【凡作】ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング_説明、説明、また説明(ネタバレあり・感想・解説)

軍隊・エージェント
軍隊・エージェント

(2025年 アメリカ)
還暦過ぎて頑張り続けるトム・クルーズの超絶スタントこそ見ごたえあるものの、一度見ただけでは把握しきれないほどの難解な物語と、それを理解させるために繰り返される説明の連続で、アクション映画としての勢いは削がれていた。

感想

仕事が忙しかったり、子どもの受験があったりで、ここしばらくは映画どころではなく、気が付けば前回の投稿から3か月も放置の状態が続いていたが、『ミッション:インポッシブル』の新作が出たと言われた日には居ても立ってもいられず、先行ロードショーに足を運んだ。

お気に入りのT-ジョイPRINCE品川の巨大IMAXでの鑑賞だったが、話題作だけあって劇場は満員。

私の隣の座席の外国人カップルからは、なぜか英語で話しかけられた。

何言ってんだかよく分からなかったので、とりあえずスマイルをお返ししておいたが、ミッション:インポッシブルの新作をいち早く見られることに、彼らもテンションが上がっていたのだろう。

そんな高い熱量の中での鑑賞だったが、個人的にはイマイチだった。

前作『デッドレコニングPART1』においても、話が込み入ってて分かりづらいと感じていたが、本作の難解さはその非ではない。

前作に引き続きエンティティと呼ばれるAIが暴走しており、世界は大混乱状態に陥っている(戸田奈津子女史が”エンティティ”を”それ”と意訳したことで、めっちゃ分かりづらくなっていた・・・)。

エンティティは4日以内にすべての核保有国のミサイル発射基地の管制を乗っ取る見通しであり、それまでにエンティティの破壊を行うというミッションを、イーサン・ハント(トム・クルーズ)は大統領(アンジェラ・バセット)より直々に仰せつかる。

本編中では明言されないが、大統領は第6作『フォールアウト』にCIA長官として登場したエリカ・スローンと同一人物のようだ。

エンティティを倒すためには、前作『デッドレコニングPART1』の冒頭で沈められた潜水艦内部にあるソースコードと、ルーサー・スティッケル(ヴィング・レイムス)が開発したデバイスの組み合わせが必要であり、その回収が本編前半部分、いよいよエンティティ破壊に向かうのが後半部分という構成である。

人類滅亡を目論むAIを倒すという極めてシンプルなストーリーに、多数のプロットが紐づけられている状態であり、3時間近い上映時間の多くは、その説明に費やされる。

が、長々と披露される説明に真剣に耳を傾けたところで半分も理解できないというのがこの映画のスゴイところで、各自が何やってんだか本当によく分からんので、細部まで理解するには二度三度の鑑賞が必要だと思う。

例えば前半のミッションはこんな感じ↓

  • イーサンと、ベンジー&グレース&パリスは別行動
  • イーサンは米海軍の空母に乗り込んで潜水具などの装備を調達すると同時に、沈没海域まで海軍に送ってもらう
  • その頃ベンジー&グレース&パリスはいまだ不明とされる潜水艦の沈没場所を突き止め、その座標をアナログ回線でイーサンに送信する手はずとなっている
  • 座標を掴んだイーサンは単独で潜水艦に進入してソースコードを持ち帰るが、それは極寒の海域で潜水病にかかることがほぼ確という、なかなかにハードなミッションである
  • 浮上場所ではグレースが待機し、仮死状態となったイーサンを回収、蘇生してミッション完了

イーサンと、ベンジー&グレース&パリスの行動が交互に映し出されるので、分かりづらいったらありゃしない。

酸素残量が限られた中での潜水艦からの脱出には確かにハラハラさせられたが、その興奮はあくまでスポットのものであり、ストーリーという面では美しい仕上がりとは言えなかった。

その傾向は後半も同じくで、エンティティの破壊を目論むイーサン vs エンティティの弱みを掴むことで意のままに操ろうとするガブリエルの戦いに、CIA長官キトリッジも絡んできて、まぁ分かりづらい。

で、キトリッジが一体何をやりたかったのかは、鑑賞中にも、鑑賞後に振り返ってもよく分からんかった。

あと、不完全な状態で放棄された設定や伏線も気になった。

ガブリエルは、イーサンがエージェントになるきっかけとなった35年前の殺人事件の首謀者であるとの設定が前作にて仄めかされていたが、本作ではそんな過去の因縁などなかったことになっている。

結局、ガブリエルとは一体何者だったのかは、本作を見てもよく分からない。

また前作よりイーサンを追うCIAエージェント ブリッグスには、第一作の黒幕だったジム・フェルプス(ジョン・ヴォイト)の息子であるという設定が急遽付け加えられたが、イーサンと因縁浅からぬ関係であるにもかかわらず、本編中ではほとんど見せ場を担わされておらず、たいそうに構えられた設定がまるで生きていない。

その他、第一作からの皆勤賞であるルーサーが突然の重病設定になっていた上、本来はハッカーであるはずのルーサーがデバイスの開発も行うなど、専門分野にも大幅な変更が加えられており、設定面ではかなり取っ散らかっている。

前作ラストでIMFに引き抜かれたグレースも、結局はフリーと変わらぬ立場で動き回ってるし。

『ミッション:インポッシブル』シリーズは、まずスタントや見せ場を考えて、それに合わせてストーリーをくっつけていくという製作スタイルである上に、現場での脚本の書き直しも頻繁になされるため、ストーリーの出来は毎度よろしくない。

そんなシリーズにあっても、本作の出来は過去最低レベルで悪いんじゃないかと思う。

クライマックスの複葉機にしがみついてのスタントは確かにすごかったが、肝心のストーリーが壊滅的なので、映画としての高い評価はできないと思う。

そうそう、アンジェラ・バセット大統領がイーサンに渡したメモに記された「1996年5月22日」とは、ミッション:インポッシブル第一作の全米公開日だった。だからなんやねんと言うと、何もないんだけれど・・・

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