【傑作】リーサル・ウェポン_最高・最良のバディ・アクション(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション

(1987年 アメリカ)
オーソドックスなバディ・アクションを核としつつも、荒んだドラマや本物志向のアクションといったディティールが光っており、またクライマックスに向けてきっちりと盛り上がっていくという構成要素の配置もよくできていました。これほどよくできたバディ・アクションは他にありません。

©Warner Bros.

スタッフ・キャスト

製作はジョエル・シルバー

1952年生まれ。『48時間』(1982年)、『コマンドー』(1985年)、『プレデター』(1987年)、『ダイ・ハード』(1988年)と、80年代の面白いアクション映画にはたいてい関与しておられる偉人。

ただし、あまりに強烈な個性からハリウッド界隈では恐れられてもおり、『トゥルー・ロマンス』(1993年)の悪徳プロデューサー、リー・ドノヴィッツや、『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』(2008年)の金に汚いプロデューサー、レス・グロスマンは、ジョエル・シルバーがモデルになっています。

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監督は元祖職人監督リチャード・ドナー

1930年生まれ。元はニューヨーク大学で演劇を学んだ俳優だったのですが、テレビドラマの演出アシスタントを経て『宇宙船X-15号』(1961年)で映画監督デビュー。ただしキャリアの初期はテレビでの仕事がほとんどであり、「トワイライト・ゾーン」(1964年)、「逃亡者」(1963-1967年)、『刑事コジャック』(1973-1978年)など、多くの有名テレビドラマの演出を手掛けてきました。

映画界での仕事が本格化するのは『オーメン』(1976年)からであり、続く『スーパーマン』(1978年)がその年の全米年間興収No.1の大ヒット。ドラマ『サンフランシスコ物語』(1982年)、コメディ『おもちゃがくれた愛』(1982年)、ファンタジー時代劇『レディホーク』(1985年)、少年たちの冒険映画『グーニーズ』(1985年)と、ジャンルを選ばない職人的な器用さで重宝され、本作の監督に就任しました。

なお、ジョエル・シルバーが監督に希望していたのはリドリー・スコットだったのですが、『ブレードランナー』(1982年)の撮影でリドリーとワーナーが険悪な仲になっていたことから、その希望は叶いませんでした。リドリー・スコット監督の『リーサル・ウェポン』もぜひ見てみたいところでしたが。

脚本はシェーン・ブラック

1961年生まれ。UCLA卒業後の1985年に本作の脚本を書きあげ、いきなりメジャースタジオに製作されるという早熟ぶりを披露。90年代前半には『ラスト・ボーイスカウト』(1991年)、『ロング・キス・グッドナイト』(1996年)など高額な脚本料で知られた脚本家となりました。

シェーン・ブラックは世界一高額な脚本を書いていた男

なお、本作の初期稿はあまりにダークだったことからリチャード・ドナーが難色を示し、デヴィッド・クローネンバーグ監督の『デッドゾーン』(1983年)の脚色を手掛けたジェフリー・ボームがノークレジットで手直しを行っています。

主演はメル・ギブソン

1956年生まれ。アメリカ生まれだがオーストラリア育ちで、名門オーストラリア国立演劇学院を出ているという、実はエリート。大学時代のルームメイトはジェフリー・ラッシュだったとのことです。21歳で主演した『マッドマックス』(公開は1979年であるものの、撮影は1977年)が史上最もコスト効率の良い映画としてギネスブックに載るほどの大ヒットとなり(製作費35万ドルに対して世界興収1億ドル)、続く『マッドマックス2』(1981年)が前作に輪をかけた傑作となったことから国際的なスターとなったものの、『マッドマックス/サンダードーム』(1985年)の後にはアル中になっていました。

脚本を書いたシェーン・ブラックがマーティン・リッグス役に想定していた俳優はウィリアム・ハートだったのですがワーナーに却下され、ジョエル・シルバーがブルース・ウィリスにオファーしたものの断られて、メル・ギブソンに決まったという経緯があります。後にメル・ギブソンは『ダイ・ハード』(1988年)の主演を断り、そちらはブルース・ウィリスが主演しました。

本作に主演するため、メル・ギブソンは『ザ・フライ』(1986年)と『アンタッチャブル』(1987年)のオファーを断っています。この時に来ていたオファーがことごとく傑作の部類であり、どの仕事を受けていてもハズレはなかったという辺りが、スター俳優らしい強運の表れなのでしょう。

あらすじ

殺人課の刑事マータフの元に、自暴自棄な行動が問題になって麻薬課を追い出されたリッグスが新しい相棒として配属される。二人は売春婦の飛び降り自殺の捜査を始めるが、事件の背後には凶暴な麻薬密輸組織がいたことが判明する。

登場人物

  • マーティン・リッグス(メル・ギブソン):ロス市警刑事。ベトナム戦争時には特殊部隊所属で射撃と格闘術に精通しているという、物凄いんだけど実社会ではつぶしの利かないスキルの持ち主。奥さんを亡くしたショックから自殺願望を持ち、死をも厭わない捜査を同僚たちから気味悪がられて麻薬課を追い出され、殺人課のマータフの相棒になった。設定年齢は38歳だが、撮影当時のメル・ギブソンは30歳だった。
  • ロジャー・マータフ(ダニー・グローバー):ロス市警の殺人課刑事にして、3人の子を持つマイホームパパ。そのマイホームスキルは、偶然に犯人を目撃した子供からの証言を引き出す際に大いに生かされた。設定年齢は50歳だが、撮影当時のダニー・グローバーは40歳だった。当初考えられていた俳優はブライアン・デネヒーだったが、警察官の役が連続していたことから断られ(『ランボー』『F/X 引き裂かれたトリック』)、ダニー・グローバーに決定した。
  • リアン・マータフ(トレイシー・ウォルフ):マータフの長女。マータフが夕食に招待したリッグスに一目惚れする。リッグスとマータフに嗅ぎ回られていることを知ったマカリスター将軍の組織に誘拐された。設定年齢は高校生だが、演じるトレイシー・ウォルフは27歳だった。
  • アマンダ・ハンサカー(ジャッキー・スワンソン):マイケル・ハンサカーの娘で売春婦をしている。高層マンションからの飛び降り自殺をしたが、血中からは致死量の薬物が検出され、飛び降りなくても死亡していたことが判明。殺意を持った何者かが現場に居たと推測されることから、本件が本格的に殺人事件の捜査へと切り替わった。
  • マイケル・ハンサカー(トム・アトキンス):マータフの元戦友で、アマンダの父。ベトナム時代にはCIAが率いるエアアメリカに所属しており、その縁でCIA、元軍人、外人部隊が集まった麻薬密輸グループの隠れ蓑に利用された。協力を拒むと見せしめにアマンダを殺され、後に自身も口封じのためジョシュアに狙撃されて殺された。
  • マカリスター将軍(ミッチェル・ライアン):CIA、元軍人、外人部隊が集まった”影の軍団”と呼ばれる組織を率いて麻薬の密輸を行っている。リッグスを捕らえた際には自ら銃を持って現場に出ていたことから、ただのリーダーではなく、現場での実戦も行える軍人であることが伺える。
  • ジョシュア(ゲイリー・ビジー):マカリスター将軍の部下で闇の軍団の暴力装置。組織の殺しは基本的に彼が引き受けており、射撃や格闘で高いスキルを見せる。加えて、ライターの火で腕をあぶられてもピクリとも動かないほどの強靭なメンタリティと忠誠心を持っている。

感想

80年代バディ・アクションの決定版

80年代はバディ・アクションの全盛期でした。子悪党と暴力刑事(『48時間』)、アメリカの軟派刑事とソ連の硬派刑事(『レッドブル』)、人間の刑事とエイリアンの刑事(『ヒドゥン』『エイリアン・ネイション』)などなど、この時代には多種多様なバディもの考えられました。本作ではマイホームパパと自殺願望のある殺人マシーンという、生存圏が対局にある二人がコンビを組みます。

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あまりにも危険で署内で避けられているリッグスが、幸せなマータフ家に招かれることで角が取れていく過程には微笑ましいものがあったし、「今日は人を殺すなよ」とマータフに朝一で釘を刺されても結局暴力沙汰を起こしてしまうリッグスと、それに巻き込まれて「この歳でこれはしんどい」とぼやくマータフの図は笑いを誘います。

加えて、それまでは過度に暴力過ぎて厄介事の種だったリッグスが、マータフの娘・リアンを誘拐されるという緊急事態においては頼れる味方へと変貌し、その殺人スキルが事態を打破するという後半の転調には燃えるものがあり、キャラクターとストーリーが見事に調和したアクション映画だと感じました。

メジャー映画らしからぬ荒み方

シェーン・ブラック作品の特徴は荒みまくった空気感なのですが、その特徴は本作よりはっきりと表れています。奥さんを亡くした殺人マシーンのリッグスは自殺用のホローポイント弾を持ち歩き、捜査の過程でも「ここで死ぬことが出来れば楽だろうな」という行動をとります。

自殺願望のある主人公は新鮮であり、涙を流しながら銃を咥えて引き金を引こうとする主人公というものを、ここまではっきりと映し出したメジャー映画は他にはなかったと思います。

陽の部分を引き受けるマータフにしても、今回の件の発端となるアマンダの投身自殺を「売春婦の自殺だろ」として当初は軽く扱っており、人ひとりが死んでいるのに深刻な顔もせずに適当に聞き込みだけをして終わらせようとしていました。

彼女のフルネームを聞き、旧友の娘であることが分かってようやく顔色が変わるのですが、彼もまた正義の警察官ではないという描写がささやかながらも印象に残りました。

測ったように盛り上がっていく物語

マータフとリッグスが出会い、アマンダの投身自殺を捜査するという前半部分はゆっくりと流れていくのですが、背後にいるのが”闇の軍団”と呼ばれる大規模かつ残忍な組織であることが判明した時点から物語は一気に加速し、ラストに向けてグングン盛り上がっていきます。

そして、テンションがMAXに達したクライマックスにおいてリッグスvsジョシュアの果し合いを入れるという点もよく分かっておられます。西部劇のファンだと思われるジョエル・シルバーは映画のクライマックスに果し合いを入れることを好む傾向があるのですが(『ストリート・オブ・ファイヤー』、『コマンドー』、『マトリックス・レボリューションズ』)、そんな中でも本作の果し合いこそがベストバウトでした。

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通常のアクション映画のような大味な殴り合いではなく、殺人マシーン同士の技見せとして作られており、このためにメル・ギブソンはホリオン・グレイシーからブラジリアン柔術の訓練を受けています。この本物志向ぶりが素晴らしいではありませんか。

シチュエーションにも燃えさせられます。すでに大勢は決しているのだが、暴力衝動を抑えきれない2体の殺人マシーンが、戦いを知っている者同士の阿吽で果し合いを始めるというシチュエーションが良すぎました。マータフも二人の状態を察し、現場に駆け付けた他の警官達に「手を出すな」と言って回るという援護射撃にも燃えました。これぞ男の映画です。

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