【凡作】ゴースト・オブ・マーズ_題材の割に弾けきらない(ネタバレあり・感想・解説)

クリーチャー・メカ
クリーチャー・メカ

(2001年 アメリカ)
あらすじやキャストを見る限りはB級アクションの最高峰になるのではという期待もあったのですが、本編には見せ場もゴア描写も不足している上に、ゴースト達も大して強くはなく、バカ映画のはずなのにまったく弾けきらない点が残念でした。

作品解説

『ニューヨーク1997』第三弾の脚本だった

本作の脚本が書かれたのは1996年のことで、主人公はスネーク・プリスケン(カート・ラッセル)でした。

しかしその年に公開された『エスケープ・フロム・L.A.』(1996年)が興行的に失敗したことからシリーズ第三弾の製作は中止となり、その後に脚本はスタンドアローンの作品として書き換えられました。

ナターシャ・ヘンストリッジはピンチヒッター

本作の主演はコートニー・ラブが務める予定だったのですが、撮影直前にプライベートで負傷をして降板。

出演者の一人リーアム・ウェイトが当時婚約中だったナターシャ・ヘンストリッジに本作への出演を薦め、撮影開始一週間前にヘンストリッジ主演に決定しました。

ただし数作品への出演をこなした後に休みなく本作の撮影に入ったヘンストリッジは、本作撮影中に疲労困憊がたたって仕事の継続が一時困難となり、彼女に休息をとらせるため撮影が1週間ストップしました。

またカリスマ的な犯罪者ウィリアムズ役はジェイソン・ステイサムが演じる予定だったのですが、当時まだアクション俳優としてのステイタスが固まっていなかったステイサムでは役不足と判断され、より知名度の高いアイスキューブに置き換えられました。

全米大コケ作品

本作は2001年8月24日に公開されたのですが、初登場9位と低迷。この興行的不振を受けて2週間で上映は打ち切りとなり、全米トータルグロスは870万ドルに留まりました。

国際マーケットでも同じく苦戦し、全世界トータルグロスは1401万ドル。製作費2800万ドルの製作費の半分しか回収できませんでした。

本作の失敗でハリウッドでの映画作りに限界を感じたジョン・カーペンターは監督業を休止し、『ザ・ウォード/監禁病棟』(2010年)までの9年間は新作を発表しませんでした。

感想

SF西部劇

本作の舞台はテラフォーミングが進んだ未来の火星なのですが、本編はSF感ゼロ。

登場人物たちの武器は銃や刃物だし移動手段は鉄道で、SF的なガジェットは一切登場しません。

全体の建付けは昔ながらの西部劇そのものなのですが、政治的な理由で現在では悪いインディアンを登場させられなくなったので、SF設定を置くことで作劇上の制約条件を回避したのだろうと思います。

題材は素敵なのに盛り上がらない

調査隊が火星の遺跡を掘り起こしてしまい、太古の火星の支配者だった幽霊たちを目覚めさせます。幽霊たちは火星に住み着いた人間に憑依し、その集落を次々と滅ぼしているのですが、運悪くそこに居合わせてしまった凶悪犯と警官たちが協力して地獄の集落からの脱出を図るというのがザクっとしたあらすじ。

凶悪犯と警察官が共闘するという構図には燃えるものがあるし、しかも敵は火星の幽霊たち。このチャイルディッシュにも程がある取り合わせも最高です。

そして主人公は『スピーシーズ』(1994年)のエロエイリアンでおなじみのナターシャ・ヘンストリッジだし、その上司は『ジャッキー・ブラウン』のパム・グリアだし、部下はジェイソン・ステイサムだし、凶悪犯役アイスキューブだし、公開前には「絶対おもろいやつやん!」と確信していました。

が、いざ見てみるとガッカリしたのが20年前の初見時の記憶。

そして今回、ザック・スナイダー監督の『アーミー・オブ・ザ・デッド』(2021年)の印象があまりにも似通っていたのであらためて本作を見返してみたのですが、感想は20年前と同じくでした。

98分というタイトな上映時間にも関わらず物語の展開が遅く、派手なアクションが始まるのが本編開始後50分過ぎというスロースタートぶり。

見せ場が少ないなら少ないで、仲間内の誰が憑依されたのかという『遊星からの物体X』(1982年)のような疑心暗鬼のサスペンスがあるのかと思いきや、それもなし。憑依された奴は見た目にはっきりとそうだとわかるので、そこにドキドキ要素はないわけです。

で、後述する通り敵が強いようで強くないので見せ場もさほど盛り上がらないし、ナターシャ・ヘンストリッジの回想という形式をとっているために彼女が修羅場を抜け出せることはわかっているため、特にハラハラもさせられませんでした。

意外と手強くない火星のゴースト達

あとガッカリだったのが火星のゴースト達の見掛け倒しぶりです。

鑑賞前に本作のスチールを見た時、マリリン・マンソンの柄を悪くしたようなゴーストのビジュアルには大感激しました。加えて、彼らは生首を串刺しにして並べており、容赦のないゴア描写にも期待したのですが、どちらもダメでした。

まずゴーストの戦闘力ですが、生身の主人公達が格闘をして何とかなるレベルなので、特に強くありません。雑魚がそうなのはいいとして、リーダーのマリリン・マンソンくらいは超強力で、ジェイソン・ステイサムとアイスキューブが共闘してようやく勝てるかどうかレベルであって欲しかったのですが、こいつも大して強くありませんでした。

気が付けば消えてたし。

全体にゴア描写も足りていません。一応、ゴースト達が投げる刃物で腕が飛んだり首が飛んだりはするのですが、本当にたまにそういうことがあるという程度なので、ゴア描写の密度は物凄く薄いです。

あと気になったのが、ゴースト達はなぜ弱い奴に憑依するのかということでした。

ゴーストは自由に人間に憑依できるのだから戦闘力の高そうなアイスキューブやジェイソン・ステイサムに憑依すればいいものを、老人とか学者とか、戦闘においてこれといった役に立ちそうもない人間にばかり憑依します。

敵がおかしな手加減をしてくれるようでは、アクション映画は盛り上がりませんね。

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