(1988年 アメリカ)
チャック・ノリスの看板シリーズ第3弾。やってることは基本、第一作と同じことなんだけど、要所要所で良い演出が入るので、侮れない仕上がりとなっている。80年爆破アクションとしては良い方に入ると思う。

感想
むか~し、小学生の頃にゴールデン洋画劇場で途中から見た映画。
敵将に奥さんの頭を吹っ飛ばされるあたりからだったかな。
そこから先の拷問→仕返しというまんま『ランボー/怒りの脱出』(1985年)をなぞった展開には、小坊としてそこそこ満足した記憶がある。
なんだが、本作はその後に再放送された様子もなければ、なんでもかんでもソフト化されていたDVD時代に突入してもディスクのリリースがなく、一度も再見の機会を得られなかった。
本作の視聴困難状態は世界的なものだったらしく、本国アメリカにおいても長年にわたってソフト化がなされておらず、作品に係る権利がどこかで宙に浮いちゃってるんじゃないかとも言われていた。
そして権利関係のいざこざを解消したところで、そこまで巨大な収益が期待されるような作品でもないので、誰も手を出さず放置の状態が続いていたのだろう。
wikiによるとゴールデン洋画劇場で放送されたのが1991年のことで、それから35年間も「途中から見たそこそこ面白い映画」でしかなかった本作が、突如としてAmazonプライムに上がっているのを発見して驚いた。
Amazonに雇われた敏腕弁護士(若いころのリチャード・ギアのイメージ)がテキパキといろんな問題を解決していく画が、私の脳内で再生された。サンキュー、リチャード・ギア。
というわけで35年の時を経ての再鑑賞となったのだが、中身はいつものチャック・ノリスの映画でしかなかった。
まぁ35年間行方不明でも誰も気にしなかった映画なので、そんなもんですよ。
ただし一部にめちゃくちゃいい演出があるので、少なくともシリーズ内ではトップの完成度だと思う。
主人公は『地獄のヒーロー』(1984年)、『チャック・ノリスの 地獄のヒーロー2』(1985年)、に引き続き、チャック・ノリス扮するジェームズ・ブラドック大佐であるが、ここにきて大幅な設定変更が入っている。
ブラドックは1972年にジャングルでの交戦中にベトナム軍の捕虜になり、戦犯として10年もの収容所生活を送っていたはずなんだが、本作においては大使館の守備兵として1975年4月のサイゴン陥落に立ち会い、しかも現地妻まで居たという設定となっている。
ここまでくると、前作以前とは別人と考えた方がいいだろう。
サイゴン陥落が描かれる冒頭は出色のできばえだ。
政権がひっくり返る際の混乱と混沌を、圧倒的な物量と緊張感で描ききっており、この場面だけを切り取ると『キリング・フィールド』(1984年)並みの説得力だった。
ここでブラドックと奥さんは生き別れになるのだが、「妻の腕輪を盗んだ友人が爆死→腕輪をつけた黒こげ死体を見たブラドックは奥さんと勘違い→直後、ブラドックは銃撃を受けて奥さん捜索どころではなくなる」と、観客が疑問を持たずに済むほどの丁寧な描写も光っている。
この導入部だけを切り取ると、B級アクションの傑作誕生の予感すらした。
本作の監督は、前作・前々作のジョセフ・ジトーからアーロン・ノリスに変更となっている。
アーロンはチャック・ノリスの実弟であり、長年にわたってスタントコーディネーターを務めてきて、本作で晴れて監督デビューとなった。
チャック・ノリスとジョセフ・ジトーとの関係はあまりよくなかったとも言われているが、一転して実弟とのコンビネーションは良好で、演出には切れ味があった。
以降、アーロンは『デルタフォース2』(1990年)や『サイドキックス』(1992年)など、兄の専属監督となる。
10年後、ワシントンのバーで一人佇むブラドックの元に、ベトナム遺児の支援をしているというポランスキー牧師が現れる。
牧師いわく「あなたの奥さんは生きていて、お子さんもいますよ。アメリカへの協力者として迫害を受けているので、助けてあげてください」
だがしかし、会ったばかりの牧師の言うことなどすぐに信用できるはずもなく、「あ~、はいはい」と言って追い返すブラドック。
寝耳に水の話をすぐには信用しないというこの辺りの展開の入れ方も気が利いている。
直後、CIAのひげ面二人が現れて、ブラドックを本部にいる上司の元に通す。第一作でのCIA無視の大暴れを念頭に置いた牽制だろう。
CIA「牧師の話は全部出鱈目だから」
ブラ「さっきまでは信じてなかったけど、お前らが焦ってんのを見て真実だと確信したわ」
CIA「ブラドック、勝手なことをするなよ」
ブラ「勝手なことなどするものか。ただ思い知らせてやるんだ」
このやりとりもかっこいいね。
『コマンドー』(1985年)の「必ず戻ってくるぞ」、『ランボー/怒りの脱出』(1985年)の「マードック、迎えに行くぜ」などなど、絶対に勝つと分かっている80年代アクションヒーローが事を起こす前の啖呵は、バチっと決まると本当にかっこいい。
さすがはアーロン、兄の見せ方を心得ている。
が、本作が素晴らしいのはここまでで、あとは前作・前々作と似たり寄ったりのクォリティとなる。
赤くて悪くて汚い国ベトナムへと潜入するブラドック。
前々作に引き続き二度目の国境侵犯ともなれば手慣れたもので、難なく密入国を成功させる。
この緊張感のなさはどうだ。
一時、ブラドックは捕まって拷問を受けたりもするのだが、『ランボー/怒りの脱出』の拷問を実家のカルピス並みに薄めたようなレベルなので、こんなことでチャック・ノリスが死ぬわけないと誰にだって分かる。
反撃ターンに入るとブラドックによる一方的な破壊と殺戮が炸裂するのだが、こちらも演出にタメがなく、景気よく火花があがり、敵兵が勝手にブラドックの弾道に飛び込んでくるような単調な見せ場の連続で、スリルなどというものは皆無だった。
終盤のトラックとヘリのチェイスなんて、似たような場面が何度も何度も繰り返され「いつ終わんねん」って感じだったし。
そもそも敵将が落語家みたいなおっさんで、どう見てもチャックに勝てそうなタマではない。
やはり強敵不在のアクション映画は盛り上がりに欠けますな。
なんだが、最後の最後でまたいい見せ場を持ってくるので、アーロン・ノリスの手腕は侮れない。
ついにタイ国境の橋にまでたどり着いたブラドック一行。
対岸では事態を察知した米軍が待機しており、その中には序盤に出てきたCIAの姿も。
出会いでこそブラドックと対立したCIAだが、同じアメリカ人として彼の帰還を望む気持ちは持っており、しかし国境の向こう側で起こっていることに手出しもできず、ブラドックが自力で橋を渡ってきてほしいと切に願っている。
そこに現れるのが落語将軍を乗せたベトナム軍のヘリコプターであり、ここまで難局を乗り切ってきたブラドックも、ヘリコプターが相手では手も足も出ない。
「頑張れ!ブラドック」と応援する対岸の米兵たち。
そして窮地におちいったブラドックの元に駆け寄ってくるのが現地妻との息子ヴァンであり、息子のサポートを借りてヘリを撃墜することに成功するブラドック。
「よっしゃー!」と阿呆みたいに盛り上がる対岸の米兵たち。
オーディエンスのあるアクション映画は、やはり盛り上がりますな。
実写とミニチュアワークを組み合わせたヘリの撃墜場面の迫力も十分であり、見せ場のポイントはきちんと押さえられている。

