【駄作】ダイ・ハード4.0_マクレーンが不死身すぎて面白くない(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション

(2007年 アメリカ)
見せ場はド派手になっているのですが、そこに生身の人間が戦っているという感覚は残っておらず、ダイ・ハードらしさは失われていました。マクレーンの戦力描写も敵の設定も杜撰なもので、表面的なド派手さとは裏腹に恐ろしく盛り上がらないアクション映画となっています。

あらすじ

FBI本部のシステムがハッキングされ、FBI副局長ボウマン(クリフ・カーティス)はブラックリスト入りしている全米のハッカーの身柄確保の指示を出した。

当該指示はNY市警にも下り、ジョン・マクレーン刑事(ブルース・ウィリス)はマシュー・ファレル(ジャスティン・ロング)というニュージャージー在住のハッカーをワシントンDCのFBI本部に移送することになる。マクレーンがマシューのアパートを訪れると窓の外から狙撃され、部屋のPCは爆発し、傭兵から追われ、マクレーンは命からがらマシューを連れ出す。

マシューは図らずもテロ組織の手伝いをしてしまっており、その口封じに狙われていたのだった。マクレーンはマシューを使ってテロ組織に迫ろうとする。

スタッフ・キャスト

監督は予告編だけの男レン・ワイズマン

1973年カリフォルニア州出身。

『インデペンデンス・デイ』(1996年)、『メン・イン・ブラック』(1997年)、『GODZILLA』(1998年)に美術部門担当として加わり、その後CMやPV界で名を馳せるようになり、『アンダーワールド』(2003年)で監督デビューを果たしました。

この人は一瞬で心を掴むビジュアルの構築にはかなりの実力を持っており、どの作品も予告を見る限りではかなり期待できるのですが、2時間の物語を紡ぐということは不得意としており、たいていの場合、映画本編は面白くありません。

リメイク版『トータル・リコール』(2012年)をコケさせて以降は大作映画に関わらなくなり、専らテレビドラマばかりを手掛けるようになったのですが、『ダイ・ハード6』には関わっているようで嫌な予感しかしません。

脚本は娯楽作を得意とするマーク・ボンバック

1971年ニューヨーク州出身。

90年代より脚本家として活動し、本作で初めて大作でのクレジットを獲得しました。その後は娯楽映画の大家となり、トニー・スコット監督の遺作『アンストッパブル』(2010年)、本作と同じくレン・ワイズマン監督の『トータル・リコール』(2012年)、アメコミヒーローもの『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013年)、人気シリーズ『猿の惑星:新世紀(ライジング)』(2017年)などを手掛けています。

主演はいつも通りブルース・ウィリス

1955年生まれ。高校卒業後に警備員、運送業者、私立探偵など複数の職業に就いた後、俳優としてニューヨークで下積みを経験し、オフ・ブロードウェイの舞台などに立っていました。

1984年頃にLAに転居してからはテレビ俳優となり、オーディションで3000人の中から選ばれた『こちらブルームーン探偵社』(1985年~1989年)の主演でコメディ俳優としての評価を確立しました。

アーノルド・シュワルツェネッガー、クリント・イーストウッド、リチャード・ギア、メル・ギブソンらに次々と断られた末にオファーが来た『ダイ・ハード』(1988年)の主人公・ジョン・マクレーン役でコメディ俳優の枠を超える評価と、国際的な知名度を獲得。

1990年代前半には多くのアクション大作に出演したのですが、並行してインディーズ映画『パルプ・フィクション』(1994年)にも出演。

スター俳優がギャラを下げてまでインディーズ映画に出演するということは現在では一般的なのですが、ハリウッドスターではじめてそれをやったのがブルース・ウィリスでした。

作品解説

企画の変遷

シリーズの通例通り、本作の脚本はもともと『ダイ・ハード』シリーズとは無関係なものでした。

1997年にワイアード誌に掲載された国のインフラストラクチャに対するサイバー攻撃に関する記事に着想を得て、『エネミー・オブ・アメリカ』(1998年)の脚本家デヴィッド・マルコーニは『WW3.com』という脚本を執筆しました。

同作は単独作品として製作されるはずだったのですが、2001年9月の同時多発テロによってテロは娯楽の題材として相応しくなくなったために、企画中止となりました。

その頃、フォックスは『ダイ・ハード3』の続編を進めていたのですが、企画は難航していました。

そんな中で一旦はボツ企画となっていた『WW3.com』の脚本をあてがわれ、『ダイ・ハード2』(1990年)のダグ・リチャードソンがこれをダイ・ハードとして書き直し、マーク・ボンバックが最終稿を執筆しました。『ターミネーター2』(1991年)のウィリアム・ウィッシャーもノークレジットながら脚本のリライトを行ったと言われています。

かくして『ダイ・ハード3』(1995年)の12年ぶりの続編『ダイ・ハード4.0』は製作されたのでした。

興行成績

本作は2007年6月27日に全米公開され、週末だけで3336万ドルを稼ぐまずまずの初動だったのですが、同時期にピクサーの『レミーのおいしいレストラン』(2007年)が公開され、その翌週には『トランスフォーマー』(2007年)というモンスターが公開されたことから、全米No.1は一度も獲れませんでした。

全米トータルグロスは1億3452万ドルで金額の上でこそシリーズ最高の興行成績だったものの、全米年間興行成績16位という相対的にはパッとしない成績でした。

ただし『ダイ・ハード3』(1995年)よりこのシリーズは世界マーケットで強いという傾向が現れ始めており、本作も世界マーケットでは絶好調。全世界では3億8815万ドルを稼ぎ出しました。

登場人物

マクレーン陣営

  • ジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス):NY市警警部補。統合テロ対策班に所属しており、ニュージャージー在住のハッカーであるマシュー・ファレル(ジャスティン・ロング)をワシントンDCに移送するという任務を受ける。マシューがテロ組織に狙われていたことから、マクレーンも今回の大規模テロ事件に関与することとなる。
  • マシュー・ファレル(ジャスティン・ロング):ニュージャージー出身のハッカーで、インターネット上で知り合った相手がテロ組織とは知らずに協力してしまったことから、後にテロ組織から口封じのため殺されそうになる。
  • ルーシー・ジェネロ(メアリー・エリザベス・ウィンステッド):マクレーンの娘だが、両親が離婚したため母方の姓を名乗っている。テロ組織にマクレーンの娘だと知られたため人質にされる。
  • ボウマン(クリフ・カーティス):FBI副局長で、今回の大規模テロ事件の陣頭指揮に当たっている。シリーズを通して無能揃いのFBIの中では例外的に、まともに話が通じる。

テロリスト

  • トーマス・ガブリエル(ティモシー・オリファント):今回のテログループのリーダー。元は国防総省勤務のエンジニアで、インフラを狙った大規模テロの可能性を警告したが無視されたことに腹を立てて退職。その後地下に潜り、数年かけてインフラへのサイバー攻撃の準備を進めてきた。
  • マイ・リン(マギー・Q):トーマスの部下にして恋人。作戦参謀的な立ち位置にあって協力させている外部のハッカー達を取りまとめており、また自身も優秀なハッカーである。加えて高い戦闘スキルも有しており、格闘ではマクレーン相手に優位な戦いを展開する。

感想

見せ場はインフレ状態

本作はサイバーテロリストとマクレーンが対決するという内容であり、東海岸一帯のインフラをダウンさせるというシリーズ史上最大規模のテロが行われます。

それに伴い見せ場のスケールも大幅にアップしており、爆破や銃撃は朝飯前。パトカーをぶつけて敵のヘリコプターを墜落させたり、マクレーンの運転する大型トレーラーがF-35に襲撃されたりと、とどまる所を知りません。

しかしここまでやってしまうと生身の人間が戦っているという感覚はほぼ残っておらず、見せ場の連続なのに手に汗握らないという娯楽映画の末期症状を示しています。

敵の設定が雑すぎる

シリーズは毎回、明確な目的を持った敵がマクレーンの前に立ちはだかってきたのですが、今回の敵トーマス・ガブリエル(ティモシー・オリファント)は例外的に掴みどころのない設定となっています。

もともと彼は国防総省勤務のエンジニアであり、テロから国を守る側にいました。ある時、インフラがサイバー攻撃を受ける可能性を警告したのですが、組織から聞き入れられなかったために「だったら俺がテロを仕掛けてやる!」と言って国を攻撃する側に回ります。

金を奪うことでも、何かの理念を実現することでもなく、聞き入れられなかった自説を証明するため自分でサイバー攻撃を実践してみるという、分かったような分からんような目的のために大変な労力を割いています。

もっと分からないのは彼に従っている部下達であり、彼らにとって一体何の得があるのか分からない計画のために、かなりのスキルと装備を持っている兵士達がトーマスの言いなりになっています。

そもそもトーマスは反社会性人格でコミュニケーション能力に難ありというFBIのプロファイル結果もあるのに、どうやって自分の理念に共感する人材を集め、軍隊を組織するに至ったのでしょうか。謎です。

また、組織のナンバー2にしてトーマスの恋人でもあるマイ・リン(マギーQ)がオールマイティ過ぎて現実味のない存在となっています。

彼女はコミュ障気味のトーマスに代わって組織のマネジメントをしており、実働部隊や外注ハッカーを使いこなしてスムーズな作戦遂行を実現しています。

しかも彼女自身が優れたハッカーでもあり、百戦錬磨のマクレーンを追い込むほどの戦闘スキルまでを有しており、オールマイティ過ぎてなぜテロリストのような非効率な職業を選んだのだろうかと不思議になります。

彼女のスキルがあればどこの世界でも大成功できたと思うのですが。

ダイ・ハードらしさが損なわれている

ダイ・ハードってどういうシリーズだったのかと考えると、大規模な見せ場と生身の人間の感覚を両立したアクションシリーズがその答えだと思います。

マクレーンは等身大のヒーローであり、戦闘の連続でボロボロに傷ついていくのですが、根性で立ち上がり続けて最後には勝利を掴んでいました。絶対的に強いヒーローではないからこそ、見せ場にはスリルが宿っていたのです。

それは敵も同じくで、『ダイ・ハード』のテログループは金庫のセキュリティ解除作業にかかる時間を計算して緻密な計画を立てていたし、『ダイ・ハード2』『ダイ・ハード3』のテログループも目的物奪取が容易ではないからこそ陽動作戦を立てていました。

マクレーンとテロリストの双方にリアリティという制約条件をかけていくことが本シリーズの特徴だったのですが、本作ではそのタガが外れてしまっています。

見せ場のインフレでマクレーンは超人化し、何が襲ってこようが勝利する怪物と化しています。

敵は魔法の杖のようにPCを使いこなし、政府のどんなシステムにでも一瞬で入り込み、どんなものでも思いのままに操作してみせます。

どんな攻撃を受けようが勝利できる主人公と、何でも自由に操れるハッカーの戦い。こんなものに興奮は宿りません。

≪ダイ・ハード シリーズ≫
【傑作】ダイ・ハード_緻密かつ大胆で人間味もあるアクション大作
【良作】ダイ・ハード2_シリーズ中もっともハイテンション
【良作】ダイ・ハード3_作風が変わっても面白い
【駄作】ダイ・ハード4.0_マクレーンが不死身すぎて面白くない