コブラ【凡作】願わくば話がもっと面白ければ(ネタバレあり・感想・解説)

(1986年 アメリカ)
コブラのキャラだけは良かったのですが、彼に見合うだけの敵を作ることも、観客を没入させるだけの物語の構築できておらず、90分に満たないコンパクトな映画でありながら中盤では退屈さすら感じました。

© 1986 – Warner Brothers

あらすじ

ロス市警の暴力刑事コブレッティは、偶然にも重大犯罪の目撃者となり、命を狙われる羽目になったモデルのイングリッドの警護を担当する。しかし警察内に内通者が居たことから、二人は逃避行を余儀なくされる。

スタッフ・キャスト

製作はメナハム・ゴーラン&ヨーラム・グローバス

キャノン・フィルムズ(日本のキャノン株式会社とは無関係)で80年代に一世を風靡したコンビが製作。キャノン・フィルムズの売りは何かが流行っていれば二番煎じを作るという躊躇のなさと、流行っているうちに映画を公開にまで持ち込むという異常な製作スピードであり、ムキムキが剣を振り回す映画が流行っていると見るや『超人ヘラクレス』(1983年)、ダンスが流行っていると見るや『ブレイクダンス』(1984年)、アドベンチャーが流行っていると見るや『ロマンシング・ストーン/キング・ソロモンの秘宝』(1984年)と、枚挙に暇がありません。

『超人ヘラクレス』こんな楽しげなのを量産してました。
© Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

そんな中で一つの論争が起こりました。それは、キャノン・フィルムズがチャック・ノリス主演で製作し全米興行収入No.1を獲った『地獄のヒーロー』(1984年)が、『ランボー/怒りの脱出』(1985年)とあまりに似てやしないかということでした。『地獄のヒーロー』の全米公開が1984年11月7日に対して、『ランボー/怒りの脱出』の全米公開は1985年5月22日と、時系列から考えれば『ランボー』の方にこそパクリ疑惑がかかるべきなのですが、キャノン・フィルムズの前科が余りに多すぎました。1983年頃に書かれたジェームズ・キャメロンによる『ランボー』続編の初期稿をカンニングし、持ち前の製作スピードを活かして本家よりも先に公開まで持ち込んだんじゃないのかという疑惑を持たれたのでした。

事の真相は分かりません。しかし、その翌年には『ランボー/怒りの脱出』の主演であるシルベスター・スタローンと監督であるジョージ・P・コスマトスと共に本作を製作したのだから、キャノン陣営もランボー陣営も、実に心の広い人達だというは確かです。

監督は『ランボー/怒りの脱出』のジョージ・P・コスマトス

ジョルジ・パン・コスマトスと表記されることもあるギリシア出身の映画監督。オットー・プレミンジャー監督の『栄光への脱出』(1960年)、マイケル・カコヤニス監督でアカデミー賞三部門を受賞した『その男ゾルバ』(1964年)などの助監督を務めた後に、1973年に監督デビュー。イタリアの大プロデューサー カルロ・ポンティ製作の『カサンドラ・クロス』(1976年)の脚本・監督で有名になりました。1985年の『ランボー/怒りの脱出』でスタローンと組んでよほど気が合ったのか、スタローンの次回作である本作でも引き続き監督を務めています。

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息子のパノス・コスマトスも映画監督であり、ニコラス・ケイジの振り切れた怪演で話題となった『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』(2018年)を監督しています。

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脚本・主演はシルベスター・スタローン

言わずと知れたアクション映画界の大スター。本作直前の1985年には『ランボー/怒りの脱出』と『ロッキー4/炎の友情』がその年の全米年間興行収入の2位と3位にランクインし(1位は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)、世界最高のスターがその絶頂期に撮ったのが本作でした。話の内容はかなりアレなのですが、スタローンを扮する主人公コブラのみ光り輝いており、スターオーラは映画を救うということを本作で実証してみせました。

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ヒロインはスタローンの奥さん(当時)のブリジット・ニールセン

ブリジット・ニールセンはデンマーク出身のモデルでしたが、大物プロデューサー ディノ・デ・ラウレンティスの目に留まり、『レッドソニア』(1985年)でいきなりの主演デビュー。撮影中には、共演のシュワルツェネッガーとの恋仲にあったと言いますが、当時のシュワは妻帯者だったので不倫ですね。

その後『レッドソニア』の撮影が終わり、NYに帰る飛行機に乗り合わせたスタローンからナンパされて恋仲になって、『ロッキー4/炎の友情』(1985年)でイワン・ドラゴのキツそうな奥さん役にキャスティングされました。二人は結婚し、1986年の本作で夫婦共演となりました。しかし長く続かず翌年に離婚したのですが、その際に何があったのかは以下「『ビバリーヒルズ・コップ』シリーズとの関連」の通りです。

『クリード 炎の宿敵』(2018年)で30年ぶりにスタローンと共演。スタローンの懐の広さには相変わらず感心させられたと同時に、『クリード2』撮影中のニールセンは、54歳にして妊娠中だったという裏話に驚きました。

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『ビバリーヒルズ・コップ』シリーズとの因縁

エディ・マーフィ主演で大ヒットしたドン・シンプソン製作の『ビバリーヒルズ・コップ』(1984年)は、当初スタローン主演で製作が進んでおり、スタローンは自ら脚本も執筆していました。

しかし彼がアクション大作にしようとしたことで製作費の大幅な増加が見込まれ、パラマウントはスタローンを切ることにしました。この時、スタローンには脚本料が支払われていなかったことから、スタ版『ビバリーヒルズ・コップ』の脚本の権利はパラマウントではなくスタローンに帰属しており、この脚本をベースに作ったのが本作でした。

その後、ドン・シンプソンは『ビバリーヒルズ・コップ』の続編を企画していたのですが、女性強盗役の適任者をなかなか見つけられずにいました。そんな中で浮かび上がったのがブリジット・ニールセン。前作でスタローンを切った人たちがその奥さんを使わせてくれと言い出したのですが、人の良いスタローンはこの申し出を了承しました。

ドン・シンプソンはスタローンの懐の広さに感銘を受け、同作においてジャッジ・ラインホルド扮するローズウッド刑事の部屋に『コブラ』のポスターが貼られているのは、スタローンへのリスペクトを表明したものでした。

しかし、この現場で事件は起こりました。事もあろうに監督のトニー・スコットとブリジット・ニールセンが不倫関係となり、スタローンとニールセンが離婚する原因となってしまったのです。二度も顔に泥を塗られたスタローンはさぞ傷ついたことでしょう。

直後に製作された『ロッキー5/最後のドラマ』(1990年)では、懇意にした者に裏切られるロッキーが描かれており、この一連の騒動が彼の中で尾を引いていたのではないかと思います。

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登場人物

  • マリオン・コブレッティ警部補(シルベスター・スタローン):コブラと呼ばれる暴力刑事で、犯罪者を射殺することに一切の躊躇がない。自身にも危ないところがあるためか、凶悪犯の捜査では特に実力を発揮する。ナイト・スラッシャーによる連続殺人を追っていた矢先に、ナイト・スラッシャーに襲われ生還したイングリッドを保護することになったが、警察内にも内通者が居たために孤立無援となった。
  • イングリッド・ヌードセン(ブリジット・ニールセン):モデルで、百点満点の決め顔でヘンテコなロボットと撮影したりするというプロ意識の持ち主。ナイト・スラッシャーの犯行を目撃したために、カルト集団から命を狙われることになる。フレンチフライに物凄い量のケチャップをかけて食べる。
一体何の撮影でしょうか。
© 1986 – Warner Brothers
  • ナイト・スラッシャー(ブライアン・トンプソン):カルト教団の教祖らしき人物だが、常に自ら現場に出ており、部下を束ねている様子もなく、リーダーっぽさがまったくない。犯行現場をイングリッドに目撃され、口封じに何度も何度も襲撃をかけるが、毎回うまくいかない。散々おかしなことを喚いた割には、コブラに銃を向けられると「お前は警察だから撃ってはいけない」とか「俺にも権利がある」とか、途端に普通のことを言い始める。
  • トニー・ゴンザレス巡査部長(レニ・サントーニ):ラテン系の中年で、コブラの相棒。甘いものが好き。演じるのは『ダーティ・ハリー』でハリー・キャラハンの相棒をやってた人。基本的にコメディリリーフで、肝心な時にはほぼ活躍しない。
  • ナンシー・ストーク巡査(リー・ガーリントン):イングリッドの護衛の一人だが、実はカルト集団の一員であり、イングリッドの所在情報を流している。
  • モンテ警部補(アンドリュー・ロビンソン):リベラル派のイヤなところを固めたような人物で、暴力的なコブラを嫌っている。演じているのは『ダーティ・ハリー』でスコルピオをやってた人。
  • シアーズ警部(アート・ラフルー):コブラの実力をある程度買っており、ナイト・スラッシャー対策にはコブラが適任であると考えているが、同時に警官の暴力に厳しいマスコミの目も気にしている。

感想

素晴らしい冒頭に期待が高まる

血を思わせる真っ赤な夕陽を背景にバイクに乗った男の黒い影が迫り、そこに両手に持った斧を打ち鳴らすカルト集団のカットがインサートされ、物々しい音楽がかぶさるイントロは最高で、これから何事が始まるのかと大いに期待をさせられました。

バイクから降りた男はスーパーでショットガンを乱射し、店内はパニックに。次のカットでは警察のヘリや車両が大挙してやってきて、SWATが店を取り囲みます。

しばしの膠着状態の後、颯爽と現場に現れる「無敵の50」のナンバープレート。車から下りてくるのは、明らかに普通ではない刑事コブラ。

作戦など糞くらえと言わんばかりにコブラが店内に入っていくと、わざわざ店内アナウンスで「お前をぶっ殺す」と宣言し、その通りに犯人を処刑します。茶化しているわけではなく、このヒーロー登場場面は本当に百点満点だったと思います。

濃厚にもほどがあるコブラのキャラ

どうかしちゃってるキャラ設定

刑事ものが量産された80年代において、他との差別化のためにコブラのキャラも考えに考えまくったものと思われるのですが、その結果として、濃厚にもほどがある前代未聞の刑事像が生み出されています。

  • “AWSOM50”(無敵の50)というナンバープレートを付けた50年型マーキュリーが愛車(スタローンの愛車が使われたそうです)
  • 愛車はビンテージと見せかけてニトロエンジン搭載のスーパーカー
  • 車はアパートの前に路駐
  • 象牙のグリップにコブラの刻印の入った銃を持っている。
  • アニメを見ながら銃の分解掃除をする。
  • 口には常にマッチ棒を咥え、ピザを食べる時にも皮の手袋を外さない。
  • チーズのかかった食べ物全般が大好きで、チーズは体に良いと思っている。
  • 他人の食事にやたらと口を出す。
  • 自宅には当時まだ珍しかったパソコンがあり、そのパソコンで持ち帰った仕事をこなすというインテリっぽい一面もある
  • 「俺が薬だ」「裁くのは俺だ」「俺に法は通じない」と、俺、俺うるさい。
  • マリオンという名前にコンプレックスがあり、知り合いには自分をコブラと呼ばせている。

こうして書き出すとめちゃくちゃなキャラ設定で、意図的にやっている部分もあれば、作り手側は大真面目でも結果的におかしくなってしまった部分もあると思うのですが、全盛期のスタローンが意外とよくハマっていて、おかしな面を差し引いてもなお、なかなかかっこいいんですよね。昔見た時から現在に至るまで、その印象は変わりません。

ちなみにマリオンというのはジョン・ウェインの本名です。やはりスタローンはコブラをタフガイ中のタフガイにしたかったんでしょう。

意外といるコブラファン

本作には意外なファンが居て、タランティーノは本作を「僕にとっての大事な映画だ」と、実に心温まることを言ってくれています。タランティーノのことなので、「(ある意味)名作だよね」みたいな含みがあるんでしょうが。

一方、ニコラス・ウィンディング・レフンはガチのファンらしく、カンヌ映画祭監督賞を受賞した代表作『ドライヴ』(2011年)ではライアン・ゴズリング扮する主人公のドライバーに爪楊枝を咥えさせているのですが、これはコブラのマッチ棒に相当しているとのことでした。

全然面白くない本編

ただし、特徴的なキャラ設定と冒頭での紹介で力尽きたのか、本編はメタメタです。

  • ナイト・スラッシャーの脅威
  • 警察内の内通者の存在
  • コブラとイングリットの恋愛

本編はこの三本柱だったと思うのですが、どの要素も有効に機能していません。

ナイト・スラッシャーの脅威が薄い

ブライアン・トンプソン扮するナイト・スラッシャーですが、その禍々しい名前とは裏腹に全然怖くありません。キャラ立ちしまくったコブラを圧倒するどころか、傷ひとつ与えられないんじゃないのという程度の見てくれだし、しかもターゲットは『レッドソニア』の女傑や『ビバリーヒルズ・コップ2』の女強盗のブリジット・ニールセンですからね。完全に迫力で負けています。

しかもこのキャラの動かし方もマズくて、ボスの割には現場仕事をしすぎです。イングリットの口封じに自ら出向き、失敗して出直すということを繰り返すために、最初は下っ端か何かだと思って見ていました。リーダーたる者本陣に構え、「こいつが動き出すといよいよヤバイ」というフリーザ的な威圧感を発揮して欲しいところでした。

彼が率いるカルト集団も、いまいちパッとしません。新世界がどうのこうのと訳の分からんことを言っているだけで、根本的な教義や、どんな人間がそこに集まっているのか、規模はどの程度なのかという基礎的な情報が一切不明。

なのでコブラがどれほどの強敵を相手にしているのかという判断もつかず、戦いに緊張感を欠く原因のひとつとなっていました。

警察の内通者が機能していない

原作ではミステリーとして置かれていた要素なのですが、映画版ではさっさと面を割ってしまいます。映画版はミステリーでは勝負しないという判断で、それはそれで良い方針だと思うのですが、ならば観客に対して面を割っているからこそのサスペンスというものが追及されていません。

例えば、観客はそいつが裏切り者だと知っているのに、コブラとイングリッドは信頼しきって危険な行動をとってしまう。この設定であればそんな形でのサスペンスを追及すべきだったと思うのですがそれもなく、居ても居なくても大勢に影響がない存在となっています。

コブラとイングリットの恋愛がマジどうでもいい

こちらもかなりの重症でしたね。そもそもスタローンとニールセンに恋愛要素が向いていなかった上に、実生活でも二人は夫婦というノイズ。

女性を守るヒーローと、その逞しさに惚れるヒロインを夫婦でやっているという見苦しさに加えて、この脚本はスタローン自身が書いたものであるという寒々しさ。私はスタローンが大好きですけど、それでも見ていて苦しかったです。

あと、コブラとイングリットのバカップルぶりもしんどいんですよね。潜伏先のホテルにて、イングリッドが寝ている傍でガシャッガシャッと銃を組み立て始めるコブラ。物音でイングリッドが目を覚ますと「寝られないのか?」と聞くコブラ、「うん寝られないの」と返すイングリッド。

そこから二人はハッピーターンに突入するのですが、人が寝てる傍で銃を組み立て始めるかね、非常識な物音で起こされて「私守られてるわ」と幸せを感じるかねと、とてもしんどかったです。

そもそも論を無視したクライマックス

クライマックスではバイカー集団がコブラとイングリッドに襲い掛かり、街一つが戦場と化すという、キャノン・グループがちょっと前に製作した『スーパー・マグナム』(1985年)のような展開を迎えます。

スーパー・マグナム【4点/10点満点中_とんでもなく楽しいクソ映画】

規模の大きな戦闘にはB級映画らしいハッタリが利いていて楽しかったのですが、イングリッドの口封じをするというそもそもの目的がありながら、もはや口封じとか隠蔽とか言ってるレベルではない大犯罪を犯すのはどうなのよと、その倒錯した内容のために感情は乗っかりませんでした。確かに楽しいアクションなんだけど、物語の構成要素としてはまったく機能していません。