【凡作】Mr.&Mrs. スミス_雑魚をちぎっては投げるだけ(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション

(2005年 アメリカ)
大スター共演のゴージャスな雰囲気こそ楽しいものの、腕利きの殺し屋なのに配偶者の素性に気付かないとか、襲ってくるのが雑魚ばかりでラスボス不在とか、いろいろと難のある作品でした。

作品解説

ブラピ&アンジーの馴れ初め映画

本作は、後に『X-MEN』シリーズや『スターウォーズ』スピンオフアニメの脚本家となるサイモン・キンバーグが卒論として執筆した脚本が元になっています。

アキヴァ・ゴールズマン(『ダ・ヴィンチ・コード』)、デッド・グリフィン(『オーシャンズ11』)、キャリー・フィッシャー(『ラスト・アクション・ヒーロー』)ら大勢の脚本家の手を経て実に50本ものスクリプトが執筆された後、原作者のサイモン・キンバーグが最終稿を完成させました。

当初のキャスティングはブラッド・ピット×ニコール・キッドマンだったのですが、ブラピが一旦降板し、それに続いてキッドマンも降板。

その後ウィル・スミス×キャサリン・ゼタ・ジョーンズ、ジョニー・デップ×ケイト・ブランシェットが検討されたのですが確定とはならず、ジェーン役の候補としてグウィネス・パルトローが浮上した際に、パルトローの元恋人であるブラピがプロジェクトに戻ってきました。

しかしパルトローは降板し、その後に決まったのがアンジェリーナ・ジョリー。ブラピとアンジーはそれぞれ2000万ドルのギャラを受け取りました。

撮影は2004年に行われたのですが、この時ブラピはジェニファー・アニストンと婚姻関係にありました。一部のタブロイド紙でブラピとアンジーが交際しているのではとの記事が掲載され、二人はそれを否定。

その後、2005年1月にブラピとアニストンは離婚を発表したのですが、その夏頃からブラピとアンジーが二人で居る姿は頻繁に目撃されるようになり、2006年1月にアンジーはブラピとの子供を妊娠中であることを公表しました。

ブラピはアニストンとの婚姻中の不貞を否定したものの、本作の撮影中にアンジーへの好意を抱いたことは認めています。

そんな二人ですが、2016年に離婚を申請し、今なお泥沼の離婚裁判を繰り広げています。本作を見て夫婦関係の立て直しをして欲しいところでしたが、現実はそうもいかなかったようです。

興行的には成功した

本作は2005年6月10日に全米公開され、好調だった『マダガスカル』(2005年)や『スター・ウォーズ エピソードⅢ』(2005年)を大差で抑えて初登場1位を獲得。

全米トータルグロスは1億8633万ドルで、年間興行成績第9位という大ヒットとなりました。

国際マーケットでも同じく好調であり、全世界トータルグロスは4億7820万ドル。こちらは年間第7位でした。

テレビシリーズ製作中

このヒットを受けて2007年にテレビシリーズ化が企画され、サイモン・キンバーグが脚本を執筆してパイロット版が製作されたのですが、どうやらその出来が芳しくなかったらしく、ABCはシリーズの製作をキャンセルしました。

2021年にAmazonスタジオが本作のドラマ化権を購入し、2022年配信開始を目指して製作を進めています。

ジョン・スミス役には『ハン・ソロ/スター・ウォーズ ストーリー』(2018年)で若きランド・カルリジアンを演じたドナルド・グローバー、ジェーン・スミス役には製作・脚本・主演を務めたコメディドラマ『Fleabag フリーバッグ』(2016年-)で高評価を受けた才媛フィービー・ウォーラー=ブリッジがキャスティングされています。

感想

基本設定に無理がある

一般的な白人富裕層を装いながら、実は殺し屋稼業を営んでいる夫婦の話。

「スミス」というのはアメリカでは一般的な偽名で、例えば『ラストマン・スタンディング』(1996年)の主人公も咄嗟に「ジョン・スミス」と名乗っており、日本で言えば「山田太郎」みたいなものなのでしょう。

で、このスミス夫妻は家庭内でも身分を偽装しており、パートナーに対しては世を忍ぶ仮の職業で通しているのが本作のミソ。

この構図を通して「夫婦間の隠し事」という一般的なテーマを語っているのだろうと思います。例えば旦那はガレージ、妻はキッチンを仕事道具の隠し場所としており、配偶者が入ってきそうにない場所を各々選択していることなどは、夫婦あるあるとなっているわけです。

ただし、腕利きの殺し屋が長年連れ添う配偶者の正体に気付かないという点には違和感を覚えました。

二人の馴れ初めはコロンビアで、それぞれ警察に追われていたことから、初対面の相手とグルになって「私達カップルです」と嘘をついて難を逃れました。

この時点で双方、相手は何かやった人なんだろうなと思うべきなのですが、その後は建築家とシステムエンジニアという偽装を信用し合うものだから、設定に無理が生じています。

そうなってくると、中盤で相手の本性に気付く場面も「何を今さら」って感じでハラハラドキドキもさせられないし、「私を騙してたのね!」という夫婦喧嘩も「今の今まで気付かなかったことも相当な落ち度だよ」としか思えませんでした。

せめて馴れ初めだけでも自然にしてくれればよかったのですが、作り手側はドラマの流れよりもインパクト重視にしたのでしょう。

アクション映画としての中途半端さ

スミス夫妻はそれぞれ別の暗殺組織に所属しているのですが、同一のターゲットを巡る組織間のトラブルが波及して、この夫妻の関係にもひびが入ります。

殺し屋の世界は相手を始末してケジメを付けるのですが、さすがに夫婦で殺し合うわけにもいかずに組織を裏切る形となり、そこからは夫婦で追われる身となります。

で、追っ手をかわしつつもスミス夫妻は事の真相に辿り着くのですが、そこで判明したのはすべて組織が仕組んだものだったということであり、ライバル組織の構成員と結婚していること自体を裏切りと考えた組織は、スミス夫妻が殺し合うよう仕組んだとのことです。

これが本作のドンデンなのですが、その動機部分にあまり説得力がなかったので、私は驚きよりも困惑の方が勝りました。こんな設定要らなかったなぁと。

スミス夫妻騒動では組織の本部も戦場と化しており、裏切り者始末のためにかけるコストとしてはあまりにも見合っていないし、夫妻に殺し合いをさせるという込み入ったことをするよりも、別の殺し屋を送り込んで暗殺してしまった方が早いと思うのですが。

ともかく、こうして組織とスミス夫妻は明確な敵対関係となるのですが、ラスボスらしきキャラクターが登場せず、迫りくる雑魚を大銃撃戦で全員始末して終了という終わり方は全然スッキリしませんでしたね。

あれだと陰謀の首謀者はまだ生存しており、いつまた襲撃を受けるか分かったもんじゃありません。