コン・エアー【良作】突き抜けて偉業の域に達したバカ映画(ネタバレなし・感想・解説)

(1997年 アメリカ)
決して真面目に見る映画ではないのですが、作り手側もそれは織り込み済の上で、より派手により面白くを追及して作られた作品なので、頭空っぽにして破壊を楽しむアクション大作としては実によくできています。

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あらすじ

妻を守るために殺人を犯した元レンジャー隊員のキャメロン・ポー(ニコラス・ケイジ)は、7年の服役を終えて家路につく。しかし、彼の乗った囚人護送機(コン・エアー)は凶悪犯サイラス(ジョン・マルコヴィッチ)をリーダーとする囚人グループによりハイジャックされた。加えて、糖尿病の持病を持つ囚人仲間のベイビー・オーがインスリン注射をできなくなり、このままでは数時間以内に命を落とすという状況にも直面する。ポーはベイビー・オーを救うためにハイジャックされたコン・エアーに残り、事態の打開を図る

スタッフ・キャスト

製作はジェリー・ブラッカイマー

『トップガン』(1986年)、『アルマゲドン』(1998年)、『パイレーツ・オブ・カリビアン』(2003年)と、80年代から2000年代にかけてアクション映画界を席巻した大プロデューサーです。

金を稼げない映画には価値がないを信条に、スペックと呼ばれるオリジナル脚本の山の中から観客に受けそうな話を選び出し、大人数の脚本家にブラッシュアップさせ、優れた映像感覚を持つMTV出身の監督に撮らせるという方法でヒット作を量産してきました。

なお、本作は長年のパートナーだったドン・シンプソンとの死別後に単独で製作した作品の第一号です。

監督はCF界出身のサイモン・ウェスト

イギリス出身でテレビCMなどを撮っていたサイモン・ウェストが本作の監督です。当時のウェストはデヴィッド・フィンチャーとドミニク・セナが設立した映像制作会社プロパガンダ・フィルムズに所属していました。

同じくプロパガンダ・フィルムズ所属のマイケル・ベイが『バッド・ボーイズ』(1995年)、『ザ・ロック』(1996年)で連続ヒットを飛ばしたことから、次なるベイを目指してウェストに白羽の矢が立てられたと思われます。

主演はニコラス・ケイジ

今ではB級アクションのイメージの強いニコラス・ケイジですが、90年代前半までは演技派俳優のイメージが強く、むしろブロックバスターとは縁遠い俳優でした。

転機となったのが前作『ザ・ロック』(1996年)であり、続いて本作と『フェイス/オフ』(1997年)でアクション俳優としてのステータスを確立しました。

個性派俳優勢揃い

本作はブロックバスターとは思えないほど個性的な俳優を配置しており、よくぞこんなキャスティングを思いついたものだと感心します。特にスティーヴ・ブシェミなんて爆笑もので、凶悪犯ですらビビるシリアルキラーとして物々しく登場し、レクター博士みたいなマスクを外して出てくるのがスティーヴ・ブシェミの顔ですからね。登場場面で十分なひとネタになっています。

  • ジョン・マルコヴィッチ/猛毒のサイラス:人生のほとんどを刑務所で過ごしている天才犯罪者で、コン・エアーハイジャックの首謀者。
  • ヴィング・レイムス/ダイアモンド・ドッグ:過激な反人種主義軍団を率いており、全米ライフル協会の本部を爆破した。
  • ダニー・トレホ/ジョニー・23:連続強姦魔で犠牲者数は公称23名だが、本人曰く600人は強姦していると言う。
  • スティーヴ・ブシェミ/ガーランド・グリーン:37人を惨殺した有名なシリアルキラーで、凶悪犯達からも恐れられている。

感想

良いバカ映画の見本のような映画

アッサリと囚人たちの手に落ちる輸送機、なぜか完全武装の戦闘ヘリを呼び寄せる権限を持っているDEA捜査官、かっこいい人として描かれているニコラス・ケイジと、本作は間違いなくバカの部類に入る映画です。ただし、作り手たちも分かってバカに徹しているので、良いバカ映画のお手本みたいな映画となっています。

『コマンドー』(1985年)が好例で、良いバカ映画とは余計な説明を省き、ありえないほどド派手な見せ場で観客の目を楽しませるという特徴を持っているのですが、本作もまさにそれなのです。

一応、主人公の家族愛だったり友情だったりというドラマ的要素はあるのですが、それはあくまで戦う動機程度の扱いであって、変に深掘りしようとはしません。

これもまた、誘拐された娘の奪還という目的こそ持っているが、本当に娘の命を案じているのかが甚だ疑問視されるほど躊躇なく暴れ回っていたメイトリックス元大佐に通じるものがあります。

そして、ドラマツルギーというものを放棄した先にある映像的快感。それが本作にも宿っており、実に楽しみながら見られるアクション巨編として機能しています。

コマンドー【傑作】人間の心を持ったパワフルな男

突き抜けて偉業の域に達している

囚人を護送車に乗せて空港まで移動しているだけなのに、その前をパトカーが先導し、後方をヘリが超低空飛行しているという図。現実的にはまずあり得ない構図なのですが、ただカッコいいからという理由でこれを見せてくる心意気が本作を貫いています。

本作ではとにかく何でも派手に爆発します。カーチェイスにおいてはちょっと接触しただけで車がボカンと爆発。燃料切れで墜落したはずの飛行機までが爆発。もはや何に引火したのかすら分かりませんが、これが欠点とはなっていないことが本作の良さです。

派手な爆破を見たいという観客の欲求を満たすために、物理法則を無視してひたすら見せ場を作り込んでくるという旺盛なサービス精神。

加えて極力CGを使わず実際の爆破映像が使用されているのですが、現実にはありえない爆破場面を撮るために本物志向を貫くという倒錯したこだわりが映像に妙な説得力を与えており、2時間は夢中になることができました。

まさに、本作は突き抜けて偉業の域に達したバカ映画なのです。

ニコラス・ケイジがカッコいい人扱い

ニコラス・ケイジは好きですが、彼をイケメンだと思ったことはありません。当の本人も自身をそのように認識しており、一般受けする風貌ではないためメインストリームを避けていたとの発言もあるのですが、本作においては「こんなカッコいい人いていいの」くらいの扱いとなっています。

奥さんは美人で、娘も美人。仲間思いで女性看守にも優しく、また格闘になれば誰にも負けないほどのスキルを見せ、まさにスーパーヒーローとしての風格を漂わせています。しかもロン毛でマッチョ。

ニコラス・ケイジにここまでの男臭さやフェロモンを求めていた観客がどれほどいたのかは分かりませんが、ジェリー・ブラッカイマーとサイモン・ウェストの実力によって、序盤では違和感のあったニコラス・ケイジの風貌に中盤辺りからは馴染んでくるのだから不思議なものです。

裏を明かすと同時期に同じくニコラス・ケイジ主演で『フェイス/オフ』も製作されており、全米公開日が本作は1997年6月5日、『フェイス/オフ』が1997年6月27日とドン被りだったため、見た目の差別化が必要だったという事情があったのですが。

ともかく、ニコラス・ケイジをカッコいい人扱いして映画を製作し、観客にもきちんとその意図で映画を見せることに成功したことは、監督とプロデューサーの手腕と言えるのではないでしょうか。

≪ニコラス・ケイジ出演作≫
ザ・ロック【良作】マイケル・ベイの最高傑作
コン・エアー【良作】突き抜けて偉業の域に達したバカ映画
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