【凡作】ダンテズ・ピーク_仕事しない町長と溶けないタイヤ(ネタバレあり・感想・解説)

災害・パニック
災害・パニック

(1997年 アメリカ)
見せ場のバリエーションやVFXが素晴らしく、災害場面は実に見応えがあったのですが、ドラマがどうにもめんどくさかった上に、バカがバカなことをしでかした結果、主人公達が危険に巻き込まれるというストレスの溜まる構成となっているので、映画としては面白くありませんでした。

©Universal Pictures

あらすじ

ダンテズ・ピークは全米でもっとも住みやすい街第2位にも選ばれ、田舎町ながら美しい環境に人気が集まっていた。ある日、奇妙な数値が観測されたことから地質学者のハリー・ダルトン(ピアース・ブロスナン)が派遣されるが、実地で観測したハリーは大噴火が近いと結論付け、町議会に避難勧告を出すことを進言する。

しかし遅れて現地に入った上司のポール・ドレイファス(チャールズ・ハラハン)は、噴火を示す明確な証拠がないことから、避難勧告は時期尚早と判断する。

スタッフ・キャスト

監督は『スピーシーズ/種の起源』のロジャー・ドナルドソン

1945年オーストラリア出身。20歳でニュージーランドに移住してテレビ番組の演出を手掛けるようになり、『テロリストたちの夜/自由への挽歌』(1977年)で監督デビュー。メル・ギブソン主演の『バウンティ/愛と反乱の航海』(1984年)でハリウッドに進出しました。

ジャンルを選ばずどんな映画でも撮ってみせる器用さと、良作と駄作を交互に出すという油断のならなさから、決してAクラスではないものの見逃せない実力者という立ち位置にいます。

地質学の学位を持っていることが、本作の製作面で役立ったと言います。

本作の主演ピアース・ブロスナンとは、後に『スパイ・レジェンド』(2014年)を製作しています。

製作はジェームズ・キャメロンの元嫁ゲイル・アン・ハード

本作のプロデューサーは『ターミネーター』(1984年)、『エイリアン2』(1985年)、『ターミネーター2』(1991年)と初期ジェームズ・キャメロン作品を支えたゲイル・アン・ハード。ジェームズ・キャメロンの2番目の妻でもある人です。

ゲイル・アン・ハードは男前な女性プロデューサー

主演はジェームズ・キャメロンの内縁の妻(当時)リンダ・ハミルトン

休火山を抱える町の町長レイチェル・ワンダ役はリンダ・ハミルトン。『ターミネーター』(1984年)シリーズ以外でお見掛けすることは非常に珍しいのですが、本作の製作・公開時点では同作の監督ジェームズ・キャメロンの内縁の妻でした。

『ターミネーター』(1984年)撮影時にはキャメロンとは不仲だったものの、『ターミネーター2』(1991年)の撮影中に親密となり、1991年に同居開始。1993年には長女を出産。

1997年にようやく籍を入れたものの、僅か8か月で離婚。しかし『タイタニック』(1997年)でキャメロンが得た膨大な資産の半分はハミルトンの手に渡ったようです。

本作のプロデューサーであるゲイル・アン・ハードとは『ターミネーター』シリーズで一緒に仕事をした仲ではありますが、それにしてもジェームズ・キャメロンの新旧嫁が一緒に仕事するというおおらかさはどうなのと感じてしまいます。

日本で言えば、野田秀樹の舞台に明石家さんまが出演するようなものでしょうか。違いますか。

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ピアース・ブロスナンが地質学者

もう一人の主人公である地質学者ハリー・ダルトンを演じるのはピアース・ブロスナン。ご存知5代目ジェームズ・ボンドであり、本作は『ゴールデンアイ』(1995年)『トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997年)の間に撮られました。

そんな時期なのでブロスナンの色気は異常なことになっており、もはや地質学者には見えません。リンダ・ハミルトンとのロマンスも成立していません。ブロスナンがイケメンすぎるから。

このハリー役、元はマイケル・ダグラスが演じる予定だったようです。

ジェームズ・ボンドにしか見えない地質学者

感想

前半は『ジョーズ』(1975年)の劣化コピー

ピアース・ブロスナン扮する地質学者ハリーは、4年前のコロンビアの火山噴火で当時の婚約者を失ったという設定。そのためか噴火を警戒する姿勢がかなり強めであり、同僚達からすら理解されない場面もあります。

舞台となる町は全米でもっとも住みやすい町第2位に選ばれ、新規の大型投資の受け入れも決まっていることから、かなり風評を気にしています。ここに、生命の安全と地元経済の対立という『ジョーズ』(1975年)以来の定番の流れが発生するのですが、火山に対してトラウマを持つハリーは孤立無援気味となります。

するとハリーは「俺の分析を信じられないなら帰る!」と怒り出すのですが、シングルマザーのレイチェル町長(リンダ・ハミルトン)と良い仲になったこともあって、結局帰らずに観測を続けるので、何だか中途半端です。

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本来、安全vs経済の対立では町長とハリーがそれぞれの意見の代弁者となるべきだったのですが、レイチェル町長はこの件で特に意見を持っておらず、同僚の科学者ポール(チャールズ・ハラハン)がハリーの意見を遮る相手となることから、図式がスッキリしないものとなっています。

加えて、ハリーとレイチェル町長の大人の恋愛がぶっちゃけどうでもいいものだったので、前半部分にはさして興味を持てませんでした。「早く噴火しないかなぁ」と噴火を待ち焦がれてしまったほどです。

見せ場のバリエーションとVFXの素晴らしさ

人間ドラマ中心の開始1時間ほどは退屈だったのですが、いよいよ火山が噴火すると見せ場の連続で不謹慎ながらかなり盛り上がります。

火山噴火の際にどんな災害が発生するのかをちゃんとリサーチした上でアクションに取り込んでいるので、ただ溶岩が流れてきて終わりではなく、見せ場のバリエーションが豊富でもあることにも感心させられました。

まず強めの地震が起こって町の建物が崩れ、ハイウェイも崩落します。次に大量の火山灰が降り注ぎ、その火山灰をエンジンに吸い込んだヘリが墜落。火山活動で溶けた万年雪は洪水を起こしてダムを決壊させ、酸性化した湖では魚が大量死します。

まさに災害の満願全席状態。お腹いっぱいになりました。

これを表現するVFXの出来もすこぶる良く、CG、ミニチュア、ライブアクションを組み合わせた映像では特撮魂も騒ぎました。

実に上出来なハイウェイ崩落場面
設営に4か月を要したド迫力のダム決壊場面

バカが引き起こす危機

ただし、主人公達を見せ場に導くドラマの出来がやはりよくありません。

問題の根っこはレイチェル町長の姑ルース。山奥に住む彼女は「この山が悪いことなんてしやしないよ!」の一点張りで下山を拒否し、親族を困らせています。自分自身はいつ死んでもいいと思っていても、あんたをほっとくことのできない親族の身にもなれと。

そして噴火後にはレイチェル町長の子供ローレンとグレアムが独断でルースを迎えに行き、レイチェルとハリーは危険地域に入ろうとしている二人を追いかけることになるのですが、勝手な行動をとるこのガキにもイライラさせられました。もうアホかと。

結局、酸性化した湖を渡る際にルースは自己犠牲を買って出て死ぬのですが、この場面も感動的でも何でもなく、あんたの頑固のせいでこんな事態になったんだから、当然の責任だろとしか感じませんでした。

公務より家庭優先の町長

ここまで見てきて気になったのがレイチェル町長の動きで、彼女は一貫して公務らしい公務を行っていません。

噴火前にハリーが警告を発しても特に何の意見も持っていなかったことは前述した通りなのですが、いよいよヤバイとなった後にも住民達の避難プランなどを作らず、ただ高校の体育館に全員を集めて「相当危険な状況なので各自逃げてください」と言ってるだけだし、噴火後に子供が山に入ったとなれば躊躇せずその救援に向かいます。

町長としてすべき決断をせず、陣頭指揮を執るべき時に私情に走る。こうなってくると、この町長こそが被害を拡大させた主犯じゃないのかという気すらしてきます。

異様に頑丈な車

あと、ハリーが乗る車は何だか変ですよ。

溶岩に山道を塞がれて絶体絶命という場面でハリーは溶岩の上を通過しようとするのですが、流れたてで熱々の溶岩の上に乗っても溶けない車のタイヤって、一体どんな材質なんだろうかと。

そして通過中に車輪を取られて車が止まるのですが、するとハリーが「おらー!動けー!」と車に向かって怒鳴る場面は、そうじゃないだろと思ってしまいました。ボンドカーじゃないんだから。

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