(2024年 アメリカ)
人気シリーズの第4弾だが、ここに来てシリーズ最高を更新。今までで一番面白いと感じた。ストーリーには適度に捻りがあり、キャラクターの動かし方も良い。そしてアクションは楽しくて、全方位的によくできている。
感想
6/28にIMAXで鑑賞したのだけれど、いろいろ忙しくてレビューを書くまで10日ほどかかってしまった。なので細かい部分はあんまり覚えていなくて、ザックリとした感想になってしまうことをご了承いただきたい。
ま、拘るほどの細部がある映画でもなかったけどね。
スクリーンはIMAXを選択したものの、上下マスキングされたシネマスコープサイズでの上映だったので、追加料金払ってまでラージフォーマットで見る必要はなかったと思う。
みなさんご存じ、ウィル・スミス&マーティン・ローレンスのバディ刑事もの『バッドボーイズ』の第4弾。
続編製作に相当なインターバルの空くことが定例化したシリーズ(1→2:8年、2→3:17年)においては例外的に、前作『バッドボーイズ フォーライフ』(2020年)からは4年しか空いていない。
なので本作は前作『フォーライフ』と直接的につながった物語となっており、前作の予習は必須だ。
どうでもいいけど、第3弾のサブタイトルが『”フォー”ライフ』は分かりづらい。半年もすると「『フォーライフ』と『RIDE OR DIE』のどっちが先だったっけ?」となりそう。タイトルは逆の方が良かったかも。
前作『フォーライフ』で殺されたハワード警部(ジョー・パントリアーノ)に、生前の汚職疑惑が持ち上がる。生前のハワードはいざという時に備えたメッセージを残しており、マイクとマーカス(マーティン・ローレンス)はそのメッセージを頼りに、ハワードをハメた黒幕を暴こうとするのが、ざっくりとしたあらすじ。
これまでノリと勢いだけで突き進むことの多かったシリーズとしては例外的に、お話が良くできている。
前作『フォーライフ』(2020年)を手掛けたクリス・ブレムナーに加えて、『アクアマン』(2018年)、『ジャスティス・リーグ スナイダーズカット』(2021年)のウィル・ビール、バディアクションの名作『ミッドナイト・ラン』(1986年)のジョージ・ギャロと、脚本家チームを強化したことの成果だろう。
中盤以降はそこにマイクの息子アルマンドも加わる。前作でバッドボーイズを苦しめた人間兵器アルマンドの加勢により、アクション映画としてはさらに熱を帯びる。
さらにそこにアルマンドはハワード殺害犯でもあるという因縁や、マイクvsアルマンドの親子の確執などを絡めることで、ドラマとアクションは有機的な結合を果たす。
いろいろあって3人仲良くお上に追われる身となったバッドボーイズ+アルマンドだが、前3作でのやりたい放題が祟ってか、マイアミの街は敵だらけ。
彼らは破天荒だった己の過去とも、否応なしに向き合うこととなる。
過去に起こした暴力事件の禊と清算といえば、2022年3月のオスカー授賞式で起こったウィル・スミスによるクリス・ロック殴打事件を思い出す。
例の事件によってウィル・スミスは世界中からのバッシングを受け、一時期は本作も製作中止になるのではという憶測が走った。
みんないろいろ傷ついた一件だったが、本作においてはマイク刑事=ウィル・スミスの過去の清算の儀を挿入することで、ウィル・スミスをメインストリームに引き戻すことに成功する。
これは良く考えられたメタ的構造だと感心した。
やがて明らかになる黒幕とは、911後のテロ対策を優先するため麻薬カルテルにお目こぼしをした政治家と、彼らに使い捨てにされる形になった結果、麻薬カルテル側に付いた元麻薬捜査官だったという、これまた因果な話になってくる。
ハワード警部の嫌疑に係る捜査が、やがて国防レベルの陰謀にまで発展していくという大風呂敷の広げ方には感心したのだが、その一方で黒幕の1人がヨアン・グリフィズといういかにも過ぎるキャスティングはどうかと思ったりで。
ヨアン・グリフィズと言えば、『カリフォルニア・ダウン』(2015年)で他人を犠牲にしてでも生き延びようとする嫌らしい金持ち役が印象的だった。
本作でも、初登場時点から漂う隠しきれない胡散臭さ(笑)
このイメージを逆手にとって、良い奴と見せかけた悪人と見せかけておいて、やっぱ善玉でしたというオチでもあるのかなと思って見ていたら、案の定、悪い奴でしたという捻りのなさにはガッカリだった。
2時間サスペンスで、犯人役に宮川一朗太をキャスティングするほどのバレバレ加減である。
もう一人の悪役マッグラスの強敵感は良かった。
麻薬組織のボスに転じた元DEA捜査官という分かったような分からんような役回りではあるけれど、終始死人のような目つきで、感情的に突き抜けた結果こちらに戻ってこられなくなった人という威圧感はよく表現されていた。
演じるのは、本シリーズの生みの親マイケル・ベイがプロデュースしたテレビドラマ『ザ・ラストシップ』(2014-2018年)の主演エリック・デイン。
本作でデインは頭髪を真っ白に染めているが、元軍人の若白髪は、戦場で感情を失ったことの記号として使われることが多い(例:『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』のミッキー・ローク、『リーサル・ウェポン』のゲイリー・ビジー、『コラテラル』のトム・クルーズ)。
また黒人バディが主人公の本作における視覚的な対比にもなっており、マッグラスというキャラは非常に魅力的で立っていた。
マッグラス軍団vsバッドボーイズの長い長い銃撃戦が展開されるクライマックスは、ブラッカイマーらしいサービス精神満点でアクション映画ファンを大満足させてくれる。巨大ワニまで参戦という闇鍋加減なんて最高でしかなかった。
また一部で批判があるらしい銃撃戦時のカメラワークも、個人的には十分アリ。
FPS(ファースト・パーソン・シューティング)のような視点でカメラが銃口から先を睨んでいたかと思いきや、いざ銃撃戦が始まると銃弾とともにいきおいよく飛び出し、そこから先は縦横無尽に飛び回ってその場全体の光景をとらえる。
第一人称から第三人称へとシームレスに切り替わるこのカメラワーク、もしかすると今後のアクション映画界の主流になるんじゃないかと思うほどのインパクトと面白さだった。
そして本作の敢闘賞はレジーだろう。
『バッドボーイズ2バッド』(2003年)にマーカスの娘のデート相手として初登場。『フォーライフ』(2020年)では彼女と結婚して晴れてバッドボーイズと親戚関係になった
前2作ではあくまで脇役の1人に過ぎなかったレジーだが、ここに来て凄まじい戦闘力を解放させる。
マーカス不在のバーネット家がマッグラスの手下に襲われるが、ここでレジーは退役軍人の戦闘スキルを全開にし、15人もの武装した敵を、たった一人で返り討ちに遭わせる。
これまでチョイ役だった分、レジーの大活躍には意表を突かれた。レジーが敵1人を倒すたびに、叫びたくなるほど興奮した。
ウィル・スミスとマーティン・ローレンスは第5作の製作にも積極的なようだが、その際にはレジー無双を再度拝みたいものだ。
というか次回作はレジーとアルマンドのバディでもいいんじゃないかとも思ったりで。
そんな、次回作への期待をも高まる良篇だった。