【良作】ハイランダー 悪魔の戦士_見所の多い娯楽作(ネタバレなし・感想・解説)

異世界

(1986年 アメリカ)
説得力のある脚本、ファンタジーと重厚な史劇の折衷を成し遂げたビジュアル、奇跡的な完成度のクィーンの楽曲と見るべきところの多い娯楽作として仕上がっています。特に『リヴ・フォーエヴァー』が流れるマクラウドと愛妻ヘザーの死別場面は涙なしには見られない名場面であり、その抒情性の高さにも感動しました。

あらすじ

1985年、マディソン・スクエア・ガーデンの駐車場で男性が斬首される事件が発生し、現場から車で走り去ろうとしていた古美術商ラッセル・ナッシュ(クリストファー・ランバート)が逮捕された。程なくして証拠不十分につきナッシュは釈放されたが、凶器が骨董ものの剣だったことと古美術商というナッシュの肩書が整合したことから、法医学者ブレンダ・ワイアット(ロクサーヌ・ハート)はナッシュへの関心を持つ。

ブレンダの調査により、ナッシュは他人の出生記録を改ざんして身分を偽装していることが発覚。公文書の筆跡を遡ることで、彼が数百歳である可能性が示唆される。

ナッシュの本名はコナー・マクラウドで、16世紀のスコットランド高地の出身だった。彼は首をはねられない限り死亡しない不老不死者であり、彼ら不老不死者は最後の一人になると大いなる力が与えられるということで、同種の人間同士で殺し合っていた。

スタッフ・キャスト

MTV出身監督の先駆けラッセル・マルケイ

1953年オーストラリア出身。80年代前半にもっとも成功したMTV監督であり、MTVアワードなどを受賞。その経歴を引っ提げて映画界入りしてビジュアル系監督として名を馳せ、後のデヴィッド・フィンチャーやマイケル・ベイのロールモデルとなりました。

監督第2弾である本作後にはカロルコでアーノルド・シュワルツェネッガー主演『トータル・リコール』(1990年)の監督をする打ち合わせをしていたのですが、スタローンに引き抜かれて同じくカロルコの『ランボー3 怒りのアフガン』(1988年)の監督に就任。

しかしクランクイン後にスタローンとの意見衝突が発生したために撮影中ながら降板し、第二班監督だったピーター・マクドナルドが急遽監督を引き継ぐという事態に発展しました。

その後はデンゼル・ワシントン主演のサスペンスアクション『リコシェ』(1991年)、キム・ベイシンガー主演の『ブロンディ 女銀行強盗』(1993年)、アレック・ボールドウィンが1930年代のヒーローに扮する『シャドー』(1994年)などを手掛けたのですがすべてヒットせず、ドルフ・ラングレン主演の『スナイパー/狙撃』(1996年)辺りからB級街道まっしぐらとなりました。

途中『バイオハザードⅢ』(2007年)をヒットさせるという成果を挙げたものの、キャリア再浮上には繋がらずに現在に至っています。

フランス人俳優クリストファー・ランバートが主演

主人公コナー・マクラウド役にはクリストファー・ランバート。

1957年ニューヨーク出身なのですが母国はフランスであり、2歳の時にはアメリカを離れています。

1980年頃から映画出演を開始し、原作に忠実にターザンを実写化した『グレイストーク -類人猿の王者- ターザンの伝説』(1984年)で脚光を浴び、リュック・ベッソン監督の『サブウェイ』(1985年)」でセザール賞最優秀男優賞を受賞しました。

当初、本作にキャスティングされていたのはカート・ラッセルでしたが、パートナーのゴールディ・ホーンからの助言もあってプリ・プロダクション中に降板し、ジョン・カーペンター監督の『ゴースト・ハンターズ』(1986年)へと移っていきました。

それを受けてランバートがキャスティングされたのですが、出演契約後にランバートが英語を話せないことが発覚して製作陣は焦り、英語のコーチが付きっきりでの指導を行って撮影に臨みました。

鋭い眼光が特徴なのですが、極度の近眼であるためただ目付きが悪いだけだということです。

共演はショーン・コネリー

主人公の師匠にして友人のラミレス役にはショーン・コネリー。

スコットランド出身の大御所というこれ以上ないほどピッタリなキャストなのですが、他にリー・ヴァン・クリーフ、クリント・イーストウッド、マルコム・マクダウェル、ジーン・ハックマン、マイケル・ケイン、ピーター・オトゥールがキャスティング案に上がっていました。

本作唯一のビッグネームであるコネリーからは高額ギャラが要求されていたため、彼の出演場面は僅か7日間で撮影されました。たった7日の拘束でも100万ドルを手にしたので、コネリーにとっては実においしい仕事でした。

またコネリーとランバートが意気投合したことから、続編『ハイランダー2/甦る戦士』(1991年)にもコネリーは続投することとなります。

作品解説

映画学科の学生が宿題で書いた脚本だった

本作の元になったのは”Shadow Clan”という脚本なのですが、後に『バックドラフト』(1991年)などを手掛けることになる脚本家グレゴリー・ワイデンがUCLA在学中に授業の宿題で執筆した脚本であり、リドリー・スコット監督の『デュエリスト/決闘者』(1977年)にインスピレーションを受けた物語でした。

脚本を読んだ講師はこれをエージェントに送るようアドバイスし、ワイデンは卒業前の学生ながら20万ドルの脚本料を手にしました。

オリジナルはよりダークな内容だったのですが、映画化にあたって『レッド・オクトーバーを追え!』(1990年)のラリー・ファーガソンと旧ドラマ版『ニキータ』(1997年)のピーター・ベルウッドによる脚色を受け、娯楽性が高められました。

興行的には大失敗だった

本作は1986年3月7日に全米公開されたのですが、初登場7位、2週目にはトップ10圏外に押し出されるという大コケでした。

全米トータルグロスは590万ドルと1200万ドルの製作費の回収すらできず、全世界トータルでも1290万ドルにとどまり、映画館の取り分や広告宣伝費を考えると赤字だったと考えられます。

ビデオリリースによるカルト化

ただしビデオリリースによって人気を博し、カルト的な位置付けを獲得したことから、3本の続編映画(1991-2001年)とテレビシリーズ(1992年)、アニメシリーズ(1994-1996年)が製作されるという一大フランチャイズにまで成長しました。

2016年には『ジョン・ウィック』(2014年)のチャド・スタエルスキが本作リブートの監督に就任したという報道があったのですが、あの話は一体どうなったのでしょうか。

登場人物

16世紀のスコットランド

  • コナー・マクラウド(クリストファー・ランバート):1518年スコットランド高地出身。戦の最中にクルガンに脇腹を刺されて絶命したかに見えたが、復活したことから自身の不死の能力に気付く。魔術を疑われて一族を追われた後には鍛冶職人となり、ヘザーという女性と結婚して穏やかな日々を送っていたが、そのヘザーとも死別して以降は何世紀にも渡って孤独な生活を送って現在に至る。1985年のニューヨークでは古美術商ラッセル・ナッシュを名乗っている。
  • フアン・ラミレス(ショーン・コネリー):紀元前896年エジプト出身。357歳の時に(それでも紀元前)サキコという日本人女性と結婚し、その父から日本刀マサムネを授けられた。16世紀に宿敵クルガンを追ってスコットランド高地を訪れた際に同種であるマクラウドと出会い、親交を結ぶ。
  • クルガン(クランシー・ブラウン):スコットランド高地クルガン族の最後の一人にして不死者。積極的に戦いを仕掛けるその姿勢は、マクラウドやラミレスから脅威と見られている。
  • ヘザー(ビーティ・エドニー):16世紀スコットランド高地出身の女性。マクラウドの妻となるが、生身の人間であるためマクラウドよりも先に亡くなる。

1985年のニューヨーク

  • ブレンダ・ワイアット(ロクサーヌ・ハート):NY市警の捜査に協力している法医学者。マディソン・スクエア・ガーデンの駐車場で起きた殺人事件で骨董品の剣が使われていたことから事件への関心を持ち、容疑者であるラッセル・ナッシュ(=コナー・マクラウド)に接触する。
  • レイチェル・エレンスタイン(シェイラ・ギッシュ):ラッセル・ナッシュ(=コナー・マクラウド)が経営する古美術店で秘書を務めている50代の女性。幼少期に第二次世界大戦を経験し、家族を失ったところをマクラウドに助けられた。以降はマクラウドの養女となって現在に至り、彼が不死者であることを認識している。

感想

ファンタジーと史劇の華麗なる折衷

作品は現代に起きた殺人事件の捜査と、その容疑者であるラッセル・ナッシュ(=コナー・マクラウド)の回想の組み合わせで構成されています。

現代の殺人事件は、凶器が骨董品であるとかナッシュに係る公文書がおかしいとか、現実的に考えうる方法でナッシュの正体を解き明かそうとするアプローチが興味深いもので見ていて楽しめました。

回想パートは壮大さと重厚さで真っ当な史劇のような風格。アカデミー賞受賞作『ブレイブハート』(1995年)に先駆けてスコットランド高地の壮観な自然を背景とし、コナー・マクラウド(=ラッセル・ナッシュ)の流転の人生を映し出します。

さらに不死者同士の争いには人外の死闘という風情が宿っており、剣を交えると火花が散り、相手を倒すと電撃が走るという派手な演出が史劇の雰囲気を毀損することなく挿入されています。

さすがに現在の目で見るとVFXにぎこちない部分もあるのですが、それがチープさではなく独特の味になっているので、決して悪くはありません。

ビジュアル派として名を馳せたラッセル・マルケイの映像表現の多彩さ、ファンタジーと史劇を華麗に折衷した手腕には脱帽なのです。

クィーンの楽曲が奇跡的な出来

本作の楽曲を担当したのはクィーン。

デヴィッド・ボウイ、スティング、デュラン・デュランらが検討された後にクィーンに落ち着き、また彼らは主題歌一曲だけを作る予定だったのですが、フッテージを見る中でどんどん楽曲のイメージが湧いていき、各メンバーが1~3曲を作曲し、合計で6曲が提供されるという大盤振る舞いに。

中でもブライアン・メイが作曲した『リヴ・フォーエヴァー』は2014年にローリング・ストーン誌が発表したクィーンの楽曲ベスト10で第5位にランクインしたほどの人気作となりました。

この『リヴ・フォーエヴァー』はマクラウドが最愛の妻ヘザーと死別する場面で使われるのですが、当該場面全体が二人の過ごした数十年を数分にまとめるというミュージックビデオのような作りになっていることから、楽曲とのマッチングがえらいことになっています。涙なしには見られませんでした。

楽曲にも恵まれた本作は非常に幸運な作品だったと言えます。

クルガンがラスボス感ゼロ

そんなこんなで全体的には好きな映画なのですが、悪役クルガンにラスボスらしい重厚感がなかったことだけはマイナスでした。

演じるのは『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年)で主人公達をしごいた末に志願兵として戦場に赴く訓練教官ズィム役のクランシー・ブラウンであり、本作でもズィムに負けず劣らずの脳筋ぶりを披露します。

とにかく他の不死者をぶっ殺すのだという行動原理のみで動いており、戦っていない時には安宿の店番を脅したり、教会の蝋燭を手で消すという嫌がらせをしたりと、やることに思慮の欠片もありません。

不死者達って常人の何倍も生きている分、見た目年齢を遥かに超えるほど老成しているのですが、最低でも500歳は越えているクルガンは子供じみたことばかりをやります。

主人公に斬られる雑魚の一人としてこういうのがいてもいいとは思うのですが、ラスボスの品格じゃないよなぁと。

どうやらクルガンのキャラクターには変遷があったようで、最初のキャスティング候補はスコット・グレンとロイ・シャイダーでした。この時点では複雑な人格を持つ重厚なラスボスだったと考えられます。

その後ルトガー・ハウアーやニック・ノルティを経て、最終的にクランシー・ブラウンに落ち着いたので、そのキャラクターはどんどん単純化されていったのだろうと思います。作り手が想定していた以上に本作には史劇らしい風格が備わった分、漫画的なクルガンが恐ろしく浮くという問題が発生しています。