【良作】ナイトホークス_熱血スタローンvs冷血ハウアー(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション
クライムアクション

(1981年 アメリカ)
マッチョ化する前のスタローンがハードボイルドでかっこいいし、悪役のルトガー・ハウアーの猛禽類のような佇まいも良い。派手さはないが、男の対決映画としてはスッキリまとまった佳作である。

作品解説

いろいろ大変だった製作現場

もともと本作は美術出身のポール・シルバートが、実在のテロリスト カルロス・ザ・ジャッカルをモデルに書いた脚本だったが、リライトを繰り返した結果、シルバートのオリジナル部分はほとんど残っていない。

一時期はフォックスの『フレンチ・コネクション3』の原案にされそうになり、『ウォリアーズ』(1979年)のデヴィッド・シェイバーがリライトしたが、ジーン・ハックマンが興味を示さず企画は中止となり、そのストーリーをユニバーサルが買い取った。

現在からすると隔世の感があるが、1970年代のテロと言えば中東や欧州のものであり、アメリカが大規模テロの被害に遭うという脚本にはリアリティがないとして、なかなか製作が決まらなかった。

そんな中、『ロッキー』(1976年)『ロッキー2』(1979年)を大ヒットさせたシルベスター・スタローンが脚本を読んだことから、企画は進み始める。

この頃のスタローンは『ロッキー』シリーズ以外の出演作がことごとくコケており、そろそろ別の当たり役を作らないとヤバイと焦っていた。スタローンは本作に大いに入れ込んだが、その熱意は混乱も引き起こした。

現場はスタローンが掌握。当初の監督は『ブラックホール』(1979年)のゲイリー・ネルソンだったが、アクションシーンの撮影を巡ってスタローンと対立し、撮影開始後わずか1週間で解雇された。

またある時は、スタローンがおとり捜査中の主人公に女装させたいと言い出した。テクニカル・アドバイザーは「その場合、女性捜査官を使うだろ」と言って反対したが、結局スタローンに押し切られ、アドバイザーは解雇された。そんな現場。

その後に雇われたのがドキュメンタリー出身で、本作が長編映画デビューとなるブルース・マルムース。本作以外の監督作がスティーヴン・セガールの『ハード・トゥ・キル』(1990年)とドルフ・ラングレン主演の『ソルジャー・ゴールド』(1994年)であることからもお察しの通り、きわめて凡庸な監督である。

マルムースが着任するまでの空白期間にはスタローンが演出をすることもあったのだが、その行為がアメリカ監督組合の規定に触れたことから、罰金を科せられた。

またテロリスト役のルトガー・ハウアーとスタローンの関係も険悪なものだったらしい。

ハウアーの初日はクライマックスのウルフガー射殺場面だったが、ここでハウアーは弾着を誤って着せられて火傷を負ったうえ、後ろに吹っ飛ぶためのケーブルを強く引っ張られたことから、背中に強い負荷がかかった。

後者がスタローンの命令だったことを知ったハウアーは堪忍袋の緒が切れ、「もう一度やったらあいつのタマを潰す」と激怒したそうな。

そんなこんながありつつも1980年4月に撮影が終了。完成した映画は2時間半もあったのだが、ユニバーサルによって大幅な編集を受ける。

テンポを出すためにドラマパートが大幅にカットされ、スタローンと、彼の元妻を演じたリンゼイ・ワグナーの共演場面はほとんどなくなった。

主人公のドラマの要ともなる感情的な場面までが丸ごとカットされ、スタローンは大いに動揺したらしい。

また『タクシードライバー』(1976年)並みに激しかったとされるバイオレンスも容赦なくいかれた。

ウルフガーがディスコで銃撃をする場面は短く縮められ、クライマックスのウルフガー射殺場面も大幅に編集。

あの場面は『タクシードライバー』(1976年)のディック・スミスを雇うほどの力の入れようで、最終的にウルフガーは脳天を吹き飛ばされて絶命するのだが、そのままではX指定を免れないことから、脳天吹っ飛ばしはカットされた。

最近『ロッキー4』(1985年)の再編集版で注目されているスタローンは、同じく編集をやり直したい作品として本作の名をあげている。再編集前の作品はかなり優れていたそうだ。

興行的には成功した

本作は北米で1490万ドル、国際マーケットで500万ドルの収益を上げ、全世界では合わせて2000万ドル近い収益となった。

製作費は500万ドルだったことから、利益はしっかり出たと考えられる。

感想

マッチョ化前のスタローンは良い

中学だか高校だかの頃に年末年始の深夜放送で鑑賞したのだが、あまり印象に残る映画ではなかったので再見はしてこなかった。

最近Amazonプライムにあがっていたので四半世紀ぶりの鑑賞となったが、思いのほか面白くてびっくりした。完ぺきではないが、サスペンスアクションの佳作とは言えるのではなかろうか。

本作が製作されたのは1981年で、『ロッキー』がまだ長期シリーズ化されておらず、『ランボー』(1982年)が製作される前のこと。

アクションスターとしてのイメージが確立していなかった頃のスタローンは、現在の目で見ると実に新鮮だった。

ゴリゴリマッチョになる前なので体格は普通なのだが、そのことでこの人の味のある顔立ちが引き立っている。

そして『セルピコ』(1973年)を意識したかのような長髪&無精ひげというスタイルによって獲物を追う野生動物のような風貌となっており、都会のハンターらしさも十分。

後のタフガイ的な演技ではなく、常人に徹している点も新鮮だった。

製作されたのは80年代ではあるが、作品全体の雰囲気は70年代のハードボイルドに近い。そんな作風にスタローンが実にマッチしているのである。

スタローンは後に『コブラ』(1986年)『デッドフォール』(1989年)でも刑事役を演じるが、本作のダシルバ刑事が一番のはまり役ではないかと思うほど良かった。

熱血刑事vs冷血テロリスト

ヨーロッパで暴れ回っていたテロリスト ウルフガー(ルトガー・ハウアー)がNYを標的にしつつあるとのことから、FBIは地元事情に通じた市警刑事を選抜して特殊部隊ATACを編成し、テロ対策を進める。

ウルフガーは思想信条を持たない雇われテロリストであり、ロンドンで起こした直近の爆破テロがあまりに残忍だったことから彼を雇っていたテロ組織すらドン引きし、関係を切られてしまう。

焦ったウルフガーは再度自分自身の力を誇示すべく、国際的な注目度の高いターゲットを狙っているというわけである。

このウルフガー、1970年代に悪名を馳せた国際テロリスト カルロス・ザ・ジャッカルをモデルにしている。

そういえばクリスチャン・デュゲイ監督のサスペンスアクション『アサインメント』(1997年)もカルロスをモチーフにしたものだったが、あちらは追う者が追われる者に飲まれていくという心理サスペンスを打ち出しており、あれはあれでなかなかの力作だった。

雇われテロリストであるウルフガー自身に政治的主張はないということで、本作の筋書きはシンプルかつシャープなものとなっている。

最恐の国際テロリストvs特殊部隊ATACという図式は、やがてダシルバ刑事vsウルフガーという個の対決へと集約されていき、クライマックスに向けてどんどん熱量が上がっていく。

前述した通り野生動物のようなダシルバ刑事に対して、ウルフガーは正確無比な機械。

本作はルトガー・ハウアーのハリウッドデビュー作だが、その次に出演して当たり役となったのが『ブレードランナー』(1982年)のレプリカント役だっただけに、本作で作られたパブリックイメージは彼にとって重要なものだったと思う。

再編集版を出して欲しい

そんなわけで100分程度のコンパクトな刑事ものとしてはなかなかイケたのだが、いろいろ切られたんだろうなということは、素人目にもわかる。

ATACを組織するのはFBIのハートマン捜査官(ナイジェル・ダヴェンポート)で、ハートマンはウルフガーに対して職務以上の執念を燃やしているのだが、その感情の源泉がどこにあるのかがよく分からない。

そしてハートマンはダシルバ刑事のメンター役となるのだが、二人の関係性もうまく機能していない。

ダシルバはベトナム戦争で50人以上の敵を殺害した実績を持つリーサル・ウェポンだったが、何かしらのトラウマを抱えたのか、現在は街のチンケな犯罪者を取り締まるおとり捜査官に徹している。

特に人を殺すことには躊躇しており、ATACでの訓練課程においてはハートマン捜査官から「人を喰わにゃあ、おのれが喰われるんで」(©『仁義なき戦い 代理戦争』の梅宮辰夫)と叱責されるほど。

ダシルバがウルフガーを倒すためには自身のトラウマを乗り越えねばならないわけだが、その過程がほとんどカットされており、そもそものトラウマが何だったのかすら不明なので、ダシルバ自身の物語も、ダシルバとハートマンの師弟関係もスッキリしない。

ベトナム帰還兵のトラウマに、戦士の師弟関係。これら本作で消化不良だった要素を再現したのが、スタローンの次回作にして代表作『ランボー』(1982年)だったのではないかとすら思えてくる。

ダシルバと、その元妻アイリーン(リンゼイ・ワーグナー)の関係性も同じく。

二人は離婚こそしているが心理面ではいまだに通じ合っており、婚姻関係の継続を困難にする何かがあったのだろうと思われる。

恐らくそれはダシルバのトラウマに起因するのだろうが、これまたドラマの大部分がカットされているので、何がどうということがさっぱり分からない。

スタローン自身も本作の再編集を望んでいるし、ユニバーサルはぜひとも本作のリバイブにゴーサインを出して欲しいものだ。

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