【凡作】60セカンズ_善良な犯罪者の映画に良作なし(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション

(2000年 アメリカ)
善良な心をもった犯罪者しか出てこない犯罪映画なので、全体的にパンチに欠ける出来でした。加えて見せ場の数も不足しており、犯罪映画としてもアクション映画としても成功していません。

©Touchstone Pictures

あらすじ

元自動車泥棒のメンフィス(ニコラス・ケイジ)は、6年前に足を洗って現在はカタギとして生きている。そこにかつての仲間アトレー(ウィル・パットン)が現れ、メンフィスの弟キップ(ジョヴァニ・リビシ)が警察に踏み込まれて盗品の高級車を押収されてしまい、密売人カリートリー(クリストファー・エクルストン)への納品ができない状態になっていると言う。このままではキップが殺されてしまう。メンフィスはカリートリーとの交渉に向かうが、そこで出された条件とは4日後の朝に迫った期限までに高級車50台を盗んで納品せよというものだった。

スタッフ・キャスト

製作はジェリー・ブラッカイマー

『トップガン』(1986年)『アルマゲドン』(1998年)、『パイレーツ・オブ・カリビアン』(2003年)と、80年代から2000年代にかけてアクション映画界を席巻した大プロデューサーです。

金を稼げない映画には価値がないを信条に、企画の山の中から観客に受けそうな話を選び出し、大人数の脚本家にブラッシュアップさせ、優れた映像感覚を持つMTV出身の監督に撮らせるという方法でヒット作を量産してきました。本作もそんな作品群の中の一つです。

監督は『カリフォルニア』(1993年)のドミニク・セナ

1949年生まれ。1983年にデヴィッド・フィンチャーと共に映像制作会社プロパガンダ・フィルムズを設立し、1990年には全米のMTVの1/3を製作する会社にまで成長させました。

『ザ・ロック』(1996年)のマイケル・ベイや『トレーニング・デイ』(2001年)のアントワン・フークアはプロパガンダ・フィルムズ出身なので、彼らの元上司ということになります。

自身もブラッド・ピット主演の『カリフォルニア』(1993年)で映画界に進出したのですがパッとせず、7年空けての本作が映画2作目となります。

複数人の脚本家

ブラッカイマー作品の例に漏れず、本作にも複数人の脚本家が関わっています。

まずメインで執筆していたのは『コン・エアー』(1997年)のスコット・ローゼンバーグだったのですが、監督のドミニク・セナとの間で意見の相違が発生したために降板。

その後、『ザ・ロック』(1996年)を匿名でリライトし、『コン・エアー』(1997年)、『アルマゲドン』(1998年)にはプロデューサーとして参加していたジョナサン・ヘンズレイと、『アルマゲドン』(1998年)に脚本家として参加していたJ・J・エイブラムスが脚本を執筆し、完成へと導きました。

『ゴッドファーザー』(1972年)関係者が複数人出演

偶然だとは思いますが、本作には『ゴッドファーザー』(1972年)に関連した俳優が複数人出演しています。

まず主人公メンフィスを演じるニコラス・ケイジは、フランシス・フォード・コッポラの甥です。

次に強盗団のブレーンである整備工オットーを演じるロバート・デュヴァルは、コルレオーネファミリーの相談役トム・ヘイゲンとしてアカデミー賞助演男優賞にノミネートされた名優です。

最後に、若い自動車強盗タンブラーを演じるスコット・カーンは、『ゴッドファーザー』(1972年)でソニー・コルレオーニを演じたジェームズ・カーンの息子です。

作品解説

オリジナル『バニシングin60”』(1974年)とは

本作は1974年に製作された『バニシングin60”』という作品のリメイクです。

『バニシングin60”』は自動車のカスタム・ボディ・ショップを営んでいたH・B・ハリッキーの自主製作映画であり、ハリッキーは製作、監督、脚本、主演、スタントのすべてを自らこなしました。

ハリッキーが自分の車と店の売り物、身内や知人を総動員して製作した同作は、40分にも及ぶカーチェイスが話題となって世界各国で大ヒットしました。

ハリッキーは1989年に『バニシングin60”』の続編の製作を開始したのですが、スタントシーンのために建造した給水塔のセットが倒れ、それに巻き込まれたために死亡しました。

なお本作『60セカンズ』(2000年)にプロデューサーの一人としてクレジットされているデニス・シャカリアン・ハリッキーは、H・B・ハリッキーの未亡人です。

(参考:『映画秘宝2000年9月号』)

全米No.1ヒット作

本作は2000年6月9日に全米公開され、2週連続No.1だった『ミッション:インポッシブル2』(2000年)のV3を阻んで初登場1位となりました。翌週にはサミュエル・L・ジャクソン主演の『シャフト』(2000年)に敗れて2位に後退したものの引き続き売上は好調で、最終的な全米トータルグロスは1億164万ドルとなりました。

世界マーケットでも同程度稼ぎ、全世界トータルグロスは2億3720万ドル。年間興行成績第15位という好調ぶりでした。

感想

「善良な心を持つ犯罪者」はつまらない

主人公メンフィス(ニコラス・ケイジ)は伝説的な自動車泥棒なのですが、6年前、警察に尻尾をつかまれる前に足を洗い、現在は子供達にカートを教えています。

そんな兄に憧れていた弟のキップ(ジョヴァンニ・リビシ)は現役の自動車泥棒であり、ヤバイ密輸業者カリートリー(クリストファー・エクルストン)に迷惑をかけたことから、だったら兄貴が仕事を完遂してこい、できなければ弟を殺すぞと脅されて復帰を余儀なくされることが本作のおおまかなあらすじです。

このあらすじからお察しの通り、主人公メンフィスとその仲間達に犯罪者らしいトゲや殺気というものはなく、車を愛してやまない善良な面々という性格付けがなされています。

善良なのになぜ自動車泥棒なんかしているんだろうというそもそもの矛盾にはつっこまないにしても、善人が主人公の犯罪映画は盛り上がりに欠けます。

観客が犯罪映画に求めるものとは、一般人だと常識や法律に阻まれてできないことを犯罪者なら気にせずやってしまうことの痛快さ、他方で法律に保護されていないからこその緊張感、何かあれば手が出て来そうな剝き出しの暴力性などではないでしょうか。

しかし、本作は車泥棒を善人と位置付けてしまったために、犯罪映画に必要な殺伐とした空気が致命的に欠けた、なんとも味気ないクライムアクションとなっています。私はこのアプローチに賛同できませんでした。

ニコラス・ケイジがかっこいい人扱い

ニコラス・ケイジがアクションに進出した『ザ・ロック』(1996年)の時点ではオタク化学者という位置づけだったのですが、『コン・エアー』(1997年)を経ての本作では、完全にかっこいい人扱いとなっています。

アンジェリーナ・ジョリー扮するスウェイがメンフィスの元カノという設定。当時20代前半のアンジェリーナ・ジョリーは美の絶頂にあり、ニコラス・ケイジとは見た目も年齢もまったく釣り合っていないのですが、本作では何の断りもなしに、二人はかつて恋人関係にあったということにされています。

加えて、スウェイの元を去ったのはメンフィスの方であり、今回の復帰においてもメンフィスに未練を持つスウェイが協力者として参加したという描かれ方となっています。

ニコラス・ケイジがトム・クルーズやウィル・スミス並みにカッコいい人として描かれているわけですよ。この違和感は物凄かったですね。

ニコラス・ケイジは好きな俳優ではあるのですが、彼の扱い方が間違っているような気がします。

見せ場の数が少ない

まず本作のアクションの良いところですが、カーアクションを中心に据えるために銃撃や爆破という、いつものブラッカイマー作品のアイコンが控えめになっています。

私は爆破場面が好きではあるのですが、企画の主旨を考えると、本作においては爆破を抑制するというアプローチが正しかったと思います。車を愛する人々の映画なのだから、現実的にありえない爆破などを避けたことは正解だったと。

加えて、前述の通り本作の自動車強盗団は善意を持つ人々の集まりということにもなっているので、銃撃戦や肉弾戦もありません。これもアプローチとしては間違っていないと思います。

ただし、その反動として見せ場の数が少ないという別問題が発生しているのですが。

ニコラス・ケイジがシェルビー・コブラ(愛称エレノア)に乗ってLAを爆走するクライマックスこそ見応えがあったのですが、そこに至るまでに際立った見せ場がなかったことは結構厳しかったです。

クライマックスの一点しか見せ場がないのであれば2時間弱という尺はちょっと長すぎましたね。もっとテンポを良くして90分程度の尺にすれば、見せ場の少なさはさして問題に感じられなかったかもしれません。

全部ぶち壊しのラスト

警察との壮絶なカーチェイスの末に、メンフィスは最後の一台エレノアをカリートリーに納車します。しかしそもそもヴィンテージカーである上に、無理な走行をさせられたエレノアはボロボロ。

しかも納車が15分遅れたということでカリートリーは取引未成立としてメンフィスの殺害とエレノアの廃車を部下に指示します。

メンフィスを殺すのはいいとしても(よくないのですが)、売り物であるエレノアを潰すというのはそもそものカリートリーの目的に反する行為なので、ちょっと理解できませんでした。

そしてここからメンフィスの反撃が始まり、現場に警察が踏み込んできたこともあって、メンフィスはカリートリーの殺害に成功します。

って、カリートリーを殺して終わりでは、そもそもの自動車強盗にまったく意味がなくなりません?高級車50台を盗み出すという大計画など立てず、最初っからカリートリーの命を狙えばよかったじゃんってことになるので。

本編でやって来たことすべてを否定するかのようなこのオチには開いた口が塞がりませんでした。

≪ニコラス・ケイジ出演作≫
ザ・ロック【良作】マイケル・ベイの最高傑作
コン・エアー【良作】突き抜けて偉業の域に達したバカ映画
フェイス/オフ【良作】濃厚コッテリなジョン・ウー総決算
60セカンズ【凡作】善良な犯罪者の映画に良作なし
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