【良作】アウトロー(2012年)_ハードボイルド界の寅さん(ネタバレなし・感想・解説)

軍隊・エージェント

(2012年 アメリカ)
原作とイメージが違いすぎるなどと批判の多い作品ですが、純粋にサスペンスアクションとしてよくできている上に、トム・クルーズの非凡な存在感がジャック・リーチャーというキャラクターにもマッチしていて、私は好きな作品です。

作品解説

原作『ジャック・リーチャー』シリーズとは

本作の原作はリー・チャイルズの推理小説『アウトロー』(2005年)であり、これはジャック・リーチャーシリーズ第9作目にあたります。

ジャック・リーチャーとは『キリング・フロアー』(1997年)で初登場したキャラクターであり、彼を主人公にしたジャック・リーチャーシリーズは23作の小説が発表されており、95か国、40言語に翻訳されているベストセラーです。

なお、このトム・クルーズ主演の映画シリーズ製作後の2019年にAmazonがドラマ化権を取得しているので、近い将来テレビシリーズ版も見られそうです。

興行的には並レベルのヒット

本作は2012年12月21日に全米公開され、『ホビット 思いがけない冒険』(2012年)に敗れて初登場2位でした。その後も爆発することはなく公開4週目にしてトップ10圏外へとフェードアウト。全米トータルグロスは8007万ドルと並クラスの売り上げでした。

国際マーケットではやや持ち直し、全世界トータルグロスは2億1834万ドル。トム・クルーズ主演作としてはやや物足りなかったものの、製作費6000万ドルの中規模作品としては悪くない数字であり、並レベルではあるがヒットはしたと言えます。

感想

リーチャーはハードボイルド界の寅さん

本作の主人公はトム・クルーズ扮するジャック・リーチャー。

リーチャーは元米軍憲兵隊捜査官で、与える勲章がなくなったと言われるほどの腕利きでしたが、ある時突然除隊して以来、軍からはきれいさっぱり足を洗っていました。

  • 住所不定の流れ者
  • 車は持たず専らバス移動。どうしても必要な場合は敵の車を奪う。
  • 服は着ている一着のみ
  • 携帯電話は持たず公衆電話を利用
  • クレジットカードは持たず常に現金払い

現在のリーチャーはこんな感じで、さながらハードボイルド界の寅さんといった感じなのですが、いざ犯罪捜査に加われば異常なほどの洞察力を示し、格闘や銃撃においても圧倒的なスキルを披露します。

リーチャーは「〇〇は△△だった。だから××であるはずだ」という推理を度々披露するのですが、そのロジカルな思考回路や、リーチャーの予言通りに事が起こっていく様は見ていて実に気持ち良かったし、格闘面での圧倒的な強さも最高でした。

キャラ立ちしていることが探偵ものの必須条件ですが、リーチャーは見事にその条件をクリアーしているというわけです。

加えて、スターオーラ全開のトム・クルーズの常人離れした個性がジャック・リーチャーにマッチしており、なかなかの適役だったと思います。

原作のリーチャーは2m近い巨体でドルフ・ラングレンやスティーヴン・セガールのイメージに近いようで、小柄なトム・クルーズがキャスティングされた際には物議を醸したようなのですが、原作をよく知らない日本人にとっては大した問題ではありません。

本作で初めてジャック・リーチャーに触れた私にとって、トム・クルーズのリーチャーは最高でしかありませんでした。

クリストファー・マッカリーの手腕が光る

そんなリーチャーが今回挑むのは無差別狙撃事件。

事件の容疑者として警察に拘束された退役軍人ジェームズ・バーは憲兵隊時代のリーチャーに逮捕された過去を持ち、バーからの直接指名でリーチャーが現場のピッツバーグを訪れます。

このバーという男はイラク駐留中に狙撃事件を起こした真性のサイコパスなのですが、イラクではたまたま軍が隠蔽したい別の事情と重なったことで無罪放免になっていました。

そんな過去があるので当初リーチャーは本件の犯人もバーだと考えているのですが、軍で訓練を受けたスナイパーならこんな場所から狙撃はしないだろという不自然な点などに気づき、バーはハメられたのではないかと思い始めます。

そこから「バーを犯人に仕立てあげた黒幕とは何者なのか」「黒幕はなぜ無差別狙撃事件を起こしたのか」というミステリーへと突入していきます。

本作の脚色と監督を担当したのは『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』(2015年)のクリストファー・マッカリーであり、この人はクライムサスペンスの傑作『ユージュアル・サスペクツ』(1995年)の脚本家としてアカデミー賞受賞経験も持っているだけに、本作のミステリーも実にうまく作り上げています。

前述したリーチャーの推理の論理的な美しさや、読めそうで読めない陰謀の正体、憎々しい悪役の存在など、実に魅力的な探偵ものとなっているのです。

加えてマッカリーは偏執的なまでにガンアクションにこだわった『誘拐犯』(2000年)の監督でもあるので、本作でも素晴らしい銃撃戦を作り上げています。

ただ乱射するのではなく、確実に当てるつもりで撃ち合う銃撃戦には他のアクション映画にはない緊張感とリアリティが宿っており、目が離せませんでした。

本作はクリストファー・マッカリーの実力によって並み以上のサスペンスアクションになっており、私は大満足できました。