【凡作】ノウイング_見せ場少なすぎ(ネタバレあり・感想・解説)

災害・パニック
災害・パニック

(2009年 アメリカ)
郊外の小学校から始まって地球規模の災害に繋がっていくという着想こそよく出来ていたものの、地球滅亡という分かり切った答えに向かってニコラス・ケイジがあーだもないこーでもないと悩み続けるだけのドラマには大して面白みがなく、見せ場の少なさもあって、全体的には退屈な映画でした。

解説

プロダクション

本作は原作などを持たないスペックスクリプトであり、ブルース・ウィリス主演『マーキュリー・ライジング』(1998年)の原作者であるライン・ダグラス・ピアソンにより執筆されました。

2001年頃に脚本が買い取られてコロンビア・ピクチャーズでの製作が決定し、監督には『ドニー・ダーコ』(2001年)のリチャード・ケリーや『ラスト・キャッスル』(2001年)のロッド・ルーリーが考えられたのですが、結局撮影には至りませんでした。

その後、企画は『サブウェイ123 激突』(2009年)や『イコライザー』(2014年)などで知られる製作会社エスケープ・アーティスツに引き取られ、『ポゼッション』(2012年)や『呪い襲い殺す』(2014年)などホラーを得意とする脚本家ジュリエット・スノードンとスタイルズ・ホワイトによって脚本が練り直されました。

その脚本の独自性を気に入ったアレックス・プロヤス(『ダークシティ』(1998年)、『アイ、ロボット』(2004年))が監督に就任。プロヤスは『エグザム』(2009年)の脚本家スチュアート・ヘイゼルダインと共に、さらに脚本に手を加えました。

興行的にはまずまずだった

本作は2009年3月20日に全米公開され、前週1位の『ウィッチマウンテン/地図から消された山』(2009年)やトニー・ギルロイ監督の『デュプリシティ 〜スパイは、スパイに嘘をつく〜』(2009年)などを抑えて初登場1位を記録。

その後5週間はトップ10圏内に残るという堅実な推移で、全米トータルグロスは7995万ドルでした。

国際マーケットでも同じく堅調に推移し、全世界トータルグロスは1億8365万ドル。5000万ドルという控えめの製作費を考えるとまずますの成績だったと言えます。

感想

回答が分かりきったミステリー

50年ぶりに掘り起こされた小学校のタイムカプセルに奇妙な数字の羅列が入っていて、小学生の息子からその紙を渡されたMITの宇宙物理学者ジョン・ケストラー(ニコラス・ケイジ)がその内容の解明にあたることが本作の前半。

小学校のタイムカプセルが話のきっかけで、謎の数字の意味を解明するという展開のさせ方はよく考えられていると思う反面、随分とピント外れなことをやってるなという印象も持ちました。

なぜなら、この手の展開はM・ナイト・シャマラン監督作品のようなジャンルもあらすじも秘密にされた映画でこそ有効なのであって、地球規模のディザスターが起こることが観客にも織り込み済の本作で「この数字は一体何を意味してるんだ」とやったところで、「破滅の予言が書いてあるんでしょ」としかならないからです。

そんなわけで、前半部分は観客がすでにお察しのことをニコラス・ケイジがチンタラと推理していく内容なので、よく出来てはいるものの面白くはありませんでした。

数字に憑りつかれ、周囲から見てどんどんアブナイ人になっていくニコラス・ケイジの怪演はなかなか様になっていたのですが、半ばネタバレ状態の中で答え合わせのように進んでいくミステリーのつまらなさを補うレベルには達していなかったし。

また、ジョンの息子ケイレブに謎の金髪色白集団が接触してくるというスリラーも置かれているのですが、こちらもまた「彼らに危害を加える意図はなく、子供を保護するためにやってきた異星人か何かでしょ」ってことがバレバレになっています。

そのため、勿体ぶった語り口が面倒くさくて仕方ありませんでした。

航空機墜落場面の素晴らしさ

そんな感じでノロノロと進んでいく映画なのですが、衝撃場面は突然やってきました。

交通渋滞につかまったニコラス・ケイジが空を見上げると、超低空飛行の旅客機がどんどん迫ってきて、地面にドカンと激突。

何かが起こりそうなタイミングではなかっただけにその衝撃には度肝を抜かれたし、ワンカット風で撮影されていることから呼吸のタイミングも忘れてしまいそうなほどの緊迫感があり、また目の前で本当に旅客機が墜落したとしか見えないほどVFXも優れていました。

そして墜落現場ではそこかしこに死体が転がり、火だるまの人がのたうち回るという地獄絵図が広がっており、ディザスター映画にありがちなただの大規模破壊ではなく、人の生死がハッキリと描かれている点にも驚かされました。

この場面はすべてのディザスター映画の中でも上位クラスだと言い切れるほどの素晴らしい場面であり、目が釘付けにされました。

ただし本作が凄いのが、これに匹敵する見せ場がその後にないということです。

この目が覚めるような見せ場が終わると、再びおかしくなったニコラス・ケイジがあーでもないこーでもないとやる内容に戻っていき、面白さが持続しないのです。

最終的には太陽フレアですべての生き物が死を迎えるのですが、こちらもまた飛行機墜落と比較するとインパクトに欠けていました。

飛行機墜落場面にすべてをかけた一点豪華主義映画と割り切るべきなのでしょう。

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