【良作】アバター_キャメロン版『デューン/砂の惑星』(ネタバレあり・感想・解説)

SF・ファンタジー
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(2009年 アメリカ)
映画館で見ないとほとんど意味のない映画。映像体験に全振りした内容であり、ストーリーなんて飾りに等しい。『デューン/砂の惑星』とほぼ同じ話だったし。

作品解説

全世界歴代興行成績No.1

本作は2009年12月に公開されるや、数々の興行記録を破り、『タイタニック』(1997年)が12年間守り続けた全世界歴代No.1記録も塗り替えた。

キャメロン監督の新作が、キャメロン監督の前作を抜いたというわけで、キャメロンってどんだけ興行に強いんだよと全世界が驚愕した。

しかもそれまで首位だった『タイタニック』(1997年)の興行成績18億ドルに対して本作は27億8967万ドルも稼ぎ、ぶっちぎりの1位だった

本作の興行成績もまた10年に渡って歴代首位を維持し続けたが、2019年7月に『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)に抜かれる。

しかし2021年3月に中国での大規模な再上映がなされ(2009年の初上映時には、あまりの人気ぶりから国内映画を圧迫するのではとの懸念から、早々に打ち切られていた)、リバイバルを加味すると『エンドゲーム』を越えて歴代1位の座に返り咲いた。

感想

キャメロン版『デューン/砂の惑星』

全世界でそれだけウケた理由が分かるほど、本作の物語は単純明快。

問題を抱えた主人公が異文化の中に新たな居場所を見つけるというド定番のドラマがあって、部族の危機にあたっては主人公がリーダーとなって戦うという、これまたド定番のエンタメがある。

『ダンス・ウィズ・ウルブス』(1990年)や『ラスト・サムライ』(2003年)など類似作を挙げるとキリがないが、SFという括りで考えると『デューン/砂の惑星』(1984年)が最も近いのかもしれない。

辺境の惑星に眠る資源を巡る物語であることや、その惑星の生態系自体に意思のようなものが存在することなど、『デューン』との類似点は多い。

私は本作をキャメロン版『デューン/砂の惑星』として見た。

とはいえキャメロンが盗作をしたわけではなく、お馴染みのストーリーの枠組みを拝借することで、観客がすぐにストーリーや設定を飲み込めるようにしたのだろう。

そして、本作には主人公が善悪の狭間で揺れ動くなんて展開は1ミリもなく、善人は徹底的に善人で、悪人には同情の余地が一切ない。

人類側の軍隊に至っては、名前もよく分からない兵士一人一人に至るまでが全員悪そうな顔をしている。ここまで善悪の判別が容易な映画というものも珍しいのではなかろうか。

そこまで単純化して何がしたかったのかというと、観客に圧倒的な映像体験をさせることだった。当時そのインパクトは凄まじく、これからの娯楽作はすべて3Dになっていくんじゃないかとすら思った。

映像革命は映画館限定

本作を始めて映画館で見た時、私は今まで見た映画の中で一番面白かったんじゃないかというくらい楽しんだ。

その興奮冷めやらぬ私は、後にリリースされた3枚組Blu-ray「エクステンデッド・エディション」も買ったんだけど、家庭で見ると別物かというほど印象の違う映画になっていた。

非大画面であること、非3Dであることから戦闘場面の迫力は段違いに落ちているんだけど、それだけではなくドラマパートまでが間延びして感じられた。

これはキャメロンの設計が恐ろしくうまくいっていたことの裏返しなのだろうけど、映画館以外の環境で見ると驚くほど鮮度が落ちてしまうのである。

10年ほど前にはパナソニックが3Dテレビのおまけとして本作の3Dディスクを付けていた時期があって、当該ディスクはメルカリ等で大量に出回っている。

うちのホームシアターが3D対応したこともあって、3Dディスクを800円で購入して見てみたんだけど、100インチで見ても全然ダメだった。

やはり本作は可能な限り大きなスクリーンと大音響、周囲から完全に隔絶された映画館という環境でこそ見るべき映画であり、家で見るようなものではない。

この冬には13年ぶりの続編が公開されるけど、映画館で見ることはマストでしょうな。

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