【良作】ジュラシック・パークⅢ_おっさんの成長譚(ネタバレあり・感想・解説)

クリーチャー・メカ

(2001年 アメリカ)
企画が行き詰った結果、しがない中年男たちが凶悪恐竜から逃げ惑うという誰得な内容となったシリーズ第3弾。あまりに大衆受けを放棄した概要ではあるのですが、そういうものだと思って見ればおっさんの成長譚としては実によくまとまっているし、派手さを捨てたおかげでアクション映画としては実にソリッドな仕上がりとなっています。これはこれでいいんじゃないでしょうか。

作品解説

スピルバーグもクライトンも関わっていない第3弾

本作に原作はなく、完全に映画オリジナルの物語です。企画の初期段階のブレストには原作者マイケル・クライトンも参加したのですが、その場ではよいアイデアが浮かばなかったので原作者がほとんど関与しない作品となっています。

そしてスピルバーグも不参加。『A.I.』(2001年)と『マイノリティ・リポート』(2002年)の製作で忙しい時期にあって、本作を監督する余裕がなかったためです。

代わって『レイダース/失われた聖櫃』(1981年)でアカデミー視覚効果賞を受賞し、スピルバーグとは旧知の仲だった元視覚効果マンのジョー・ジョンストンが監督に就任しました。

実はジョンストンは第一作『ジュラシック・パーク』(1993年)が公開された時点より続編の監督に名乗りをあげていたのですが、ユニバーサルの意向により『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997年)にはスピが続投し、本作で晴れて監督就任となりました。

二転三転した脚本

本作の初稿を執筆したのは、後にピアース・ブロスナン主演の『ダイヤモンド・イン・パラダイス』(2006年)を脚本を執筆するオーストラリアの映画人クレイグ・ローゼンバーグで、ローゼンバーグは10代の若者がソルナ島で窮地に立たされる物語を構築しました。

監督のジョンストンはこれを悪い出来だとは思わなかったものの、観客が見たいものではないとして却下。

次に雇われたのがピーター・バックマン。彼は後に『エラゴン/遺志を継ぐもの』(2006年)や『チェ 28歳の革命』&『チェ 39歳別れの手紙』(2009年)を執筆する脚本家です。

バックマンはソルナ島から飛び出したプテラノドンがコスタリカ本土で相次いで人を殺す話と、ソルナ島に墜落したグラント博士一行がサバイバルする話が同時進行で展開する物語を構築しました。

この脚本をベースにキャスティングやセットの建設が進んでいたのですが、スピルバーグとジョンストンは内容が複雑すぎるとして撮影開始5週間前になって脚本をボツにしました。

まったく時間がない中で雇われたのが、後にアカデミー脚色賞を2度も受賞することになる名脚本家アレクサンダー・ペインと、その製作パートナーのジム・テイラー。

アクション映画の経験がまったくないにも関わらず声がかけられたことに当人たちも驚いたのですが、ユニバーサルが『ミート・ザ・ペアレンツ』(2000年)での彼らの仕事ぶりに感銘を受けての抜擢でした。

すでにセットの建造が進んでおりアクションパートはバックマンの脚本を引き継がざるを得ない中で、ペインとテイラーはキャラクターとストーリーの改善を行いました。

そして最後に雇われたのが『チャーリーズ・エンジェル』(2000年)のジョン・オーガストで、オーガストは4週間で書き上げられたペインとテイラーの脚本の最終的な手直しを行いました。

シリーズ最低の興行成績

本作は2001年7月18日に全米公開され、公開第一週目の興行成績が5077万ドルで初登場No.1を獲得しました。ただし初動で9000万ドル稼いだ前作『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997年)と比較するとかなり見劣りする金額でしたが。

翌週には売上高は半減し、ティム・バートン監督の『PLANET OF THE APES/猿の惑星』(2001年)に大差で敗れて2位に後退。

全米トータルグロスは1億8117万ドルで年間第7位という一般的には悪くない成績だったものの、年間トップクラスを争うことが常の『ジュラシック・パーク』シリーズにおいては最低の数字となりました。

国際マーケットにおいても同程度の売り上げで、全世界トータルグロスは3億6878万ドル。こちらも年間第8位と期待にそぐわない結果に終わりました。

ただし本作をスルーしたスピルバーグの『A.I.』(2001年)が日本以外のすべての市場で完膚なきまでにコケたので(全米トータルグロス7861万ドル足らず)、本作が責められることは少なかったのですが。

感想

くたびれたおっさん達の物語

本作の主人公はグラント博士(サム・ニール)。第一作の時点では気鋭の古生物学者だったグラントも8年後の本作ではしがない中堅学者となっており、以前の輝きは失われています。

かつて公私両面でコンビを組んでいたサトラー博士(ローラ・ダーン)は別の男性と結婚しており、幸せな家庭生活を送っています。彼女との対比でプライベートでも閉塞感の漂うグラント。

サトラーの幼い息子からは「恐竜おじちゃん」と呼ばれており、一つのことに熱中しすぎる中で多くの大事なものを失ってしまった中年男の哀しき姿がそこにはあります。

そんなグラントの前に大富豪を自称するポール・カービー(ウィリアム・H・メイシー)という男が現れ、サイトB上空をプライベートジェットで飛んで恐竜見学をしたいので、ガイドを引き受けてくれないかと依頼されます。

ジュラシック・パークでえらい目に遭ったグラントは生きた恐竜はもう懲り懲りとして一旦は断るのですが、巨額の資金援助の提案に目がくらんで結局は引き受けてしまいます。何だかんだ言っても世の中は金なのです。

しかし問題はカービーは金持ちでも何でもなかったということであり、彼は地方のタイル塗装屋の店主でしかないことがサイトBに着いてから判明します。

カービーは妻子に愛想尽かされて離婚されていたのですが、息子のエリックと妻の再婚相手がパラセール中の事故でサイトBに降り立ったことから、息子の救出のためにグラントらを騙して引っ張ってきたというわけです。

かくして一行のサバイバル劇が始まるのですが、グラントとカービーという2人のくたびれた中年男が本作の主人公であり、恐竜に追われるというやんごとなき状況で彼らが闘争心を取り戻していく物語となっています。

夏のブロックバスターシリーズが、ついに中年男の映画になった。恐らくは脚本家アレクサンダー・ペインの影響が強かったのだろうと思うのですが、そんな誰得状態の企画に、個人的には胸が熱くなりました。たまにはこういうのも良いじゃないかと。

思えばスピルバーグだって70年代には中年男が主人公の映画ばかりを撮っていたわけです。『激突!』(1971年)も『ジョーズ』(1975年)『未知との遭遇』(1977年)もそうでした。戦わざるを得ない立場に追い込まれる中年男、目標に目覚めた中年男のドラマこそが、あの時代のスピルバーグの真骨頂でした。

そう考えると本作は極めてスピルバーグ的な映画でもあり、70年代の魂を引き継いだ21世紀の映画となっています。

実際、家族から愛想尽かされていたカービーが家族を守るために男を見せる様には熱いものが宿っており、大人の成長譚として真っ当な仕上がりとなっています。

恐竜たちの凶悪度倍増

前々作、前作と肉食恐竜と草食恐竜の両方を登場させてきたシリーズですが、本作に登場するのは肉食恐竜のみ。問答無用で襲い掛かってくる恐竜たちの凶悪度を楽しむ映画としても機能しています。

まず登場するのはスピノサウルスで、従前シリーズでは最強だったティラノサウルスを倒して新王者の風格を漂わせます。その鮮烈な登場場面には、ベジータを軽くあしらうギニュー特戦隊を見た時のような衝撃がありました。

ちなみに本作公開後にスピノサウルスの骨格復元の誤りが判明しており、実際は四足歩行だったと言われています。さらには魚を主食としており顎の力はさほど強くなかったと推定されており、これらのスペックからティラノサウルスに勝てるタマではなかったことが伺えます。

ただしこれらの異論に対し、熱心なファンの皆さんは本作に登場するスピノは純然たるクローン恐竜ではなく、後の『ジュラシック・ワールド』(2015年)に登場する合成恐竜インドミナス・レックスのプロトタイプではないかという心温まるフォローをしています。

次に登場するのがお馴染みのヴェロキラプトル。シリーズが進む毎に知能が高くなっていくラプトルですが、本作ではついに「もし隕石の衝突がなければ、ラプトルこそがこの星の知的生命体に進化していたのではないか」という説がぶち上げられ、彼らは人間を先回りするほどの知能とチームプレイを披露し始めます。

ついに猛獣の域を越え、知的生命体のポジションにまで進出してきたラプトル達。他の恐竜たちとは異なる彼らの戦法は作品の良いアクセントとなっています。

そして終盤の見せ場を担うのがプテラノドン。監督のジョー・ジョンストンがプテラノドンの大ファンだというだけあって、その登場場面にはかなり気合が入っています。

ただしこのプテラ、翼長8mという巨体の割に体重は20kg程度しかなく、飛ぶという機能に特化した体格であるためスピノやラプトルと比較すると戦闘能力という点では随分と落ちるのですが、その脆弱さを補うべく、濃霧の中で上空から突然襲い掛かってくるという特殊なシチュエーションが用意されています。

このプテラ襲撃場面では幼い子供が見ると軽くトラウマになりそうな恐怖演出が仕込まれている上に、一番軽い子供がターゲットにされるというプテラ側の戦略にも非情さがあって、かなりドキドキさせられました。

こうした特徴の異なる3つの恐竜を配置したことで見せ場のバリエーションは豊かなものになっているし、恐竜側の戦略も非情なものとなったおかげでその凶悪度にも拍車がかかっています。

そして恐竜側の非情さが上がったことで人間側のサバイバル劇にも緊張感が増しており、なかなか面白いアクション映画としてまとまっています。

世間的な評価は低いようなのですが、私は楽しめました。