【駄作】バッドボーイズ_スベりっぱなし(ネタバレなし・感想・解説)

クライムアクション
クライムアクション

(1995年 アメリカ)
映画としては全然面白くありません。特にギャグのスベり方は致命的で、こんなダラダラした話で1時間59分の尺はかなりしんどかったのですが、装飾過多のベイのアクションのみ見応えがありました。

©Columbia Pictures

あらすじ

マイアミ市警の証拠品保管庫から、押収品である大量のドラッグが奪われた。警察内部に手引き者のいる可能性の高いこの事件にFBIが捜査に乗り出してくることは時間の問題であり、そうなれば署内では大勢が職を失ってしまう。刑事のマーカスとマイクのコンビは、FBIが動き出すまでの72時間で事件を解決せよとの指令を受ける。

スタッフ・キャスト

製作はドン・シンプソン×ジェリー・ブラッカイマー

  • ドン・シンプソン:1943年生まれ。オレゴン大学卒業後に映画会社に入社。最初はワーナーに入り、その後にパラマウントに移籍し、若くしてマーケティング担当重役へと出世しました。『フラッシュダンス』(1983年)、『ビバリーヒルズ・コップ』(1984年)、『トップガン』(1986年)とヒット作を量産。パラマウントは80年代にもっとも高い収益をあげたスタジオでしたが、その収益に大きく貢献したのがシンプソンでした。
    ただし私生活に問題があり、非リア充だった学生時代のコンプレックスの反動からか、有名人を自宅に招いての連日のパーティ、乱れた女性関係、整形手術、ドラッグの濫用と、友人のプロデューサー・ジョエル・シルバーから心配されるほど荒れていました。
    そんな心配は的中し、『デイズ・オブ・サンダー』(1990年)を最後にパラマウントから解雇されました。その後しばらくは稼働しておらず、本作『バッドボーイズ』とトニー・スコット監督の『クリムゾン・タイド』(1995年)が久しぶりの作品でした。しかしシンプソンはロクに現場にも現れず、しびれを切らしたブラッカイマーは次回作『ザ・ロック』(1996年)の製作中にシンプソンを切ると宣言。ほどなくしてシンプソンはオーバードーズにより死亡しました。
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  • ジェリー・ブラッカイマー:1945年生まれ。最初のキャリアは、後に彼がプロデューサーとして使うこととなる監督達と同じく、コマーシャル・フィルムの監督でした。ニューヨークの広告代理店で数々の賞を受賞した後にロサンゼルスへ移って映画製作を開始。初期にはハードボイルド小説の古典の映画化『さらば愛しき女よ』(1975年)、ジーン・ハックマン主演の『外人部隊フォスター少佐の栄光』(1977年)、マイケル・マン監督の『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』(1980年)などやたらシブイ映画ばかり作っていたのですが、1980年代よりドン・シンプソンの製作助手となったことから、その作風は一変しました。
    見栄えのする若手俳優、人気アーティストを起用したサウンドトラック、特殊効果を駆使した派手なアクションというドン・シンプソンスタイルを継承・発展させ、これによりヒットメーカーの仲間入り。彼の作品は派手さの割には中身がないと揶揄されることも多いのですが、それはシンプソンと組む以前のシブい作品群が収益を生み出してこなかったというブラッカイマーなりの反省がスタート地点にあり、彼は百も承知の上でやっているのです。

マイケル・ベイ監督の長編デビュー作

1965年アメリカ出身。養子として養父母の元で育てられ、高校時代にインターンとしてルーカス・フィルムに入り『レイダース/失われた聖櫃』(1981年)の絵コンテ整理をした経験が、映画界を志すきっかけとなりました。今でもルーカスには相談事をする関係のようです。大学卒業後にデヴィッド・フィンチャーとドミニク・セナにより設立された映像制作会社プロパガンダ・フィルムズに所属し、多数のMTVやCMの演出を手がけました。

長編映画デビュー作の本作が、製作費2300万ドルに対して全世界で1億4000万ドルも稼いだことからトップディレクターの仲間入りをし、以降は特段の低迷期を迎えることなく(『パールハーバー』(2001年)の不評は堪えたようですが、仕事が入らなくなるほどではなかった)、安定したキャリアを保っています。

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養母より、実父はアクション映画の名手・ジョン・フランケンハイマーであると聞かされており、本人もそのことを割かし真剣に信じていたようなのですが、後にDNA鑑定で二人の関係は否定されました。

関わった4名の脚本家

  • ジョージ・ギャロ:1956年アメリカ生まれ。ロバート・デ・ニーロ主演の『ミッドナイト・ラン』(1986年)と、そこから派生した2本のテレビシリーズが代表作。
  • マイケル・バリー&ジム・マルホランド:1960年代末から2010年代までテレビ界で活躍しているコンビで、特番やドラマのシナリオを主に手掛けています。映画界ではスタローンがコメディ分野に進出して見事コケた『オスカー』(1991年)が代表作。
  • ダグ・リチャードソン:アクション映画を得意とする脚本家で、ブルース・ウィリス主演の『ダイ・ハード2』(1990年)、同じくブルース・ウィリス主演の『ホステージ』(2005年)、ウェズリー・スナイプス主演の『マネートレイン』(1995年)を手掛けています。

登場人物

  • マーカス・バーネット(マーティン・ローレンス):美人の奥さんと3人の子供を持つマイホーム刑事。愛妻家で恐妻家。
  • マイク・ラーリー(ウィル・スミス):実家が金持ちのボンボンで、一介の刑事でありながら高級マンションで暮らし、ポルシェ911ターボに乗っている。長身イケメンで女性からモテまくりだが、刑事としての勤務態度は真面目で、朝は誰よりも早く出勤し、夜は残業している。
  • ジュリー・モット(ティア・レオーニ):カメラマン志望だが仕事はなく、友人であるマックスの家に居候している。マックスと共にフーシェ一味の元に行ったところ、マックス殺害を目撃して一味に追われることになる。マックスからマイクの名前を聞かされていたことから助けを求め、マイクとマーカスに保護される。ベジタリアン。
  • マックス(カレン・アレクサンダー):マイクの友人で高級売春婦。マイクを慕っている。強奪犯は急に羽振りが良くなった人間であるというマイクの予測から、それらしき客がいれば報告して欲しいという依頼を受けた。マイクの予測が的中してフーシェ一味の派遣された先がフーシェ一味のアジトだったが、裏切り者の処刑の場に居合わせたことから、口封じに殺された。
  • フーシェ(チェッキー・カリョ):マイアミ市警退職者から仕入れた内部情報を元に警察の証拠品保管庫に潜入し、大量の押収ヘロインを強奪。精製しなおして密売人に売ることにした。

感想

全然笑えないアクションコメディ

本作は『ビバリーヒルズ・コップ』(1984年)でのドン・シンプソンとジェリー・ブラッカイマーの成功体験が出発点とも言われていますが、クォリティは『ビバリーヒルズ・コップ』にまるで及んでいません。

エディ・マーフィが笑いと男らしさを両立していたのに対して、本作のコメディパートを担うマーティン・ローレンスの見た目はコメディアン然としすぎていたし、笑いの質もかなり落ちています。早口でいろいろとまくし立てるのですが特に面白くもないし、「いま面白いことを言ってますよ」という顔も作りすぎで、余計に笑えなくなりました。

中盤では、ジュリーに対してマーカスとマイクが入れ替わるという展開がそこそこの時間続くのですが、かなり無理やりなシチュエーションを割り込ませたにも関わらず、特に笑いに繋がっていないという恐ろしいことになっています。

そもそも論を無視して暴走する物語

FBIが動き出す前に事件を片付けたい警察と、殺しの現場を目撃されたジュリーを殺したいフーシェ。追う者と追われる者に共通するのは「隠したい」という行動原理なのですが、その割にはド派手なカーチェイスをするわ、街中で銃撃戦をするわで、どちらもそもそもの目的を見失ってないかという状態になっています。

特にひどいのがフーシェで、部下にジュリーを追い掛け回させて、至る所で銃撃戦。もはやジュリーが目撃した最初の殺人事件なんてどうでもよくなるくらい、口封じの過程で他の罪を犯しまくっているというおかしなことになっています。しかも、ここまでやった以上は途中からジュリーへの関心を失うのかと思いきや、クライマックスに至るまでしつこくジュリーを追い掛け回すという謎の執着心を見せます。

ジュリーはジュリーで、身柄の保護を求めてマイクに連絡してきたにも関わらず、一晩経つと自らフーシェを殺しに出掛けるという、昨日とは正反対の行動をとり始めます。手を焼いたマーカスとマイクは彼女に手錠をかけねばならないほどであり、ここまで言うことを聞かずに要らんことばかりをするヒロインを見ていることはストレスでした。

マイケル・ベイのアクション演出のみ良い

そんな感じでお話はダメダメなのですが、マイケル・ベイのアクション演出のみ見応えがありました。後の作品とは違い中規模予算の作品なので至る所で爆破というわけにもいかないのですが、路地裏での平凡な銃撃戦ひとつとってもキメキメでかっこよく、ベイの作り上げたルックスを見るだけで楽しめました。トニー・スコットの映像をよりエッジーにした感じですね。

クライマックスの空港での大銃撃戦に至る流れの作り方や、もっとも派手なアクションを決めた後に男と男の対決を挿入してカタを付けるという〆め方など、王道のアクションの流れをきちっと踏まえた構成としている点も好印象であり、その後すぐに売れっ子監督になった理由も、本作を見れば分かります。

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