【凡作】9デイズ_これぞ企画倒れ映画(ネタバレなし・感想・解説)

軍隊・エージェント
軍隊・エージェント

(2001年 アメリカ)
アクション×コメディ×名優×ベテラン監督と、面白さの掛け算で作られたはずの映画が、全然面白くなっていかないという、これぞ企画倒れの映画。クリス・ロックはアクション映画にハマらないということははっきりした。

感想

1990年代から2000年代にかけて大ヒットを連発していたプロデューサー ジェリー・ブラッカイマーが、もっとも得意としたアクション大作。

人気コメディアン クリス・ロックと名優アンソニー・ホプキンスを組ませ、監督には『バットマン・フォーエヴァー』(1995年)を大ヒットさせたジョエル・シュマッカーを召喚(『バットマン&ロビン』のことはそろそろ忘れてあげて欲しい)。

撮影監督のダリウス・ウォルスキー(『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ)、音楽のトレヴァー・ラビン(『コン・エアー』、『アルマゲドン』)、編集のマーク・ゴールドブラッド(『アルマゲドン』、『パール・ハーバー』)と、ブラッカイマー子飼いのスタッフたちを一斉投入した日には、1億ドル突破の大ヒットは確実かと思われたが、批評家からの酷評&空前の不入りというダブルパンチで撃沈した。

何せ、全米では3000万ドルぽっちしか稼げなかったのだ。

元は2001年12月公開を予定されていたが、同年9月に発生した同時多発テロの影響で、NYへの攻撃を目論む外国勢力が登場する本作はさすがに不謹慎ということになり、2002年6月に延期された。

また即席スパイが外患を打ち負かしてしまうという物語も、当時の観客にとっては絵空事でしかなかった。

かくして豪快に撃沈した本作を、私は20年以上振り返ってこなかったのだが、「今見たら案外面白いんじゃないか」と思い、この夏、ディズニープラスで再見してみた。

舞台はチェコの首都プラハ。

安い人件費や整った撮影スタジオ、そしてチェコ政府から与えられる免税措置が魅力的で、当時のスパイ映画はやたらプラハで撮影されていましたな(『ミッション:インポッシブル』、『トリプルX』、『007/カジノ・ロワイヤル』)

CIA工作員のケヴィン・ポープ(クリス・ロック)は、小型核爆弾の闇取引への潜入捜査に従事していた。

2年に及んだ潜入はいよいよ佳境を迎えつつあったが、核爆弾への入札で競っていたテロ組織に襲われ、ケヴィンは命を落とした。

ミッションの継続は困難と思われた矢先、ケヴィンには乳児期に生き別れた双子の弟ジェイク(クリス・ロックの二役)がいたことが判明。

取引までの9日間でジェイクをケヴィンの代わりに仕立て上げ、作戦を完結させることが物語の骨子となる。

そっくりさんを替え玉に仕立て上げるという着想はクリスチャン・デュゲイ監督の『アサインメント』(1997年)のようであり、それが生き別れの双子であるという設定はジャン・クロード・ヴァン・ダム主演の『マキシマム・リスク』(1996年)のようであり、アフリカ系主人公のメンター役に白人のベテラン俳優が配置されるのは『メン・イン・ブラック』(1997年)のようであり、最終的にNYで核兵器を巡る大捕り物が繰り広げられる展開は『ピースメーカー』(1997年)のようである。

本作に新規性は少なく、様々なアクション映画のパッチワークでしかない。

ここまでくると圧倒的に面白くなけりゃ本当に意味がないのだが、これが面白くないのだからどうにもならない。

まず、クリス・ロックが敏腕エージェントに見えないので、物語の前提となるケヴィンの存在に違和感しかなかった。

ジェイクはジェイクでふざけた奴すぎる。

同じくジェリー・ブラッカイマーが手掛けた『ビバリーヒルズ・コップ』(1984年)のエディ・マーフィーの場合、軽口を止めて真剣な顔をした瞬間に映画全体がグっと引き締まっていたのだが、クリス・ロックは笑いと男らしさのバランスがまったく取れておらず、いつまで経ってもヒーロー然としてこない。

加えてジョエル・シュマッカー監督もコメディアンの扱いには慣れていなかったようで、冗談を言ってもいい場面とシリアスに徹するべき場面の区別がまったくなされておらず、「なんでこんな時におしゃべりを続けるの?」と度々不快な思いをさせられた。

しかもクリス・ロックの笑いがことごとくスベっているのだから、まぁ悲惨だった。アメリカ人が見ると面白いのだろうか?少なくとも日本人に笑える場面は全然なかった。

アンソニー・ホプキンスは「金のために出た」と公言している通り、まったくやる気がない。

終始つまんなそうにしているのは演技ではなく地が出たんじゃないかというほどの、壮絶なやる気のなさだ。

こんなにやる気のない人を見るのは珍しいねというほど、本作レクター博士にはやる気がない。

そんなわけなので、クリス・ロック×アンソニー・ホプキンスのバディにケミストリーは発生せず、終始ぎこちない関係だったのも、見ていてしんどかった。

そんな中でも褒められるのは、撮影のすばらしさだ。

舞台となるチェコの街並みの美しさと、ところ変わってNYに舞台を移した瞬間からの慌ただしさを的確に切り取ってみせたダリウス・ウォルスキーの美的感覚が炸裂している。

後にウォルスキーはビジュアル番長リドリー・スコットの懐刀になるのだが、そうなるのも必然だと言えるほど、本作での撮影技術は光っている。

同じくプラハを舞台にした『トリプルX』などと比較すれば、その素晴らしさが分かっていただけるだろう。

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