ラスト・アクション・ヒーロー【凡作】金と人材が裏目に出ている(ネタバレあり・感想・解説)

(1993年 アメリカ)
映画少年ダニーが、映写技師から魔法のチケットを受け取る。それは映画と現実世界を自由に行き来できるチケットであり、ダニーは鑑賞中のアクション映画『ジャック・スレイター4』の世界へと入っていき、憧れのヒーローと共に劇中の事件を解決していく。

© Columbia Pictures 

スタッフ

アクション映画の雄・ジョン・マクティアナン監督

ジョン・マクティアナンとシュワルツェネッガーは『プレデター』(1987年)を成功させたコンビなのですが、マクティアナンはそれより前の『コマンドー』(1985年)の監督候補でもあったし、マクティアナンが監督して大ヒットした『ダイ・ハード』(1988年)は、元は『コマンドー』の続編企画でした。こうして考えるとシュワとマクティアナンの因縁はかなり深いのですが、双方が『プレデター』後に何本ものヒットを重ね、大きく成長したところでの再度のランデブーということで、本作にはなかなか意義深いものを感じました。

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関わった脚本家多数

本作の元となった” Extremely Violent”というタイトルの脚本を書いたのは、大学を出たてのザック・ペンとアダム・レフのコンビでしたが、大手スタジオがこの脚本を買い取って製作に乗り出し、プロダクションに大いに口を出すシュワルツェネッガーが主演に決まった時点で、大勢の脚本家の手を通ることとなりました。

  • ザック・ペン:1968年生まれで1990年に大学卒業、本作製作時点で25歳でした。本作で脚本家としてのキャリアをスタートさせたものの、いきなりラジー賞最低脚本賞ノミネートという不名誉を受けたのですが、原型を留めないほど書き換えられた脚本の不出来を背負わされたのは、ちょっと気の毒でした。後にアメコミ映画の大家となり、『X-MEN/ファイナルデシジョン』(2006年)、『インクレディブル・ハルク』(2008年)と来て、『アベンジャーズ』(2012年)の原案も手掛けました。また、作り物の世界にオタク達が没入していくという点で本作と共通しているスピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』(2018年)の脚色も行っています。
  • アダム・レフ:ザック・ペンとは大学時代の同窓で、本作で脚本家デビューしました。その後10年以上かけてキャリアを立て直したザック・ペンとは対照的に、その後はほとんどクレジットされる仕事をしていません。
  • シェーン・ブラック:『リーサル・ウェポン』(1987年)で知られるアクション脚本の大家。『ラスト・ボーイスカウト』(1991年)で当時としては史上最高額の脚本料を受け取っており、本作は最高のアクション脚本家による脚色を受けたということになります。しかしあらためて考えると、” Extremely Violent”はシェーン・ブラックが書いてきた作品をパロディにしたものなのに、そのパロディ元が脚本に手を出すというのもおかしな話で、本作が抱えるユーモアの不足という問題は、この人選に大きな原因があったように思います。
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  • デヴィッド・アーノット:本職は俳優なのですが、レニー・ハーリン監督の『フォードフェアレーンの冒険』(1990年)の脚本を書いています。男らしさとユーモアのバランスを整えるために呼ばれたのだろうと思います。
  • ウィリアム・ゴールドマン:ノークレジットで参加。『明日に向かって撃て!』(1969年)と『大統領の陰謀』(1976年)でアカデミー脚本賞を受賞した超ベテラン。オリジナル脚本でのジャック・スレイターのキャラクターが薄っぺらであることに不満を持ったシュワに呼ばれてドラマのテコ入れを行ったのですが、ゴールドマンの参加で本作は決定的に方向性を違えたように思います。本質はパロディなのだからスレイターのキャラは薄っぺらでよかったのに、そこを膨らませたために映画の体裁が狂ったし、本来は劇中劇のみだった内容に現実パートを書き足したために、話が無駄に長くなりました。
  • ラリー・ファーガソン:ノークレジットで参加。完成後の脚本の微調整を行ったと言われています。ジョン・マクティアナン監督の前作『レッド・オクトーバーを追え!』(1990年)の脚本家であることから察するに、現場で行き詰ったマクティアナンが信頼する仲間に手助けを頼んだように思います。
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  • キャリー・フィッシャー:ノークレジットで参加。ご存知レイア姫です。本業は女優なのですがスクリプトドクターとしても活動しており、女性の観客が喜ぶ要素も必要だったことから彼女が呼ばれました。アクション映画のBGMしか聞いたことのないジャック・スレイターが現実世界でモーツァルトを聞いて、いたく感激するくだりは、彼女の発案だったそうです。

登場人物

現実世界のキャラクター

  • ダニー・マディガン(オースティン・オブライエン):アクション映画『ジャック・スレイター』シリーズをこよなく愛する映画少年。映写技師ニックに渡された魔法のチケットの力で、鑑賞していた映画『ジャック・スレイター4』の世界に入り込んだ。
  • アイリーン・マディガン(マーセデス・ルール):若くして夫を亡くし、女手一人でダニーを育てている。ダニーが学校をサボった件で学校から電話がかかってきても、子供をかばってウソをつく優しい母。
  • ニック(ロバート・プロスキー):映写技師の老人で、少年時代に伝説の魔術師・フーディーニから渡された魔法のチケットをダニーに手渡した。このチケットがダニーを『ジャック・スレイター』の世界に連れて行くこととなる。新作の試写をやると言って小学生のダニーを深夜に呼び出したり、自分では怖くて使えなかった魔法のチケットをダニーに使わせたりと、いろいろと常識に欠けた人物。初期稿では悪役だったものを無理やりダニーの友人ポジションに変更したために、おかしなことになったらしい。
  • アーノルド・シュワルツェネッガー(アーノルド・シュワルツェネッガー):『ジャック・スレイター』新作のプレミアに出席した本人。インタビュー中にも映画の話題から脱線して経営するレストランの話を始めるという自虐ネタまでを披露する。

劇中劇『ジャック・スレイター4』の登場人物

  • ジャック・スレイター(アーノルド・シュワルツェネッガー):LA市警の腕利き刑事。決め台詞は「大間違いだぜ」。前作『ジャック・スレイター3』のラストで小学生の息子を失った。
  • ホイットニー・スレイター(ブリジット・ウィルソン):ジャックの娘。常に露出の高い服を着ている。格闘技の心得がある。
  • デッカー警部補(フランク・マクレー):ジャックの上司でやたら声がでかい。常にジャックを怒鳴っているが、二人の間には固い絆がある。
  • トニー・ビバルディ(アンソニー・クイン):犯罪組織のボスで、ライバル組織のトレーリとの和解を装って、実はトレーリ一味を全滅させようと画策している。教養がなく、慣用句の言い間違えが多い。
  • ベネディクト(チャールズ・ダンス):ビバルディに雇われている義眼の殺し屋で、射撃の名手。雇い主であるビバルディを軽視している。非常に頭が良く、劇中劇のキャラクターの中でももっとも早くダニーの言っていることを理解し、ダニーから魔法のチケットの半券を奪って現実世界へとやって来た。なお、この役を最初にオファーされたのはアラン・リックマンだったものの、ギャラで揉めてチャールズ・ダンスに落ち着いた。
  • ジョン・プラクティス(F・マーリー・エイブラムス):スレイターとはベトナムの戦友であるFBI捜査官。実はビバルディと通じている。

感想

楽しいアクション映画あるある

映画オタクがアクション映画に入り込み、次の展開を言い当てながら事件を解決していくことが作品の骨子なので、本作にはアクション映画あるあるが多く登場します。今の観客が見てどう感じるのかは分かりませんが、シュワやスタの映画を見ながら育った私には、これらのあるあるは楽しめました。

  • 刑事の上司は常に声が大きい
  • 爆発が起こっても主人公は生きているが、その他の警官は死ぬ
  • 公道でのカーチェイスがいきなりセットっぽい場所に移動してチキンレースが始まる
  • カーチェイス中の車が、綺麗なお姉さんが大勢いる場所につっこんでいく
  • 主人公の暴力警官は離婚経験者
  • 主人公はベトナム上がり
  • F・マーリー・エイブラハムが演じるキャラはたいてい裏切り者
  • 電話番号の局番はすべて555
  • 街には若い美人しかおらず、容姿の悪い人やおばさんの姿がない
  • 路駐が当たり前
  • 天窓をぶち破って登場する主人公
  • 主人公が撃たれるが、防弾ベストを着ていたので大丈夫
  • 得意げに真相を話しているうちに形勢逆転される悪党
  • スレイターがエレベーターから落下する場面は、ジョン・マクティアナが監督した『ダイ・ハード』のセルフパロディ

スタッフ・キャストの人選ミス

パロディに本物の人材を使うという失敗

シュワルツェネッガー、ジョン・マクティアナン、シェーン・ブラックは本物のアクション大作を作る人達であり、そして本作は彼らが作ってきた映画のパロディでした。パロディとは当事者以外が対象を客観視した上でデフォルメするから面白いのであって、当事者にパロディをやらせてもただの自虐にしかならず、お客さんを笑わせる芸にはなりません。

コロッケという芸人がやるからこそ五木ロボというネタは面白いのであって、五木ひろし本人が五木ロボをやっても面白くはないのです。本作は、そもそもの人選から間違えていたとしか言いようがありません。

ジョン・マクティアナンがコメディに向いていなかった

作品は劇中劇『ジャック・スレイター3』のクライマックスからスタートするのですが、誇張されたアクション映画をバカバカしくも楽しく見せるという本作の企画にあって、笑えもしなければ興奮することもないこの冒頭にはイヤな予感がしました。優等生が無理やりギャグを言わされているようなぎこちなさがあって、明らかにジョン・マクティアナン監督がコメディに向いていないのです。

シュワの次回作の『トゥルー・ライズ』(1994年)でも、プロダクションの最中にジェームズ・キャメロン監督が自分はコメディに向いていないことに気付くということがあったらしいのですが、キャメロンはスタンダップコメディアンのトム・アーノルドを主要キャストの一人としてキャスティングし、お笑いパートは彼にリードさせるという解決策をとって、何とか問題をクリアーしました。

他方、本作にはガチの俳優しかキャスティングされていないので、コメディパートがまぁ悲惨なことになっています。上記の通りアクション映画あるあるなどは楽しかったのですが、これらも一瞬笑いを取るだけなんですよね。小ネタとストーリーがうまく融合して何か楽しいことが起こりそうな雰囲気を常に漂わせていることこそが本作のあるべき姿だったはずなのに、その域にはまったく達していませんでした。

無駄なプロットが目立つ

続くダニー少年の現実パートは無駄に込み入っていて、ただのアクション映画オタクとして描いておけば事足りるはずなのに、シングルマザーに育てられているとか、映画館に行く前に家に強盗に入られたとか、全体から考えて必要とは思えない枝葉がいろいろとくっついていてまどろっこしい思いがしました。

脚本家を増やしすぎて無駄なプロットが増えてしまっているし、どの要素が必要かという取捨選択をプロデューサーも監督も誰も行っていないために、本来は軽快に進んでいくべきアクションコメディがえらく鈍重になってしまっています。

方向性のないままダラダラ続く劇中劇

映写技師から渡された魔法のチケットが発動し、ダニー少年がよおやっと『ジャック・スレイター4』の世界に入っていくのですが、その世界もいろいろと間違っています。パロディという企画の本質から考えると、アクション映画でよく見る光景をちょっと誇張した世界がそこにあるべきだったのに、未来風の警察署にSF風の衣装を着た人がいて、挙句の果てにはアニメの猫やモノクロのハンフリー・ボガートまでが刑事として活動しており、もはやアクション映画のパロディでもなくなっています。

アニメの猫もハンフリー・ボガートも個々のアイデアは面白くても、作品の方向性に誤解を与えるマイナス要素として働いています。この映画は観客に何を見せたいのかという基本的な方向性が整理されていないために、そこにあるべきではないアイデアまでが入ってしまっているのです。

また、荒唐無稽なアクションの連続で勝負するには見せ場の密度が薄いし、デコボココンビで笑わせたいにしてはギャグの質・量が不足しています。観客に何で楽しんで欲しいのかを明確にしないままに、アクションの手落ちに対しては「これはコメディ映画ですから」と言い訳し、コメディの手落ちに対しては「これはアクション映画ですから」と言い訳しているような状態が90分も続き、とても退屈させられました。

現実パートも中途半端

後半に入ると、今度はスレイターがこちらの世界へとやってきます。逃走する車を拳銃で数発撃ったところで大爆発などせず、また素手でガラスを割れば拳を痛めるといった具合に、アクション映画の法則を逆手にとった見せ場がここからスタートするのですが、これもまた徹底されていないんですよね。

クライマックスに向かうにつれ、ジャックは停車された車の屋根を飛び回ったり、映画のプレミア会場での大捕り物をやったりと、劇中劇と遜色のない動きをし始めてしまうのです。もっともガッカリだったのがクライマックスでのリッパーとの決着であり、電線を水溜まりにつけてリッパーを感電死させ、ビルの屋上から転落しかけているダニーを片腕で放り投げて救うなど、現実的に絶対にありえない動きの数々で問題を解決してみせるジャック。これでは、劇中劇と現実世界との対比という作品の骨子が死んでしまっています。

まとめ

興行・批評両面での苦戦が物語っている通りの作品でした。
とはいえ完全にダメな映画という訳でもなく、唯一楽しめたアクション映画あるあるを見るに、ミニマルなパロディ映画として作っていれば相当楽しい映画になったはずなのに、企画のサイズを逸脱した予算と人材を与えられたことから、どんどん方針を違えていったことに失敗の原因はあります。あるプロジェクトがいかにして失敗するのかという一例として、実に参考になる作品でした。

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