リーサル・ウェポン2/炎の約束【駄作】弛みきった続編(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション

(1989年 アメリカ)
前作のファンほど、本作の出来に落胆するのではないでしょうか。リッグスの尖った部分が丸くなり、亡くした奥さんに対する思いも薄まってしまったので、前作の良かった部分がごっそりと失われたかのように感じました。前作と切り離して観れば楽しめるアクション映画なのかと言われればそうでもなく、話は破綻しているし、見せ場にも見応えがなく、出来の悪いアクション映画に成り下がっています。

©Warner Bros.

あらすじ

リッグスとマータフの今回の敵は、外交官の不逮捕特権を盾にして麻薬取引や金貨の密輸など悪行三昧の南アフリカ領事。手も足も出せない状況が続くものの、同僚刑事たちの暗殺や、明らかになったリッグスの妻の死の真相から、二人は怒りを爆発させる。

スタッフ

脚本家は3名

脚本家として、まず前作のシェーン・ブラックが雇われたのですが、個人的事情から脚本執筆が困難な状況にあり、ブラックは友人のウォーレン・マーフィを助っ人として呼びました。ブラックとマーフィによる脚本は非常に素晴らしかったようなのですが、ワーナーとジョエル・シルバー、リチャード・ドナーはリッグスを死なせるという展開に難色を示しました。加えて、ダークで血生臭い内容も問題視され、より明るくコミカルに書き直すようにとのオーダーを出しました。ブラックとマーフィは度重なる脚本の書き換え要求に応え続けたものの、6か月後にはプロジェクトから離脱し、以降、ブラックは『リーサル・ウェポン』シリーズに関わらなくなりました。

彼らの仕事を引き継いだのは、第一作でも脚本を明るくするために雇われたジェフリー・ボームでした。ボームはワーナーの指示に従って脚本を徹底的に書き直し、それはブラックから「自分が書いた作品とは完全に別物」と言われたほどでした。

ブラックとマーフィによる脚本はいまだに一般公開されていないのですが、ブラック自身によると元の脚本は彼が書いた作品中でももっとも激しい内容であり、生涯ベストワークとも言える出来だったとのことです。

  • シェーン・ブラック:1961年生まれ。UCLA卒業後の23歳で書き上げた『リーサル・ウェポン』の脚本で一躍アクション映画界のトップライターに躍り出た天才肌。前作の好評を受け、ジョエル・シルバーより続編の執筆も依頼されました。
  • ウォーレン・マーフィ:1933年生まれ。『デストロイヤー』シリーズ(リチャード・サピアとの共著)、『保険調査員トレース』シリーズで知られる小説家であり、1985年には『豚は太るか死ぬしかない』でエドガー賞受賞。映画の脚本家としても活動しており、クリント・イーストウッド監督の『アイガー・サンクション』(1975年)、『デストロイヤー』の実写化『レモ/第一の挑戦』(1985年)の脚色を行っています。
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  • ジェフリー・ボーム:1946年生まれ。スティーヴン・キング原作の『デッドゾーン』(1983年)の脚色で評価され、『リーサル・ウェポン』(1987年)はノークレジットでリライトを行い、本作で晴れてクレジットを獲得しました。他にスピルバーグ製作の『インナースペース』(1987年)、リチャード・ドナー製作の『ロスト・ボーイ』(1987年)、スピルバーグ監督の『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989年)の脚本を手掛けており、手堅い仕事で使い勝手の良い脚本家だったと思われます。

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撮影は南アフリカ出身のスティーヴン・ゴールドブラット

1945年生まれ。ドキュメンタリーやコマーシャルを手掛けるカメラマンとしてキャリアをスタートさせ、1980年代より映画界に進出。ピーター・ハイアムズ監督の『アウトランド』(1981年)、トニー・スコットの監督デビュー作『ハンガー』(1983年)、フランシス・フォード・コッポラ監督の『コットンクラブ』(1984年)を経て、『リーサル・ウェポン』(1987年)を手がけました。『サウス・キャロライナ/愛と追憶の彼方』(1992年)と『バットマン フォーエヴァー』(1995年)で2度、アカデミー撮影賞にノミネートされています。

後述する通り、本作は南アフリカを極めて悪く描いた作品なのですが、ゴールドブラットはその南アフリカ出身。彼は何を思いながら仕事をしたのでしょうか。

登場人物

  • マーティン・リッグス(メル・ギブソン):LAPDの刑事にして、ベトナム帰りの殺人マシーン。あまりの異常性に同僚から忌避されていた前作と比較すると格段に明るい人物像に変わっており、すっかりチームに馴染んでいる。また、奥さんの死からも完全に立ち直っており、孤独さを覗かせる瞬間がない。
  • ロジャー・マータフ(ダニー・グローバー):リッグスの相棒であるマイホーム刑事。カーチェイスでマイカーを破壊される、自宅の寝室で暴漢に襲われる、自宅トイレに爆弾を仕掛けられる、自宅でもう一度暴漢に襲われると、私物やマイホームがかなり深刻な被害を受ける。
  • レオ・ゲッツ(ジョー・ペシ):アージャン・ラッドが操る麻薬組織のマネーロンダリング係で、組織の金を百万ドル単位で横領していたためにラッドから命を狙われた。身を守るため警察に駆け込んで議会で証言することになったが、FBIへの引き渡しまでの数日間の警護係がリッグスとマータフだったことから、二人と行動を共にすることになる。
  • リカ・ファン・デン・ヴァールス(パッツィ・ケンジット):南アフリカ領事館の職員だが、他の職員と違って悪事には加担していない。リッグスにナンパされて恋仲になるがその夜にはラッドに殺され、リッグスがブチ切れる一因となった。
  • アージャン・ラッド(ジョス・アクランド):南アフリカ領事(日曜洋画劇場版では「ある国」と呼ばれ、国名は明言されない)。外交官の不逮捕特権を盾にして、麻薬取引や金貨の違法な密輸などを行っている。
  • ピーター・ヴォーステッド(デリック・オコナー):南アフリカ領事官の職員で、ラッドの組織の殺人担当。特に爆弾の扱いに長けており、マータフの自宅トイレに爆弾を仕掛けたり、マータフのチームを次々と爆殺して回った。麻薬捜査官時代のリッグスの命を狙ったことがあるが、誤ってリッグスの奥さんを殺した。

感想

おかしなこと満載

破綻なく作られていた前作と比較すると、本作は大味で論理的におかしな部分も散見され、出来がえらく粗くなったなぁという印象を持ちました。

  • マータフの家が何者かに襲われ、捜査をするなと脅しをかけられるという大事が起こったにも関わらず、まともな捜査すらなされない。
  • 上記、マータフ家を襲ったのはアージャン・ラッドの一味だったが、後にラッドは外交官の不逮捕特権を盾にして警察の介入を拒んでおり、悪事がバレたって俺らは全然平気だよという態度をとったことから、「捜査するな」という脅しをかけたことが頓珍漢な展開だった。
  • 領事宅に乗り込んだ際にピーター・ヴォーステッドはリッグスの顔と名前を知っている様子だったが、なぜ自分を知っているのかを聞きもしないリッグス。初対面の相手が自分のことを知っており、しかもその相手が犯罪に手を染めている可能性濃厚であれば、普通、スルーはしないはずなんですが。
  • 自宅のトレーラーハウスをラッド一味に襲われて命からがら逃げ伸びたにも関わらず、その直後にリカを自宅マンションに送り届けるリッグス。この状況ではリカの自宅にもラッドの手が回っていると考えて、警察で保護すべきなのですが。
  • 邦題がおかしい。別に誰かと何かを約束するわけでもないのに、なぜ「炎の約束」なのか。

リーサル・ウェポンではなくなったリッグス

高度な殺人スキルと自殺願望を持った異常な刑事だった前作のリッグスと比較すると、本作ではマータフとの間の緊張関係がなくなり、同僚たちとも談笑をする普通の刑事になっています。もはや別人です。また、メル・ギブソンにホリオン・グレイシーの稽古を受けさせるほど殺人スキルの描写にこだわった前作からは一転して、本作では普通の警官と変わらない銃撃や格闘を披露するのみなので、ベトナム帰りの凄い奴という設定もほぼ死んでいます。もはやリーサル・ウェポン(最終兵器)ではなくなったリッグスに、前作に感銘を受けた私は落胆させられました。

リカの存在が不要

リカは敵方の組織には属しているものの、彼女自身は犯罪行為に加担していない善意の人物であることから、リッグスとの良好な関係を構築します。通常、このポジションのキャラクターは主人公に対して重要な情報や証拠を与えるという役割を果たすものなのですが、リカの場合は捜査に対して何らの貢献もしないため、全体から見た時に居なくても話が成立してしまうキャラクターとなっています。

加えて、ヴォーステッドがリッグスの奥さんを殺した怨敵であることが判明し、復讐こそが今回のリッグスの行動原理となるのですが、そこにリカとの関係が割って入り、さらにはリカも殺されたものだからリカの復讐という要素も入り込んだことで、かえって復讐劇の要素が薄まっています。リカとの恋愛はなしで、奥さんの復讐のみというシンプルな線の方が盛り上がったと思います。

南アフリカに対する悪意が凄い

1989年当時はアパルトヘイトがまだ続いていたし、ネルソン・マンデラも拘留中だったので、南アフリカは悪役にしやすい国ではあったのですが、それにしても実在する国を一方的に悪く言いすぎている点は鼻に付きました。

また、実際の南アフリカはイギリス連邦加盟国の一つなのに、本作ではナチスのイメージで描写されている点にも違和感がありました。本作における南アフリカ国籍の人物はみな大陸風の名前で、プラチナブロンドに彫りの深い顔。おまけに乗っている車はドイツ車。アージャン・ラッドの執務室には鷲を模った紋章が飾ってあり、完全に間違ったイメージが付加されているようでした。実際の国名を挙げながら、ここまでやりたい放題な描写はいかがなものでしょうか。

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