【良作】エスケープ・フロム・L.A._馬鹿で派手で楽しい映画(ネタバレなし・感想・解説)

SF・ファンタジー
SF・ファンタジー

(1996年 アメリカ)
『ニューヨーク1997』の続編、というか実質的にはリメイク。とはいえスリルや興奮よりも荒唐無稽なアイデアと、それを無理に映像化したことによる馬鹿馬鹿しさが際立っており、前作との差別化はバッチリである。

作品解説

『ニューヨーク1997』15年ぶりの続編

近未来SFの名作とされるジョン・カーペンター(以下、JC)監督作品『ニューヨーク1997』(原題はエスケープ・フロム・ニューヨーク)の続編。

この企画は1980年代半ば頃から検討されており、大物プロデューサー ディノ・デ・ラウレンティスがテレビ脚本家コールマン・ラックに脚本を書かせていたのだが、JCが気に入らず製作には至らなかった。

その後、スネーク・プリスキンの復活を望むカート・ラッセルが製作を粘り強く働きかけ、その熱意に動かされる形でJCも企画に戻って来た。

JCと製作のデブラ・ヒル、主演のカート・ラッセルのオリジナルメンバー3人で脚本を執筆したのだが、ラッセルが脚本にまで参加したのは本作が唯一の作品となる。

また本作はJCが監督した唯一の続編映画となった。

興行的失敗と第3弾の中止

1996年8月9日に全米公開されたが、初登場3位と低迷。全米トータルグロスは2547万ドルで、製作費5000万ドルの半分しか稼げなかった。

この興行的失敗に伴い、第3弾『エスケープ・フロム・マーズ』の製作は取りやめとなる。

後に『~フロム・マーズ』の脚本は書き直されて『ゴースト・オブ・マーズ』(2001年)になり、スネークに該当するキャラクターはアイス・キューブ扮する犯罪者ウィリアムズに置き換えられた。

感想

HDメディアで早く出して

10代の頃に好きだった映画で、4700円もしたレーザーディスクも持っていた。

なんだが日本ではディスク化に恵まれない作品で、2000年代初頭にリリースされた特典映像も何も入っていないDVDがひたすら再販を繰り返しているのみ。

このDVDがまさかの4:3のレターボックス仕様なので、現代のテレビでは上下・左右すべてに黒帯の入った小さい画面で再生されることとなり、見辛いったらありゃしない。

海外では遠の昔にBlu-rayがリリースされており、ちょっと前に4K UHDも出たのに、日本では待てど暮らせどフルHD以上のメディアで出ないという不遇が続いている。

そんな中、我らが午後のロードショーでオンエアーということになり、有難く録画させていただいた。

本作をHD画質で見るのは初めてのことなのだが、目の覚めるような高画質で感動した。

なんだが、ポケモンショック以降、激しい点滅場面ではコマの速度を落とすという処理を施すことが定番化しているテレ東において、暗闇での銃撃の多い本作は鬼門だった。

当該処理のオンパレードで、銃撃戦が見辛いったらありゃしない。

また重低音など音の迫力にも拘りのあった本作を、音量のレンジが抑えられた地上波放送で見るのも辛かった。

やはり本作はしっかりとした環境で見るべき作品であり、高画質メディアでのリリースを強く希望する。

馬鹿で派手で楽しい映画

内容はと言うと、大地震で陸の孤島と化した2013年のLAに、世界中のエネルギーを消滅させられるリモコンを持った大統領の娘が逃げ込み、我らがスネーク・プリスキン(カート・ラッセル)がその奪還を命じられる。

前作のNYをLAに置き換えただけじゃないかと言われると、本当にその通りで、一応は話に連続性があるので続編としての体裁は整っているのだが、その実態は限りなくリメイクに近いという『死霊のはらわたⅡ』(1987年)方式が採用されている。

なんだが西海岸を舞台に移したこともあってか、作風はかなりご陽気。

暗闇から敵が襲い掛かってくるかもしれないというホラー風の味付けが施されていた前作とは対照的に、面白そうなことは全部やってみましたという痛快な作風となっている。

ハリウッドに行けば変態整形外科医のブルース・キャンベルがいるし、敵にとっ捕まると闘技場でバスケのシュート対決(ミスれば即射殺)をさせられたり、ピーター・フォンダと並んでサーフィンしたりと、西海岸の風物詩をそのまま見せ場として組み込んでいく。

まぁ馬鹿なんだが、完全に冗談でやっていることが分かるので清々しくなってくるし、5000万ドルもの巨費を投じたバカ騒ぎなので見た目にも豪勢で楽しい。

で、それだけ金をかけている割にはCGの出来が異常に悪く、やたらチープな場面も存在していることが、本作の妙な味となっている。

これは現在の目で見ると粗く見えるというレベルではなく、1996年当時からあのCGの低クォリティは指摘されていたので、筋金入りのボロ合成だと言える。

そして、かねがね私はカーペンターはアクション演出がうまくないと書いてきたのだが(『ゼイリブ』『ゴースト・オブ・マーズ』)、本作の場合はスリルや迫力よりも突き抜けた馬鹿馬鹿しさが強調されているので、カーペンターの弱みはさほど感じなかった。

白眉はハングライダーを使った空からの襲撃で、常識的に考えればいい標的にされるだけだろうと思うところなのだが、スネーク達は被弾することなく、少数精鋭で敵に対して打撃を与えることに成功する。

そんなわけでスジは全く通っていないんだが、見た目の面白さとハッタリで乗り切れていることが本作の素晴らしいところで、101分という短めの上映時間もあって、頭空っぽにして楽しむことができる。

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