【良作】エンド・オブ・キングダム_一周回って反米映画になっている(ネタバレあり・感想・解説)

軍隊・エージェント

(2016年 アメリカ)
不埒なテロリスト相手に無双するマイク・バニングの強さは前作を越えており、アクション映画として非常に充実していました。また愛国ヒーローを描くことでかえって反米的な内容にするという高度な内容にもなっており、B級ながらなかなか侮れない作品だと思います。

作品解説

マイク・バニングシリーズ第2弾

全世界でスマッシュヒットした『エンド・オブ・ホワイトハウス』(2013年)の続編で、主人公の名前をとって「マイク・バニングシリーズ」と呼ばれる作品群の第二弾となります。2019年には第三弾『エンド・オブ・ステイツ』(2019年)が公開されました。

本作の製作にあたり、第一弾『~ホワイトハウス』の監督アントワン・フークアは脚本の不出来を理由に降板。次いでCF監督のフレデリック・ボンドが就任したのですが彼も降板し、最終的に監督したのはイラン生まれ、スウェーデン育ちで、2010年に長編監督デビューしたばかりのババク・ナジャフィでした。

スウェーデンで活動してきたナジャフィにとって、本作がハリウッド進出作となります。

興行的には成功した

本作は2016年3月4日に全米公開され、初登場2位を記録。その週の1位はディズニーの『ズートピア』(2016年)でした。全米での興行成績は堅調に推移し、全米トータルグロスは6252万ドル。9892万ドル稼いだ前作には劣るものの、客層がかなり偏っているアクション映画としては健闘しました。

国際マーケットでは全米を上回る好調ぶりであり、全世界トータルグロスは2億575万ドルに上りました。これは1億6102万ドル稼いだ前作を28%上回る金額であり、興行的には成功したと言えます。

感想

いろいろ破綻した物語

脚本の出来の悪さを理由にアントワン・フークアから監督を断られた本作ですが、確かに序盤からバカ度はフルスロットル。

渋滞につかまって橋ごと落とされる日本の首相とか(国賓が渋滞につかまることなんてあるのか)、若い奥さんとの観光を楽しんでいるうちに建物ごと破壊されるイタリアの首相とか、葬式に来ているのになぜかテムズ川でボートを楽しんでいるフランス大統領とか、この世界の要人はどいつもこいつも「私を殺してください」と言わんばかりの無防備さを披露します。

一方テロリストは「どうやってこれだけの人員と物資を整えたんだ」と言いたくなるほどの度を越した準備の良さで、真面目に見ていると疲れます。

また、ロンドンの治安を担当するスコットランドヤードの対応も出鱈目で、「身内にどれだけ裏切り者がいるのか分からないから、全警察官をいったんロンドン市内から引き揚げさせる」というよく分からない理屈の決断を下し、史上最悪レベルのテロが発生しているにも関わらずロンドンには治安当局が不在となります。

攻撃力と残虐さを増したマイク・バニング

そんなこんなで西側要人が次々と殺害される修羅場ですが、アメリカ大統領だけは別。なぜなら、彼にはマイク・バニング(ジェラルド・バトラー)が付いているから。

テロリストの手に落ちたロンドン市街地のど真ん中に大統領専用機が墜落するというお話からは『ニューヨーク1997』を思い出すのですが、そういえばジェラルド・バトラーが『ニューヨーク1997』のリメイクに主演するという話がありましたね。この企画との間に関連性はあるのでしょうか。

本作のマイク・バニングはジョン・カーペンター作品以上の凶暴性を発揮します。口を割らせる等の目的がないにも関わらず、敵戦闘員の急所をナイフで何度も突き刺すという苦痛を伴った殺害方法を度々選択。

「今の奴を殺す必要があったのか?」と聞いてくる大統領に対し、あっさり「ない」と答えるバニング。観客は衝撃のやりとりを目にすることとなります。

しかも今回のバニングは敵をダニだのゴキブリだの呼んでとにかく口が悪い(ただし吹替版のみで、字幕版では表現が随分とマイルドになっていました)。

米軍のドローン攻撃で身内を殺されたというテロリスト側の背景には1ミリの同情も示さず、何の躊躇もなく敵を殺して回る様には、もはや狂気が宿っていました。

これが第一子の誕生を控えて子供部屋の作りにもこだわっていた家庭人のやることなのかと。

一周回って反米映画になっている

この壮絶な内容に対して、当然のことながら世間の良識派と呼ばれる人たちは眉をひそめました。

Racist, stupid and boasting cheesy effects that wouldn’t pass muster on basic cable.(ケーブルテレビの無料チャンネルにすら劣る人種差別的で愚かで安っぽい特殊効果の作品だ)

New York Post

London Has Fallen is Donald Trump in film form.(『エンド・オブ・キングダム』は映画のドナルド・トランプだ)

Christy Lemire

しかし私はそうは思いませんでした。これはB級アクション界の『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年)ではないでしょうか。

ポール・バーホーベン監督の『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年)は、英雄譚として徹底的に突き抜けることでその否定をするという二重構造の映画となっていましたが、公開当時にはその意図を理解できない人たちから右翼的だのなんだのと猛烈な批判を受けました。

本作にも似たようなものを感じます。

マイク・バニングの異常な強さや敵に対する遠慮のなさは、やりすぎてアクション映画のパロディの域にまで達しています。むしろ愛国的なアクション映画を茶化すことにこそ、その意図はあったのではないかと。

ドローン攻撃で始末されるテロ首謀者と、生まれてきた愛娘を笑顔で抱きしめるバニングを並列するラストなんて、アメリカに対する悪意以外感じなかったし。

監督のババク・ナジャフィはイラクにルーツを持つスウェーデン人だし、主演のジェラルド・バトラーはスコットランド出身。こうしたメンツを見るにつけても、アメリカ中心主義に対する冷ややかな視線を感じました。

アクションの出来はシリーズ最高

そんな感じで高度な演出意図を感じたり感じなかったりした作品なのですが、見せ場は良い意味で普通のアクション映画らしくて盛り上がります。

この監督の絵作りは結構しっかりとしていて、テロが発生した瞬間にシークレットサービス達が一斉に銃を抜き、スクラムを組んで大統領を守る様なんてカッコ良すぎて失神しそうになりました。

終盤においてワンカットで描かれたSAS vs テロリストの大銃撃戦はサム・メンデス監督の『1917』(2019年)を先取っているようで感動すら覚えたし、敵拠点に単騎で乗り込んだバニングが繰り広げる大立ち回りには興奮しました。

加えて、ロンドン陥落のスペクタクルも見事モノにしています。6000万ドルという控えめな製作費ながら、ロンドンの名所が次々と破壊される様は意外としっかりと作り込まれているのです。

B級アクションでこれだけやっていただければお腹いっぱい。私は大満足できました。