで、3D+4K+HFRの負荷に機材が耐えられないんじゃないのって説もあるが、実際に観た映画は確かにすごかった。ハードが耐えられなかったという説もあながち否定はできないレベルで、控えめに言っても異次元の映像体験だった。

冒頭、おなじみのパンドラの光景が映し出されるのだが、この時点で第一作のクォリティを完全に凌駕している。

私は深視力(立体感、奥行き、動的な遠近感を捉える目の能力)が弱いらしく、出来の悪い3D映像だと被写体にピントを合わせられないことがあるのだが、本作は自然に3Dの没入感を楽しむことができた。

ここまで私の目に馴染む3D映像は初めてのことだ。

3D技術を熟知したジェームズ・キャメロンは一つ一つの構図にこだわりまくったことが伝わってくるし、HFR(1秒間のコマ数を通常より増やすこと)でヌルヌル動く映像は3D効果を飛躍的に高めている。

中盤以降、舞台は森から海に移るのだが、水中では輪をかけて3Dが効果を発揮する。

水の揺らぎや微かな水泡、目の前を泳ぐ小魚など、もはや自分が水中で見ているレベルであり、ここまで拘れば製作に13年もかかるわなと納得できるものだった。

惜しむらくは字幕版で見てしまったことであり、視界に入ってくる日本語字幕が邪魔で仕方なかった。

裏を返せば、本作の映像の没入感は字幕の存在感までが意識されるレベルだということであり、映像体験において、本作は映画史上かつてないレベルに到達したと言える。技術面においてはだが。

話は前作とほぼ同じ

第一作からそうだったが、本シリーズは紋切り型の話になっている。

映像体験に全振りするため、キャメロンがあえてそうしていることは十分理解しているし、そのことをもって欠点だと指摘するのは筋違いのようにも感じるが、本作の致命的な点は、第一作とほぼ同じ話だということだ。

前作で悪辣な人類を追い払ったジェイク達(サム・ワーシントン)だが、案の定、人類は再侵攻をかけてくる。地球という星の命脈は尽きようとしており、パンドラこそが彼らの新天地。人類側にとっても死活問題で、おいそれとは引き下がれないのだ。

一方ジェイクはゲリラ作戦で侵略者を苦しめているが、あまりの活躍ぶりから自分自身がターゲットとなったことを知り、自分がいると仲間たちに危険が及ぶとの判断から部族を離れることにする。

なぜ自分が身を引けば仲間たちの安全を守れると判断したのかはよく分からないが(式次第通りに侵攻されて、どっちみち壊滅的な被害を受けることになるのでは?)、ともかくジェイク一家は住み慣れた森を離れて海に紛れ込もうとする。

ただし海の部族は閉鎖的な連中で、「森の奴らが海で生活できんのかよ」とバカにしてくる。

何とか馴染もうと奮闘するジェイク一家。そのうち巨大生物との契りも交わし、地元民以上に海の生活をモノにし始める。

って、第一作と同じ話を森から海に置き換えただけである。これで3時間超の上映時間はちょっと厳しいものがあった。映像体験に目を奪われつつも、内心では退屈さも感じていた。

もしも本作をホームメディアで見たら壊滅的なことになるんじゃなかろうか。

最終決戦の壮絶な無意味さ

ジェイクを追ってくるのは、前作で死亡したクオリッチ大佐(スティーヴン・ラング)の意識をデジタルコピーしたアバターであり、そもそものねちっこい性格の上に、オリジナルを殺されたということでジェイクへの執念を全開にしてくる。

クオリッチ2号はついにジェイクを追い込み、人類の軍隊や海の部族をも巻き込んだ一大決戦へと発展していく。

キャメロン印のド派手かつしつこい見せ場が連続し、思いっきり目を楽しませてくれるのだが、問題はその後。

人類敗北で主要な戦闘が終結した後にも、クオリッチとジェイクの因縁の対決は続く。

先ほどまでのド派手な戦闘と比較すると地味な上に、やたら長い。正直途中で飽きた。

しかも海の民が数人加勢にくるだけで余裕で勝てそうなシチュエーションなのに、誰も助けに来ないし、ジェイク一家も助けを求めに行かない。まさに泥仕合。

そしてジェイクは、家族を守るためにはクオリッチとの決着をつける必要があるとして決闘を挑むのだが、目の前のクオリッチ2号を倒したところで、人類側が再度アバターを作ればクオリッチ3号が現れるだけなので無意味である。

無意味な決戦を長々と見せられたので、終盤はとにかく間延びして感じられた。軍隊vs部族の一大決戦が終わったところで劇終で良かったような気がする。

スパイダー君は最強の敵化するんだろう ※ネタバレ

そんなわけで良いところと悪いところが両方あって悩ましい作品ではあるのだが、個人的に気に入ったのは新キャラのスパイダー君(ジャック・チャンピオン)である。

パンドラに取り残された人間の子供だが、幼いころからジェイク一家と親しくしてきたことから意識はナヴィそのものであり、人間に対しては憎悪すら抱いている。

運悪くクオリッチ2号に捕まって追跡者チームに入れられてしまうも『ワイルドバンチ』(1968年)のソーントン状態で、心は常にジェイク一家に寄り添い続けている。

厳しい立場にありながらもナヴィへの忠誠を守り続ける様は健気であり漢でもあった。

そんなスパイダー君だが、ナヴィに対する忠誠心が揺らぎかねない出来事がいくつかあり、『アバター4』あたりで反ナヴィに転じるのだろうと思う。

ナヴィやジェイクの手の内を完全に知り尽くした最強の敵としてスパイダー君が暴れ狂う様には大変興味があるので、ぜひともシリーズを重ねて欲しいものだ。

現状、世界的なヒットはしているものの、膨大な製作費を取り戻すにはまだまだらしいので、ぜひとも頑張っていただきたい。

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