ブローン・アウェイ/復讐の序曲【凡作】ドラマとアクションのブレンドに失敗(ネタバレあり・感想・解説)

(1994年 アメリカ)
後のオスカー俳優を複数人配置したゴージャスなサスペンスアクション大作なのですが、監督の演出力不足からかドラマを有効に描けておらず、演技派を配置した大人の娯楽作という企画意図は実現できていませんでした。クライマックス付近の大爆破は素晴らしい見応えだったのですが、そこに至るまでが退屈すぎました。

あらすじ

ジミー・ダヴ(ジェフ・ブリッジス)はボストン市警の爆弾処理隊員。

MITで起こった爆弾騒動を解決しマスコミの注目を浴びたことをきっかけに、ダヴの同僚や恋人の命が狙われるようになった。犯人は元IRA闘志のライアン・ギャリティ(トミー・リー・ジョーンズ)と判明。

実はダヴは元IRAであり、ダヴにとってギャリティは元同僚にして爆弾作りの師匠だった。ギャリティは組織を裏切ってアメリカに渡ったダヴを恨んでおり、彼に苦痛を味わわせるための復讐を開始したのだった。

スタッフ・キャスト

監督は『プレデター2』のスティーヴン・ホプキンス

1958年ジャマイカ出身。

『クリフハンガー』(1993年)のレニー・ハーリンや『イレイザー』(1996年)のチャック・ラッセルらを輩出した『エルム街の悪夢』シリーズの第5弾『ザ・ドリームチャイルド』(1989年)を監督して注目され、ジョン・マクティアナンが去った後の『プレデター2』(1990年)で大作デビューしました。

『プレデター2』はアレな続編の筆頭格として有名ですが、続いて監督したタイトなアクション映画『ジャッジメント・ナイト』(1993年)が好評で息を吹き返し、MGM70周年作品の本作の監督に就任しました。

当初1994年4月公開予定だったところ、サマーシーズン真っただ中の7月に公開日が変更されたほどMGMからかけられた期待は大きかったのですが、興行成績は3000万ドル程度に留まりました。

その後、マイケル・ダグラスが人食いライオンと戦う珍作『ゴースト&ダークネス』(1996年)、往年のテレビドラマのリメイク『ロスト・イン・スペース』が連続してコケて、大作からは完全に声がかからなくなりました。

伝説の人気ドラマ『24 -TWENTY FOUR-』(2001年)では、シーズン1の製作と一部エピソードの監督を務めました。

主演は後のアカデミー賞俳優ジェフ・ブリッジス

1949年LA出身。父も母も兄も俳優という芸能一家に生まれ、父ロイド・ブリッジスとは本作で共演しています。

1歳で俳優としてのキャリアをスタートさせ、『ラスト・ショー』(1971年)でアカデミー賞に初ノミネートされて以降は演技派俳優として評価されるようになりました。4度のノミネートの末に『クレイジー・ハート』(2009年)でアカデミー主演男優賞受賞。

MCU第一弾『アイアンマン』(2008年)にはメインヴィラン役で出演しています。

悪役はアカデミー賞俳優トミー・リー・ジョーンズ

1946年テキサス州出身。油田作業員の息子として産まれ、奨学金でハーバードに進学したという苦労人。大学時代のルームメイトは後に副大統領になるアル・ゴアで、現在でも親交があるようです。

『ある愛の詩』(1971年)で映画デビューしたものの長く下積み生活を経験し、アンドリュー・デイヴィス監督の『ザ・パッケージ/暴かれた陰謀』(1989年)でのサイコな殺人マシーン役を演じた辺りから、ようやく脚光を浴び始めました。

その『ザ・パッケージ』の影響からか、以降は主人公を苦しめる二番手の役柄がしばらく続き(『JFK』『沈黙の戦艦』『逃亡者』『バットマン フォーエヴァー』)、うち『逃亡者』(1993年)ではアカデミー助演男優賞を受賞しました。

MCU第5弾『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011年)にはスーパーソルジャー計画の責任者フィリップス大佐役で出演しています。

感想

元IRAの愛憎劇が描けていない

主人公ジミー・ダヴ(ジェフ・ブリッジス)はボストン市警の爆弾処理隊員であり、シングルマザー・ケイト(スージー・エイミス)との結婚を控えて幸せの絶頂にいます。

しかしダヴには元IRA闘志という隠された過去があり、警察官としてのダヴの活躍を偶然テレビで見かけたIRAの元同僚ライアン・ギャリティ(トミー・リー・ジョーンズ)が、彼を追ってボストンに現れます。

いくら身分を偽っているとは言え元テロリストがアメリカの警察に入れるものなのだろうかというツッコミはさておき、ダヴとギャリティの間には浅からぬ因縁があります。

ダヴにとってギャリティは爆弾の仕掛け方を教わった師匠であり、またかつてダヴはギャリティの妹と交際していました。

ギャリティの妹/ダヴの恋人は爆弾テロに巻き込まれて死亡。その件でテロに嫌気がさしたダヴは身分を変えてアメリカへと脱出し、ギャリティはより凶悪なテロリストへと変貌しました。

その後刑務所に収監されて暗黒の人生を送って来たギャリティにとって、アメリカに渡って幸せな人生を掴んだダヴは許せない裏切り者であるというわけです。

まさにギャリティとダヴは陰と陽。愛する者の死をきっかけにまったく異なる人生を送ることと二人の男の愛憎劇が作品の骨子なのですが、これがうまく描けているとは言い難い仕上がりとなっています。

元恋人の死がダヴの人生観にどれほどの影響を与えたのか、またギャリティがいかに辛い人生を送って来たのかが観客に痛みを感じさせるレベルで描かれておらず、たまに感傷的なセリフがちょろっと入る程度なのでドラマが成立していません。

加えて、ギャリティがダヴの師匠だったように、ダブは新人隊員アントニー(フォレスト・ウィテカー)を教えているという関係性が存在しており、弟子と共にかつての師匠に立ち向かうという興味深い構図が置かれているのですが、こちらもほぼ機能せずに終わっています。

せっかく演技のできる俳優を配置しているのに、監督の演出力不足でドラマを描けていないことは勿体ない限りでした。

プロvsプロの攻防戦に見えない

また、爆弾処理班と爆弾魔の攻防戦としても盛り上がりに欠けます。

手の内を知っている者同士の駆け引きや出し抜き合いというものがなく、ピタゴラ装置みたいな爆弾はちょっと間抜けに感じられて、プロvsプロの死闘に見えませんでした。

「赤のワイヤーか、白のワイヤーか」という古い盛り上げ方は本作の主旨には合っていなかったし、クライマックスに至っては解体が間に合わず、ほぼヤケクソ状態で仕掛けとなっている人形を力技でもぎ取ったら爆弾のカウントが止まるという世にもあんまりな展開を迎えます。

もっと頭や技術を使った戦いを見せて欲しいところでした。

救いは爆破の大迫力

そんなこんなで基本的には面白い映画ではないのですが、監督がこだわり抜いたと思われる爆破シーンは大迫力であり、ここで大きく取り戻していました。

特にクライマックス近くの波止場の大爆破はかつて見たことないほどの規模と火柱で、あまりの壮絶さに呆気にとられました。これが見られただけでも、本作を鑑賞した価値はあったと思います。

このとんでもない爆破を見よ!
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