マッドマックス/サンダードーム【駄作】シリーズを瀕死に追い込んだ最低作品(ネタバレあり・感想・解説)

(1985年 オーストラリア)
ヌルいバイオレンスの数々で、もはやマッドマックスらしさがないどころか、あまりに詰めの甘い設定のためにSFアクションとしても失敗しており、本作後にシリーズが瀕死状態に陥ったことにも納得がいく酷い完成度でした。本作は特段見なくても大丈夫です。

©Warner Bros.

あらすじ

ジェデダイア(ブルース・スペンス)に乗り物と装備を奪われたマックス(メル・ギブソン)は、彼を追ってバータータウンにやってきた。そこで街の支配者である女王アウンティ(ティナ・ターナー)に腕前を買われ、街の裏の支配者であるマスター・ブラスターとの決闘を引き受ける。決闘の舞台はサンダードーム。「入る者は2人、出る者は1人」という過酷なステージだった。

スタッフ・キャスト

共同監督のジョージ・オギルヴィーって何者?

本シリーズは一貫してジョージ・ミラーが監督を務めてきましたが、本作のみ、ジョージ・オギルヴィーなる人物が共同監督としてクレジットされています。

1931年オーストラリア出身。主にテレビ界で活動してきた人物であり、ジョージ・ミラーよりも14歳年上ではあるものの、本作が彼にとっての初の長編映画でした。

本作後にもオーストラリアで3本の映画を撮ったのですがどれも芳しい評価を獲得せず、テレビ界に出戻っています。

この経歴からお察しの通り、クリエイターとしては凡庸な人物です。なぜこんな人物が本作に関わったのかというと、プロダクションの途中でジョージ・ミラーが作品への関心を失ったために、空いた穴を埋められる監督が急遽必要になったためです。

『マッドマックス』(1979年)以前のテレビ監督時代より、ミラーはプロデューサーのバイロン・ケネディと二人三脚でやってきましたが、本作のロケハン中にケネディはヘリコプター事故で命を失いました。

この事故によってミラーは作品への関心を失ったのですが、そうは言ってもハリウッドも関わる巨大プロジェクトを止めるわけにもいかず、ミラーはアクションパートの監督のみを引き受けるという形でプロジェクトに残留し、ドラマパートの演出はオギルヴィーが行いました。

音楽がモーリス・ジャールに変更

『1』『2』の音楽を手掛けたブライアン・メイ(クィーンのギターリストとは別人)はシリーズから離れ、名匠モーリス・ジャールが本作の音楽を手掛けています。

1924年フランス出身。『アラビアのロレンス』(1962年)、『ドクトル・ジバコ』(1965年)、『インドへの道』(1984年)とデヴィッド・リーン作品の常連であり、アカデミー賞には9回ノミネート、3回受賞という映画音楽界の巨匠。

この通り人材のランクは上がったのですが、問題はジョージ・ミラーがコントロールを半ば放棄したプロジェクトにあって過去作品のイメージをジャールに伝え損なってしまったのか、ジャールは本作の音楽を一般的なSFアクションのような明るい曲調としてしまったために、シリーズの雰囲気をぶち壊しにしています。

悪役はロックンロールの女王ことティナ・ターナー

スターを起用することのなかった本シリーズにおいては例外的に(メルギブは結果的にスターになっただけ)、ビッグネームであるティナ・ターナーが出演しています。

1939年生まれ。1950年代半ばからミュージシャンとしての活動を開始し、1960年よりティナ・ターナーの名前で活動を開始。8度のグラミー賞に輝き、アルバムとシングルの売り上げ枚数は2億枚。1991年にはロックの殿堂入りを果たしています。また、2013年にローリングストーン誌が発表した「歴史上もっとも偉大な100人のシンガー」では第17位にランクイン。

彼女は本作でバータータウンを築き上げた女王アウンティを演じています。

登場人物

流れ者

  • マックス・ロカタンスキー(メル・ギブソン):前作にてV8インターセプターを失ったことから、本作冒頭ではラクダを移動手段としていたが、それもジェデダイア親子に奪われた。盗まれたラクダを追ってバータータウンへとやって来たところ、その度胸と腕っぷしを街の支配者アウンティに買われて、高額報酬と引き換えにブラスターの抹殺を依頼された。
  • ジェデダイア(ブルース・スペンス):息子と共に小型飛行機に乗って窃盗を行い、盗品をバータータウンで売って生活している。マックスからもラクダを奪った。演じているのは『マッドマックス2』でジャイロ・キャプテンを演じたブルース・スペンスで、ジャイロ・キャプテンと同じく空飛ぶ乗り物を操っているが、同一人物ではない。

バータータウン

  • アウンティ・エンティティ(ティナ・ターナー):バータータウンを築き上げた女王だが、最近では街にエネルギーを供給するマスターの発言力の方が強くなってきていることに悩まされている。再びマスターを支配下に置くべくそのボディガードであるブラスターの殺害をもくろみ、偶然街に現れたマックスを刺客として利用する。
  • マスター(アンジェロ・ロシット):バータータウンの動力源であるメタン工場を運営している体の小さな男。普段は大男ブラスターの背中に乗っている。重要なリソースを握っていることから増長した態度を取るようになっているが、街の中で科学知識を持った唯一の人物のようで、対立するアウンティも容易に彼を葬ることができない。
  • ブラスター(ポール・ラーソン):身体的な脆弱性を持つマスターの手足の役割を果たしている大男。マスターの頭脳のみが欲しいアウンティにとっては邪魔な存在であり、サンダードームでマックスとの決闘をするよう仕向けられる。その決闘の際に子供のような心を持つ知的障碍者であることが発覚する。
  • ピッグキラー(ロバート・グラップ):マスターが運営するメタン工場で働く囚人。飢えた子供にメタン工場の豚を殺して食わせたことがニックネームの由来。メタン工場に潜入したマックスと親しくなり、マックスが追放刑となった際には彼の猿に水を運ばせ、その命を救った。バータータウンに戻って来たマックスにより解放され、「最後の部族」の子供達と共に列車に乗ってバータータウンから脱出した。

最後の部族

「最後の部族」とはオアシスに暮らす子供のみの集団。もともと彼らはキャプテン・ウォーカーという名前の大人に率いられていたらしいのですが、キャプテンはトゥモローランドと呼ばれる希望の地へ至るルートを探すために出て行き、子供達はその帰還を待ち続けています。

  • スレイク(トム・ジェニングス):「最後の部族」のリーダー格の青年。当初はマックスをキャプテン・ウォーカーだと信じていたが、後にトゥモローランドはないとするマックスの言葉を聞き入れて従前のトゥモローランド信仰を捨て、現状のままオアシスに留まるべきと考えるようになった。
  • サバンナ(ヘレン・バディ):バータータウン追放後に砂漠で倒れていたマックスを発見。姿がよく似ていたことから彼をキャプテン・ウォーカーだと勘違いし、オアシスの集落へと運び込んだ。マックスから世界情勢について説明され、トゥモローランドはないことを聞かされても納得せず、自分の目で外の世界を確認したいと言って数人の仲間と共にオアシスを出て行った。

感想

バラエティ番組みたいなサンダードーム

サンダードームとは、武器の持ち込みが厳しく制限され、暴力行為が禁じられたバータータウンにおける唯一の決闘の場です。

「入る者は2人、出る者は1人」という合言葉からも分かる通り、どちらかが死ぬまで決着とはされないのですが、そこでの決闘の光景が妙にバラエティ番組っぽくて笑ってしまいました。

サンダードームに入れられたマックスとブラスターは天井から伸びたゴムを腰に装着され、ピョンピョン飛びながら相手の攻撃をかわしたり、また攻撃を仕掛けたりという、間抜けな決闘を演じさせられます。

天井にはいろんな武器が縛り付けてあり、ゴムでジャンプしてその武器を取ることもできるのですが、マックスが取ったチェーンソーが動かないなど、たまにハズレが入っているという無駄なゲーム要素が余計に脱力感を高めていました。

この光景からは『ガキの使いやあらへんで』の山崎vsモリマンを思い出しました。アイテムの入った箱を開けるとおさげ髪のヅラが出てきた山崎邦正みたいな。

決闘の中でブラスターは知的障碍者であることが判明し、マックスはその殺害を躊躇するのですが、するとアウンティはボウガンでブラスターを撃ち殺します。

そんな形でブラスターを始末してもいいのであれば、ハナからサンダードームを使うようなめんどくさいことなどせず狙撃すればよかったじゃんと脱力させられました。

そして、ブラスターの殺害を躊躇したマックスはマックスで、サンダードームの掟に反したとか言って裁きにかけられるのですが、そこで出てくるのが「死刑」とか「重労働」とか「釈放」とか書かれたルーレットで、ルーレットが差した目によってマックスの処遇が決定するという、これまたおかしなゲーム要素がある点が笑わせました。

ここで出た目が「追放」だったため、マックスはバータータウンから追放されるのですが、その際にも手を縛られた状態で馬に乗せられ、視界をふさぐために変なかぶりものをさせられるという、バラエティチックなことをさせられます。

水曜日のダウンタウンのクロちゃんみたいになっていましたよ。

「最後の部族」が謎すぎる

かくして舞台はバータータウンから荒野に移り、行き倒れたマックスは「最後の部族」の少年少女に拾われます。ただし、この「最後の部族」の設定が謎過ぎて、サンダードーム以上について行けませんでした。

バータータウンでは真水が高値で取引されている世界であるにも関わらず、ガキンチョ達が重要な水源を押さえているという不思議。

続編『マッドマックス/怒りのデスロード』(2014年)では水源を押さえていたイモータン・ジョーこそがその世界で最強の存在だったというのに、このガキンチョ達はどうやって重要な水源を見つけ出し、誰からも見つからずに維持し続けてきたのでしょうか。

また、このガキンチョ達は一体誰の子なのか、どこからやってきたのかがサッパリ分かりません。

グループ内には10代半ばと思われる年長組と、5~6歳程度の年少組が混在し、年齢の幅は結構広いのですが、年長組すら自分達がどこから来た何者かを知らないという点が、あまりに無理ありすぎでした。

仮に年長組が物心ついた頃からこの地に居付いており、ここ以外の世界のことを知らないと言うのであれば、年少組は一体どこから湧いてきたんだという話になるし。

そして、彼らはキャプテン・ウォーカーなる大人の指導者が居て、安住の地トゥモローランドへの道を見つけ出したキャプテンがいつか迎えに来てくれるという信仰を持っているのですが、このキャプテン・ウォーカーに該当する人物が実在していたのか、それともガキンチョ達が勝手に思いついたものなのかも謎。

彼らはマックスに対してキャプテンの言い伝えという劇を延々と披露するのですが(思わず早送りしたくなるほどの酷い代物)、これを見ても肝心なことは何一つ分かりませんでした。

バカの身勝手な行動によって進んでいく話

私は、愚かな登場人物が全体の足を引っ張ったり、身勝手な行動で周囲を危険に晒すような展開が苦手なのですが、本作はまさにそのような形で映画が進んでいきます。

マックスから世界情勢について聞かされ、トゥモローランドなどないのだからここでの生活を守れと諭された後、「最後の部族」はマックスの言い分を聞き入れる組と、それでもトゥモローランド信仰を守る組とに分裂します。

どう考えたってマックスの言い分の方が合理的なのですが、サバンナという少女はトゥモローランド信仰を守るという方向性でより先鋭化していき、キャプテン・ウォーカーがいないなら自分自身でトゥモローランドを探しに行くとまで言い出して、判断力のない幼い子供数名を連れて出て行ってしまいます。はっきり言ってアホです。

しかし、作品の後半はこの少女の暴走をきっかけに進んでいくのだから、とても見られた代物ではありませんでした。

仕方なくサバンナを追いかけるマックス。ずいぶんと丸い性格になったもので、もはやマッドではありませんね。

『マッドマックス2』では、爆走中のトレーラーのボンネットに転がったショットガンの弾を、怖がる子供に無理やり拾いに行かせたほどの立派な人物だったのですが…。

サバンナ一向に合流したマックスは、このままでは全滅の危機にあるとして仕方なくバータータウンに戻り、新しい共同体のブレーンとなりうるマスターと、個人的な借りのあるピッグキラーを連れて再び街を出ようとします。

そして、そんなことは許せないとするアウンティと再度衝突するのですが、マックスが逃げる際にメタン工場に引火し、大人たちが必死で気付きあげたバータータウンは崩壊。とんだ迷惑行為ですね。

気の抜けきったチェイス場面

ここから物語はジョージ・ミラー印のチェイスに突入するのですが、ガキンチョが当事者であることもあってか直接的な人の死は描かれず、それどころかコミカルな描写がいくつも入るものだから、まったくもって緊張感がありませんでした。

ここまで来ると、もはや『マッドマックス』と言うよりも『グーニーズ』に近い雰囲気になっています。モーリス・ジャールの音楽も完全にそっち方面に振り切れていたし。

チェイスの末に一行が辿り着いたのは、偶然にもジェデダイアの隠れ家でした。ジェデダイアの飛行機に乗って飛び去る子供達と、彼らを逃がすために地上で時間稼ぎをするマックス。

ここでマックスは三度アウンティとまみえるのですが、血みどろの戦闘が始まるのかと思いきや、「あんたもなかなかやるじゃん。ハッハッハ!」と突然大物ぶりを披露し、マックスを傷つけることなく去って行くアウンティ。

サンダードームの掟を守らなかったとか言ってマックスを処刑したのに、マスターという優秀な人材を奪い、街を破壊した件では何のお咎めもなしなのかと、アウンティの判断基準がサッパリ分かりませんでした。

その後、サバンナは崩壊したシドニーへと至り、そこをトゥモローランドと解釈して新たな共同体を築いたことがエピローグで語られるのですが、自分達を行かせるためにおとりを引き受けてくれたマックスを救いに戻ることはなかったという点の非情さが光りましたね。

その部分のみ、世紀末っぽかったです。

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