【駄作】コレクター(1997年)_犯人モロバレ吹き替えの脅威(ネタバレあり・感想・解説)

サスペンス・ホラー
サスペンス・ホラー

(1997年 アメリカ)
90年代のサイコスリラーブームの折に製作された駄作の一つ。脇役では魅力的なモーガン・フリーマンも主演になった途端に精彩を欠くし、主人公アレックス・クロスの異能が筋書きに生かされていない。そしてとある事情から、吹替版で見ると壊滅的なことになったのも痛かった。

感想

魅力に欠ける名探偵

公開当初から映画の存在は認識していたが、評判のあまりの悪さに今まで観てこなかった映画。

…というのは先週の『ハリウッド的殺人事件』(2003年)の導入部でも書いたような気がするが、ここんとこハマっている、つまらない可能性が高くて避けてきた映画をあえて見るシリーズの第3弾。

ちなみに第1弾の『ショーガール』(1995年)は予想に反して面白かった。さすがはバーホーベン大先生である。

本作は、ベストセラー作家ジェイムズ・パタースンの代表作『アレックス・クロス』シリーズの映画化作品。

ジェイムズ・パタースンは日本でこそさほど知名度が高くないが、本国アメリカではスティーヴン・キング、ジョン・グリシャム、ダン・ブラウンを合わせても届かないほどの発行部数を誇るんだとか(wiki情報の受け売り)。

『羊たちの沈黙』(1991年)『セブン』(1995年)などサイコスリラーが盛り上がった90年代に製作された。

当初はデンゼル・ワシントン主演の予定だったがスケジュールの問題で降板し、ブラック・アクターのもう一人の頂点であり、『セブン』の主演も務めたモーガン・フリーマンが主人公アレックス・クロスを演じた。

全米興行成績は6052万ドルとまぁまぁで、2001年には続編の『スパイダー』(2001年)も公開されたが、その後にシリーズは継続されていないので、成功を収めたシリーズとは言えなさそうだ。

実際、映画は物足りなかった。

サイコスリラーを標榜するもののレイティングを気にしてか刺激的な場面がないし、謎解きにも面白みがない。そして何より主人公のアレックス・クロス博士に魅力がない。

アレックス・クロス博士は犯罪心理学者で、ベストセラー作家で、現役警察官という変わり種。

かわいい姪っ子が連続誘拐犯の魔の手にかかったことから、その救出のため捜索活動に参加するのだが、その特異な経歴が謎解きと絡んでこない。

一応推理力は発揮するんだけど、「殺しではなくコレクションが目的だ!」とか「二人の犯人が競い合っている!」とか、ロジックやプロセスの提示もなされないまま超絶推理が炸裂するものだから、見ているこちらは「早っ!」「凄っ!」「なんで!?」となってしまう。

最終的にはFBIでも探り当てられなかった犯人のアジトまでを発見してしまうんだけど、事ここに至ると推理力云々ではなく彼には千里眼が備わっているのではないかとすら思えてくる。サイコスリラーとしてこれが正しいあり方とは思えないが。

また脇役では存在感を発揮するモーガン・フリーマンも、主演を任された途端に精彩を欠き、俳優の魅力までが鈍っている状態なのが残念だった。

犯人モロバレ吹き替え ※ネタバレあり

そして犯人はというと、才色兼備な女性を誘拐して支配することに喜びを覚える変態。『コレクター』という邦題はこの犯人像に由来するもののようだ。

ただし殺すことが目的でもなければ、性的な行為に及ぶわけでもなく、美人を何人もコレクションしておいて特に手出しもしないというのは、ある意味で禁欲的ともいえる。

こうした妙な律義さが犯人の恐怖の底を浅くしているようで、怖くもなければ気味悪くも感じなかった。

そしてこれは日本語版特有の問題なんだけど、吹き替え版キャストで犯人がモロばれになっているのはどうかと思った。

冒頭、自分の性癖について滔々と語る犯人の独白が入るのだが、日本語吹き替え版では池田秀一さんなので、「お、犯人はシャアか」と思う。

そしてその10数分後、脇役として登場した人物の一人がシャアの声。この時点で犯人が誰なのかの察しがついてしまう。

悪いのはシャア少佐ではないのだが、これほど特徴的な声の人を犯人役に据えてはならんでしょ。

スポンサーリンク
公認会計士のB級洋画劇場