【良作】グリーンランド -地球最後の2日間-_えげつない緊張感(ネタバレなし・感想・解説)

災害・パニック

(2020年 アメリカ)
世界の破滅を描いたディザスター映画なのですが、派手な破壊よりも人間ドラマを重視し、また市井の人々の視点で描いていることから、従前作品とは一味も二味も違う仕上がりとなっています。主人公に万能性がない分、緊張感があり、最初から最後までまったく気が抜けませんでした。

作品解説

『エンド・オブ・ステイツ』のコンビ作

本作が企画されたのは2018年のことで、『第9地区』(2009年)のニール・ブロムカンプが監督し、キャプテン・アメリカことクリス・エヴァンスが主演の予定でした。

ただし二人とも降板して『ブラッド・スローン』(2017年)のリック・ローマン・ウォー監督が起用され、その後ジェラルド・バトラーがキャスティングされました。

二人はマイク・バニングシリーズ第三弾『エンド・オブ・ステイツ』(2019年)でも組んでおり、そちらでは2週連続全米No.1ヒットを獲得しました。

完成した作品はスペクタクルよりも家族のドラマが強調されており、リック・ローマン・ウォーの持ち味が遺憾なく発揮されたものとなっています。当初のブロムカンプよりもローマン・ウォーの方が適任だったと思います。

全米では劇場公開から動画配信へ変更

作品は2020年7月31日に全米公開予定だったのですが、コロナ禍で上映の目途が立たないまま公開予定日が何度も変更され、最終的に全米公開は断念。アメリカでは2020年12月18日にストリーミング配信されました。

しかし日本では奇跡的に公開の目途が立ち、2021年6月4日に公開。私は初日に行ってまいりましたが、客は10人程度しかいませんでした。早くコロナ禍が終わって欲しいものです。

感想

日常が壊される序盤が良い

クラーク彗星(SF作家アーサー・C・クラークからとられたんだとか)が地球に接近し、その一部が隕石として落下して人類を存亡の危機に追い込むというディザスター作品。市井の人々の視点にこだわったことが、これまでのディザスター映画との差別化ポイントとなっています。

導入部からして異質。通常、この手の映画は危機の存在をいち早く知った科学者などの視点からスタートするのですが、本作はこの時点から市民目線です。

まだ危機を知らされていないテレビは「史上最大の天体ショーです」と言って呑気に盛り上がっており、市民もお祭り気分で空を見上げています。

上空には軍用機が飛び交い、町には見慣れない軍用車両も走っているのですが、それを見ても「何かあったのかな?」くらいで、よもや政府が危機対応を始めてるなんて思いもしないわけです。

しかし破片が地表を直撃し、フロリダ州タンパを壊滅させる様がテレビに映った瞬間に、人々は事態を認識します。これは本当にヤバイやつだと。

永遠に続くと思われた日常が破られ、もう後先がないかもしれないと分かった瞬間に走る戦慄。本作はそれを見事に表現できています。

こういうパニック映画を見たかった!

主人公はジョン・ギャリティ(ジェラルド・バトラー)。妻子とは別居中なのですが、その日はご近所さんとのホームパーティがあるので自宅に戻っていました。

隕石落下の直前、彼のスマホには政府からの内密のお知らせが届いていました。あなた方家族はシェルターに入ってもらうので、21:45までに空軍基地に来なさいとのこと。

『ディープ・インパクト』(1998年)『2012』(2009年)でもお馴染みの箱舟に乗る権利というやつですが、本作ではこれがかつてないほどフィーチャーされています。

まず通知電話が気持ち悪いことこの上なし。自動音声案内でただ一方的に要件と場所、時間が伝えられるのみで、細かい事情の説明や、こちらからの質問の受付などは一切なし。この差し迫った感じから、もし間に合わなければ次の便の案内などないんだろうなということが伝わってきます。

建築技師のギャリティは崩壊後の世界の再建のために必要な人材とみなされてシェルター行きを案内されたようなのですが、ご近所さん達はその権利を持っていません。

で、「なんでギャリティさん家だけがシェルターに入れるんだよぉ」と向こう三軒両隣に衝撃が走ります。

明らかに何か言いたそうだけど、言葉を押し殺して「元気でな」と最後の挨拶をしてくるお隣さんもいれば、「うちの娘だけでも連れて行ってあげて!」と涙ながらに懇願してくるご近所さんもいる。

呑気にシェルターに入る権利の譲り合いをしていた『ディープ・インパクト』(1998年)のような緩い空気などそこにはなく、生かされる側に選ばれた者が、選ばれなかった者達を振り切って目的地を目指すという修羅場が繰り広げられます。

生きるか死ぬかがかかった時に現れる人間の本性と極限のやり取り。こうしたものがかなりリアルに描かれており、本作のドラマには緊張感と迫真性があります。そこにVFXを用いた大スペクタクルはなくても、その迫力には飲まれました。

こういうパニック映画が見たかったんですよ。

スマホなしでの待ち合わせがこんなに難しいとは!

ギャリティ一家は政府から指定された空軍基地に到着するのですが、そこで衝撃の事実を突きつけられます。

実は連絡ミスがあり、糖尿病を患う息子さんは飛行機には乗れませんとのこと。しかもその重要な時に、ギャリティは子供のインスリンを取りに行くため妻子から一時的に離れていました。

妻子が飛行機で待っていると思ったギャリティは飛行機に向かって走るのですが、その時妻子は足止めを食らっていた。こうして、混乱の中でお互いを見失ってしまいます。

離陸寸前のところでギャリティは妻子が乗っていないことに気づいて飛行機を降りるのですが、混乱の最中では妻子が一体どこにいるのかが分からない。しかも災害時にありがちな回線のパンク状態でスマホも繋がらない。

『日本沈没2020』(2020年)でも現代人はスマホなしだと待ち合わせができないことが描かれていましたが、本作ではより切羽詰まった形でこれが描かれます。

本作は上映時間のかなりの部分を家族が再び出会うまでの捜索劇に充てているのですが、彗星衝突のタイムリミットが迫っている中での捜索劇は見ているこちらもハラハラさせられました。

加えて、状況が状況なので他人の親切を受けられないばかりか、ギャリティ一家が持つシェルターに入る権利が余計な争いを生んだりもするので、彼らの捜索劇の難易度はより高いものとなります。その結果、えげつないほどの緊張感がありました。

最後にちょっとだけ文句

そんなわけでとてつもなく面白かった映画なのですが、ちょっとだけ気になった点もあったので、そのことも書いておきます。

まず、公務員の意識高すぎです。市民は「俺たちに明日はない」と言わんばかりに混乱している中、軍隊や警察は機能し続けています。劇中のセリフによると、軍人の99%はシェルターに入る権利を与えられていないとのことなのですが、彼らが一体何を誘引に仕事をし続けているのかがよくわかりません。

水道や電力などのライフラインも生き続けているのですが、発電所の人たちも何が嬉しくてあと2日で滅ぶ世界で働き続けているのかがわかりません。

また、劇中で主人公は乗り合いトラックや民間の飛行機に乗るのですが、こうしたものを運転している人たちが公共交通機関でもないのに赤の他人を受け入れている理由もわかりませんでした。

この辺りをもっと合理的に提示してくれれば、よりシャープな映画になったと思います。