【駄作】バックトレース_スタローンの小遣い稼ぎ映画(ネタバレあり・感想・解説)

サスペンス・ホラー
サスペンス・ホラー

(2018年 アメリカ)
スタローンの総出演時間が10分程度という詐欺映画。その志の低さを反映するかのように本編にも見るべき点が少なく、スターが頑張らないのでアクションは盛り上がらないし、論理が甘いのでサスペンスとして洗練しないしと、良いところのない映画でした。よほど暇でない限り、見る必要のない映画です。

あらすじ

マクドナルド(マシュー・モディーン)は銀行強盗を働いた際に頭部に受けた銃弾が原因で記憶喪失となっていた。7年後、服役中のマクドナルドの前にルーカス(ライアン・グスマン)という男が現れ、マクドナルドを脱走させる。ルーカスの目的は7年前にマクドナルドが隠したまま行方不明になった2000万ドルであり、危険な未承認薬を投与してマクドナルドの記憶の回復を図る。

スタッフ・キャスト

監督はジャケット詐欺映画の常連ブライアン・A・ミラー

本作を監督したブライアン・V・ミラーは『コードネーム:プリンス』(2014年)や『デッド・シティ2055』(2015年)など、ブルース・ウィリスの顔がジャケットにどーんと描かれているが、実際には脇役程度というVシネを多く製作している監督です。

本作でもその傾向は変わらず、シルヴェスター・スタローンの名前がフィーチャーされているにも関わらず、総出演時間は10分いくかどうか。

スターという資産を最大限に活用した稼ぎ方とも言えるのですが、この監督の仕事はアクション映画ファン泣かせでもあります。

スタローンとマシュー・モディーン共演

本作には80年代のスター俳優が2名出演しています。シルヴェスター・スタローンとマシュー・モディーン。

片や『ランボー』(1982年)、片や『フルメタル・ジャケット』(1987年)で名を挙げた俳優であり、もしこの顔ぶれが80年代に実現していれば全米No.1ヒットを獲ったと思います。

感想

スタローンはほぼ活躍しません

スタローンがドーンと写ったジャケットとは裏腹に、本作でのスタローンの総出演時間は10分程度です。

その役柄は脱獄した元銀行強盗を追う警察官なのですが、冒頭とラストを除いて現場に出て行くことはなく、基本的にはホワイトボードの前であーだこーだ言っているだけです。スタローンである必要性が限りなく薄い役柄であり、集客のためにかさ増しされたスターだったようです。

自身が監督を務めた『エクスペンダブルズ』シリーズで、スタローンは大した働きもしないのに高いギャラだけ持っていくブルース・ウィリスを批判しましたが、スタローン自身も同じ穴の狢になったということに、ファンとしては寂しさを感じました。

芯のないサスペンスアクション

記憶喪失に苦しむ元銀行強盗犯マクドナルド(マシュー・モディーン)が、謎の男ルーカス(ライアン・グスマン)らの手引きにより脱獄し、警察による追撃をかわしながら過去の記憶を辿ることが本作の骨子。

7年前にマクドナルドが起こした銀行強盗の真相とは何なのかというミステリーを軸として、危険を冒してまでマクドナルドを脱獄させたルーカスとは一体何者なのか、彼を信用してもいいのかというスリラーや、すぐそこにまで警察が迫ってくるというサスペンスを組み合わせた作品だと言えるのですが、各構成要素がしっかりと作り込まれていないために、全体的に芯のない映画という印象を持ちました。

この内容であれば記憶のないマクドナルドを観客と同一の視点に置いて、彼がルーカスに対して抱く疑心暗鬼を重く扱っていれば緊張感が継続したと思うのですが、最初からルーカスが良い奴っぽくて信頼が置けてしまうために、重要な構成要素が死んでいます。

警察からの逃避行については、あまりにも警察が無能すぎてマクドナルドに迫れていないために、さして身の危険を覚えないという有様となっています。

その他の構成要素がこの状況なので7年前の強盗事件に迫るというミステリーに対する関心も継続せず、話を追いかけることが途中からめんどくさくなってきました。

※注意!ここからネタバレします。

納得感の薄い真相部分

そうこうしつつも戻った記憶によると、マクドナルドはもともと真面目な労働者だったのですが、勤務するセメント会社の経営者と銀行が結託して従業員の年金を食い物にしたことから、怒って強盗を働いたということでした。

このネタバラシを聞かされても霧が晴れるような感覚はなく、むしろ一介の労働者が武器を調達したり、マネーロンダリングの方法を作ったりしながら銀行強盗を途中まで成功させたという設定への違和感の方が強く残りました。

また、ルーカスはマクドナルドの息子だったことが明かされるのですが、銀行強盗の息子が今の今まで捜査線上に上がっていなかったことや、本編中でルーカスは親を思う子の態度とは思えないような無茶をマクドナルドに強いる面もあったりと、こちらも多くの疑問符が付きました。

ラスト、ルーカスとマクドナルドは隠しておいた金を持って国外へと逃げおおせるのですが、通し番号を把握された紙幣は使い物にならず、銀行強盗にはマネーロンダリングが不可欠という本編中の設定がここで踏み倒されていた点も気になりました。 サプライズがサプライズ足りえておらず、新たな疑問を生み出す始末。本作の脚本の出来は相当良くないです

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