【凡作】ジョーズ’87復讐篇_今度はストーカー映画(ネタバレあり・感想・解説)

クリーチャー・メカ
JAWS, 1975

(1987年 アメリカ)
サメがブロディ一家に復讐しに来るという荒唐無稽な話なので真面目に見ると相当しんどいのですが、90分程度のコンパクトな内容である上に、水中撮影は結構よくできていているので、割り切って見れば暇つぶし程度にはなります。世間で言われるほどの最低作品ではないように思います。

©Universal Pictures

あらすじ

かつて巨大サメを倒したマーティン・ブロディは心臓発作で亡くなっており、次男のショーン(ミッチェル・アンダーソン)は父の跡を継いでアミティ警察の保安官となっていた。ある夜、アミティ沖の丸太を撤去して欲しいとの要請を受けたショーンは一人で海に出て行き、そこでサメに襲われて命を失う。

ショーンと同居していた母エレン(ロレイン・ゲイリー)は悲しみに暮れるが、長男マイケル(ランス・ゲスト)からの誘いもあって、妻子を持つマイケル一家が暮らすバハマへ移り、しばらくマイケル宅に滞在する。

孫とのふれあいやセスナ機パイロット・ホーギー(マイケル・ケイン)との恋で徐々に元気を取り戻すエレンだが、サメはエレンを追ってバハマ沖にも姿を現わす。

スタッフ・キャスト

監督は『サブウェイ・パニック』(1974年)のジョセフ・サージェント

1925年ニュージャージー州出身。『0011ナポレオン・ソロ 地獄への道連れ』(1966年)で映画監督デビューし、『ターミネーター』(1984年)を先取ったSFサスペンス『地球爆破作戦』(1970年)、後にトニー・スコット監督でリメイクもされるクライム・サスペンスの佳作『サブウェイ・パニック』(1974年)が好評となります。

ただし『サブウェイ・パニック』以降はパッとした作品を撮っておらず、80年代以降はテレビ映画に活躍の場を移していました。

ロレイン・ゲイリーがついに主演昇格

1937年ニューヨーク出身、ロサンゼルス育ち。子供の頃から演技を開始し、16歳で地元劇団の女優賞を受賞。1956年に弁護士のシド・シャインバーグと結婚しました。

夫のシド・シャインバーグは後にユニバーサルの重役となってスピルバーグを発掘した人物であり、また1973年からユニバーサルCEOに就任。その縁もあって、ユニバーサルが製作しスピルバーグが監督する『ジョーズ』(1975年)にて、主人公マーティン・ブロディの妻エレン役にロレイン・ゲイリーがキャスティングされました。

その後、スピルバーグもロイ・シャイダーもシリーズを去り、二人の息子は毎回俳優が入れ替わる。伝説の第一作との接点はもはやロレイン・ゲイリーの存在のみとなったシリーズ4作目において、ついに主役の座に躍り出たのでした。

共演は名優マイケル・ケイン

1933年ロンドン出身。1956年に映画デビュー。長い下積みを経て『ズール戦争』(1964年)で脚光を浴び、『国際諜報員』(1965年)で主演クラスのスターとなりました。

『アルフィー』(1966年)でアカデミー賞初ノミネート、『ハンナとその姉妹』(1986年)でアカデミー助演男優賞を受賞したのですが、本作の撮影でバハマ滞在中だったため授賞式を欠席したという武勇伝を持っています。

このエピソードが示す通り、名優でありながら非常に多作で仕事を選ばない傾向があり、『ポセイドン・アドベンチャー2』(1979年)や『沈黙の要塞』(1994年)のようなまともな俳優なら近寄らない作品にも金さえ積まれれば出るというツワモノぶりを披露します。

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作品概要

ラジー賞7部門ノミネート作品

『ジョーズ2』(1978年)の時点すでに話に無理矢理感が出ており、『ジョーズ3』(1983年)で限界を突破した感があったのに、また作ってしまったシリーズ第4弾。

公開当時から一貫して不評の作品であり、ラジー賞では堂々の7部門ノミネート、1部門で受賞となりました。

  • ワースト作品賞【ノミネート】
  • ワースト主演男優賞(サメのブルース)【ノミネート】
  • ワースト主演女優賞(ロレイン・ゲイリー)【ノミネート】
  • ワースト監督賞(ジョセフ・サージェント)【ノミネート】
  • ワースト助演男優賞(マイケル・ケイン)【ノミネート】
  • ワースト脚本賞(マイケル・デ・ガズマン)【ノミネート】
  • ワースト視覚効果賞【受賞】

劇場版とVHS版の違い

本作は劇場版とVHS版で結末が異なります。

劇場版はボートのマストが刺さったサメが絶命して終わるのですが、VHS版ではマストに刺さったサメが大爆発を起こし(何に引火したのかは謎)、その直前にサメに食べられていたマリオ・ヴァン・ピーブルズが腹の中から生還するという、物凄い終わり方をします。

VHS版は背景の空がいかにも書き割りですという感じで雑だったので、後付けで撮り直したものだと推測されます。

現在Netflixで配信されているのは劇場版、Amazonプライムで配信されているのはVHS版なので、動画配信で両バージョンを見比べることができます。良い時代になりましたね。

なお、日曜洋画劇場版はマイケル・ブロディがシャア・アズナブルこと池田秀一さんだったり、マイケル・ケイン扮するホーギーが安定の羽佐間道夫さんだったりするので、吹替の出来は日曜洋画劇場版の方が上でした。

感想

感応し合うサメとエレン

冒頭、“Jaws The Revenge”のタイトルと共にアミティ沖に姿を現わす例のヒレ。

本作はシリーズで三度仲間を殺されたホオジロザメが、憎きブロディ一家に復讐しに来るという荒唐無稽な物語となっています。

サメに仲間意識などあるのか、人間の個体を識別できるのか、人間の血縁関係を理解できるのか、主に地上にいる人間の行動がなぜ分かるのかといった疑問の数々が浮かぶのですが、その点に関しては特に説明や言い訳はなく、そういうものだと受け入れて見なければなりません。

まずサメはアミティ沖に流木を設置し、その除去にやって来たブロディ家の次男ショーン(ミッチェル・アンダーソン)を襲って殺します。

息子の死にショックを受ける母エレイン(ロレイン・ゲイリー)は、長男マイケル(ランス・ゲスト)からの勧めもあって妻子持ちのマイケル一家が暮らすバハマへとやってきます。

するとサメもバハマへと移動。

遅れてバハマに到着したサメの気配を感じ取るエレン。

サメとエレンは感応しあっています。怨敵というよりも、もはや仲良しさんじゃないかというレベルで。

一応前作までは「獰猛な野生動物vs人間」という図式が保たれており、ブロディ一家はたまたまサメ騒動に巻き込まれ、その対応の中心人物になるという常識の範囲内で理解可能な物語となっていたのですが、本作は完全にオカルトの領域に達しています。

そしてサメの異様な執念はモンスターというよりもストーカーレベルとなっており、なぜそこまでブロディ一家のみに執着するのだろうかと不思議で仕方ありません。

まぁ好意的に考えれば、長年に渡る因縁の中でモンスターとその被害者が感応し合うようになるという設定は後の『エイリアン4』(1997年)や『バイオハザードII アポカリプス』(2004年)を先取っていると言えなくもないのですが。

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未亡人エレン・ブロディの熟年の恋路

サメが居ない時に描かれるのは、夫マーティンを失って未亡人となったエレンの熟年の恋です。

エレンはバハマに来る際にセスナ機のパイロットであるホーギー(マイケル・ケイン)と出会い、ホーギーはエレンにガンガン迫っていきます。最初は乗り気ではなかったエレンも、冗談がうまく紳士的なホーギーを受け入れるようになり、二人は熟年の恋を楽しみます。

って、こんな話に誰が興味あるんですかね?

マイケル・ケインは良い俳優だと思うし、この時点で魅力もありましたが、それにしても孫の居るエレン・ブロディとホーギーの恋なんてぶっちゃけどうでもいいのです。

サメが出てこない時には二人のデートがひたすら描かれるという構成は辛かったです。孫を守ろうとするおばあちゃんの話に振り切ってくれればよかったのに。

カーニバルを楽しむエレン。肩パット入れすぎでゲルググのようないかり肩

海中場面は結構スリリング

そんなわけでダメな部分が多いのですが、サメが襲ってくる場面のスリルはなかなかよくできており、サメを楽しむための映画だと割り切ってしまえば、そこそこ見られます。

中でも素晴らしかったのが沈没船内でのマイケルとサメの追っかけっこであり、サメが狭い通路を猛スピードで泳ぎ、人間は機転で逃れるという前代未聞の構図には結構ハラハラさせられました。

この場面は、後にレニー・ハーリン監督の『ディープ・ブルー』(1999年)に影響を与えたと見ています。

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