【良作】エイリアンVSプレデター_両雄並び立つ(ネタバレあり・感想・解説)

クリーチャー・メカ
クリーチャー・メカ

(2004年 アメリカ)
有名キャラクターの競演作としてはなかなか優秀で、両雄がきちんと並び立っていた。コンパクトにまとめられた作品なのでボリューム感がない、プレデターが人間に絡み過ぎで魅力が減っているなどの問題もあるにはあるが、合格点には達していると思う。

作品解説

構想10年、製作10か月

20世紀フォックスが手掛けた二大モンスターの競演作だが、その起源は思いほか古く、『エイリアンVSプレデター』(以下、AVP)と名付けられたコミックは1989年にダークホースコミックから発売され、ベストセラーとなった。

すなわち『プレデター2』(1990年)『エイリアン3』(1992年)以前から、その着想自体は存在していたということである。

当然のことながらフォックスはこの企画に興味を持ち、1991年には後に『ヘルボーイ』(2004年)を手掛けるピーター・ブリックスが初期稿を執筆した。

以降、AVPは常にフォックスの検討リストに入っており、90年代にはローランド・エメリッヒが監督候補として挙げられたが、エメリッヒは別プロジェクトを選択し去っていった(多分『GODZILLA』(1998年))。

その後、『アベンジャーズ』(2012年)や『ジャスティス・リーグ』(2017年)のオタク脚本家ジョス・ウェドンが、リプリーをクローン再生するという驚天動地のアイデアを持ってきたことから、フォックスはAVPではなく『エイリアン4』(1997年)の製作を決めた。

『エイリアン4』は期待したほど稼げなかったが、どういうわけだがこれをきっかけにリドリー・スコットとジェームズ・キャメロンの2代巨頭がシリーズへの関心を取り戻し、キャメロンが脚本を書き、スコットが監督をするという夢のような『エイリアン5』プロジェクトが持ち上がった。

内容はエイリアンの起源を描くという、後の『プロメテウス』(2012年)のようなものだったらしいが、二人とも忙しかったことが祟ってか、具体的な進展はなかったようだ。

『エイリアン』シリーズを作りたいのに、なかなか布陣が整わない。そんな折に現れたのが『バイオハザード』(2002年)を成功させたポール・W・S・アンダーソン、通称「ダメな方のポール・アンダーソン」である。

かつて『エイリアン4』の監督依頼を断った人物であり、この世界は思いのほか少ない人数で回されているようだ。

アンダーソンは、『GODZILLA』(1998年)のパトリック・タトプロスに書かせたコンセプトアートを携えて『AVP』の企画プレゼンを行ったのだが、それがフォックス幹部達に刺さりまくり、その場で製作が即決された。

製作即決という判断はハリウッドでもかなり珍しく、アンダーソンのプレゼンはかなり冴えまくっていたのだろう。「ダメな方の」と馬鹿にするのもいい加減にすべきかもしれない。

なんだが、フォックスが提示してきたスケジュールはかなり厳しいもので、製作期間はたった10か月しかなかった。2004年に公開されたすべての大作の中でも最短の製作期間である。

10年以上も検討中の状態が続いてきた企画なのに、いざ作ると決めると10か月で作れと言い出す。まぁ滅茶苦茶な話ではあるのだが、短期間で大作を製作するという突貫作業は『イベント・ホライゾン』(1997年)で経験済のアンダーソンはこの条件も飲んだ。

その上、人件費の安いプラハで巨大セットを組むなどコスト削減にも取り組み、大作としては極めて少ない6000万ドルの予算で仕上げてみせた。

ポール・W・S・アンダーソンが滅茶苦茶に仕事ができる人というのは間違いないようだ。

興行的には中ヒット

2004年8月13日に全米公開され、ディズニーの『プリティ・プリンセス2』(2004年)を抑えて初登場1位を記録した。しかしその後の落ち込みが激しく、4週目にしてトップ10圏外へと出て行った。

全米トータルグロスは8028万ドルというありふれた興行成績に終わったが、4779万ドルしか稼げなかった『エイリアン4』(1997年)よりは良かった。

国際マーケットでも同じく並程度で全世界トータルグロスは1億7742万ドルだったが、6000万ドルという控えめな製作費を考えると恐らくはちゃんと黒字になっており、シリーズを繋げることには一役買った。

2007年には続編の『AVP2』が公開された。

感想

コンパクトにまとめられた良作

公開時に映画館で見て、それなりに満足した記憶はあるのだが、その後20年近く再見することはなかったので印象は薄かったのだろう。

ということは前回の『プレデターズ』(2010年)でも書いたような気がするが、それだけプレデターの出る作品は薄味のものが多いということ。抜群のキャラクター性の割に作品に恵まれない不遇の存在と言える。

なんだが、最近ディズニープラスで『プレデター:ザ・プレイ』(2022年)がリリースされた上に、それと併せて再見した『プレデターズ』(2010年)が記憶よりも面白かったことから、本作も見返してみることにした。

すると、やはりこれも面白い。プレデターがこすられすぎた今だからこそ、適度な改変にとどめられた本作や『プレデターズ』の温度感が丁度良く感じるようになったということなのだろうか。

この企画に批判的だったジェームズ・キャメロンも、実際に見てみると本作を気に入ったというが、うるさ型を納得させるだけの魅力が本作にはあると思う。

筋書きはシンプルで、プレデターのトレーニング施設であるピラミッドでエイリアンを用いた訓練プログラムが開始されるのだが、人間側の想定外の動きでプログラムが逸脱をするというもの。

まだ人類が地球外生命の存在を認識していなかった『エイリアン』(1979年)との齟齬を起こさないよう、地球上でもっとも隔絶した孤島と言われるブーヴェ島を舞台としており、細かい部分への配慮が効いている。この辺りはオタク監督ポール・W・Sの真骨頂と言えよう。

大富豪が様々な分野のスペシャリストを招集するという序盤はマイケル・クライトン原作のようだが、フォーカスすべき人物を数人に絞り込んでおり、冒頭15分ほどでお膳立ては完了する。この手際の良さは何だろう。

『エイリアン』『プレデター』両第一作が「見えない恐怖」を扱っていたことを本作も引き継いでいるのだが、かといってむやみに引っ張りすぎず、一連のネタがオープンになった後には出し惜しみなしのバトルアクション路線になる。この切り替えも鮮やかで気持ちよかった。

エイリアンとプレデターがついにまみえる瞬間は大興奮で、パンパンに膨らんでいたファンの期待にちゃんと応えられていたのは素晴らしかった。

まずエイリアンが奇襲で優勢に立つのだが、プレデターは特殊武装を用いて立て直し、エイリアンをぶん投げるという力技を見せる。この試合運びは完璧ではなかろうか。

そこから先は舞台の大爆破やクィーンエイリアンの登場といった両シリーズのお決まりの流れを踏襲していき、ファンサービスに余念がない。

期待を越えるほどの傑作ではないが、必要十分にまとめてみせた端正な構成が光っている。

以下にいろいろと文句も書くが、基本的にはよく出来た佳作だと思っていただきたい。

プレデターの物分かり良すぎ

本作のプレデターは間違いなくかっこいい。

男子なら燃えること必至なフルアーマー仕様だし、個々の武装も対エイリアン戦を想定した大ぶりなものになっており、そのアグレッシブさも良かった。

なんだが人間との共闘を決めた辺りから、プレデターらしさが失われてくる。

主人公相手に「ここがボカーンと爆発するぞ」とジェスチャーをするのはなんだか可愛らしかったし、エイリアンの死体を使って矛と盾を作ってあげて、これなら酸性の血を浴びても溶けないことを教えてあげるという親切さも、らしくなかった。

本作のプレデターは物分かりが良すぎで、孤高のハンターらしさが失われている。

直接的なコミュニケーションをとらずとも、戦いを知る者同士なら分かり合えるという形での接点を作ってくれれば完璧だったのだが、ストーリーテリングの技術上、やはり難しかったのだろうか。

一番かわいそうなのはエイリアンクィーン

そしてラスボス的に登場したエイリアンクィーンが、実は一番気の毒な存在だった点も見逃せない。

彼女はピラミッド内で鎖で固定された上に、極寒の地に氷漬けで幽閉されている。

100年に一度だけプレデターが新人トレーニング用に使うので、叩き起こされて強制的に卵を産まされる。そしてまた眠りにつくということを数千年間繰り返しており、身も心もボロボロであろうことは想像に難くない。

今回はプレデターのトレーニングプログラムに異変が生じ、その間隙を突いて子供達が助けに来てくれたので鎖からは解放されたが、するとプレデターにピラミッドごと爆破されてしまう。

何とか爆破を生き延びたクィーンは憎きプレデターを追い込むのであるが、人間のヒロインの加勢もあって南極海に沈められる。

なんとも報われない人生であり、クィーンが可哀そうに感じられたのがマイナスだった。彼女をもっと純粋悪的なポジションにおいてくれた方が物語に支障がなかったかもしれない。

ビショップの設定は如何なものか

あと、ファンサービス的に登場したビショップ・ウェイランドの設定が『エイリアン3』(1992年)と整合していなかった点も引っかかった。

演じるのは『エイリアン2』(1986年)でアンドロイドのビショップを演じたランス・ヘンリクセンで、本作で最初にキャスティングされたとのこと。後のビショップモデルの原型になった人物という設定なのだろう。

しかし『エイリアン3』(1992年)で同じくヘンリクセンが演じたウェイランド社従業員マイケル・ビショップは開発者を名乗っており、赤い血も流していたことから、『3』においてはマイケル・ビショップが自分自身に似せて作ったのがビショップモデルであると考えられる。

そんなわけでシリーズ内での不整合が生じていた点もがっかりだった。

まぁ『エイリアン3』でマイケル・ビショップが人間であると明言していたわけでもなく、ゴールデン洋画劇場で見た際には「ビショップⅡ」と表記されていたので、決定的な齟齬というわけでもないのだが。

≪プレデターシリーズ≫
【良作】プレデター_マンハントものの教科書的作品
【凡作】プレデター2_キャラ確立に貢献した失敗作
【良作】エイリアンVSプレデター_両雄並び立つ
【駄作】AVP2 エイリアンズVS.プレデター_暗い、見辛い、酔う
【良作】プレデターズ_殺しのドリームチーム
【駄作】ザ・プレデター_要らない新機軸ばかり付け加えられたシリーズ随一の駄作
【駄作】プレデター:ザ・プレイ_政治的配慮をするプレデター

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