(2024年 アメリカ)
待ちに待った30年ぶりの続編。アクセルの親子関係が雑、前作メンバーが歳行きすぎて成立していないなど、少々強引な部分もあるが、それでもちゃんとビバリーヒルズ・コップしていたので、十分合格点だと言える。
感想
90年代から何度も作る作る詐欺を重ねてきて、ようやっとの製作となったビバリーヒルズ・コップ4
『3』の大惨事から実に30年以上を経ての続編であり、同じくジェリー・ブラッカイマー製作の『トップガン マーヴェリック』(2022年)と『バッドボーイズ フォー・ライフ』(2020年)の成功が追い風になったのだろう。
そうそう、バッド・ボーイズの第4弾『RIDE OR DIE』(2024年)は2週間前に鑑賞済なんだけど、レビューが遅れております。近日書こうと思うので、その節はよろしくお願いします。(※7/8にバッドボーイズ4のレビューをアップしました!)
30年の時を経たエディ・マーフィのフォルムはやや丸っこくなったものの、還暦超の年齢までを考えると十分スタイリッシュで、トレードマークであるスタジャンも問題なく着こなしている。
冒頭、目の前に登場したのがちゃんとアクセル・フォーリーだったので、とても安心できた。
一方しんどかったのはローズウッド刑事とタガート刑事で、どちらも年齢を隠しきれていない。タガートに扮するジョン・アシュトンに至っては御年76歳で、現役の警察署長というにはあまりに無理がありすぎた。
こうした旧キャストの無理を補うべく、新キャストが投入されている。
アクセルの新たな相棒役はジョゼフ・ゴードン=レヴィット、悪役はケビン・ベーコン、こんなぶっ飛んだキャスティングを思いつくのは世界広しといえどジェリー・ブラッカイマーくらいのものだろう。
アクセルの娘で弁護士のジェーンがビバリーヒルズで引き受けた案件は警察の不正絡みだった。娘の身を守るためアクセルが四度ビバリーヒルズに乗り込むというのが、ざっくりとしたあらすじ。
ジョゼフ・ゴードン=レヴィット扮するアボット刑事はジェーンの元カレという繋がりで、アクセルとコンビを組むこととなる。
第一作は、デトロイトの下町刑事が、高級住宅地のビバリーヒルズで「あいつは何なんだ?」とか思われながらも、口八丁手八丁で問題解決していくことが醍醐味だったが、本作のアクセルはビバリーヒルズでは知る人ぞ知る存在となっている。
過去3作での活躍を考えると、設定上、そうせざるを得なかったのだろう。映画の骨子部分が大きく変わっているので、往年のファンほどガッカリされるかもしれない。
変わってドラマの骨子となっているのはアクセルと娘ジェーンとのつながりであるが、過去3作品では家族の存在はおろか、交際相手がいるのかどうかすら定かではなかったので、こちらにもやや唐突感があった。
28歳というジェーンの年齢設定を考慮すると、『3』後に生まれたということになっているのだろうけど。
で、アクセルとジェーンとの親子関係だけど、このドラマはあまりうまく流れて行かない。
どうやら確執を抱えた親子のようなのだが、その確執の内容には触れられないので(本編に登場しない妻=母が絡んでいるのだろうが)、この親子が何を乗り越えなければならないのかが判然としないのだ。
気が付けば和解が住んでいるような状態で、映画としてはかなり雑だと感じた。
一方、ビバリーヒルズ・コップの続編としては良くできている。
上述の通り、懐かしのキャストの再演で往年のファンを喜ばせつつも、高齢化したキャストではさすがに無理のある部分は新キャラクターに置き換えている。
既存顧客へのアピールと、新規顧客の取り込みのバランスが絶妙なのだ。
この辺りは、トップガンとバッドボーイズのシリーズ再起動を連続して成功させたジェリー・ブラッカイマーの手腕によるところなのかもしれない。
物語はエディ・マーフィの軽快なおしゃべりで進んでいくが、「もうこのノリはやめておくか」と一定の抑制も利かせ、歳相応のバランス感覚を保っている。
クライマックスの銃撃戦はさすがにしんどそうだったが、序盤のカーアクションや中盤のヘリチェイスなど、見せ場のバリエーションで担保しており、アクション映画としての満足度はそこそこ保たれている。
上述したアクセルとジェーンの親子関係が雑だったのも、アクション映画としてのテンポを優先しての取捨選択だったとすると、その判断はあながち間違っていなかったともいえる。
目を見張るような傑作ではないが、ビバリーヒルズコップ30年ぶりの新作としては十分合格点だったと思う。