【良作】ボディ・ターゲット_抒情性あるアクション(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション

(1993年 アメリカ)
ヴァンダムが主演したためか見落とされがちな作品なのですが、人間ドラマがしっかりと構築されている上に、アクションとの連携もうまくいっており、かなり面白い映画となっています。

作品解説

僕らのヴァンダムが主演

主演は開脚君ことジャン=クロード・ヴァン・ダム。ただしリアル路線の本作では得意のマーシャルアーツは封印し、ガタイが良くて喧嘩に強いだけの犯罪者に徹しています。

またドラマ重視の本作では、未亡人としっぽり恋仲になり、その子供達とも触れ合うという繊細な演技をモノにしており、実は普通に演技が上手かったということが本作で証明されています。

『氷の微笑』のジョー・エスターハス脚本

本作のオリジナル脚本を書いたのは『氷の微笑』(1992年)のジョー・エスターハスと、『スターウォーズ/ジェダイの復讐』(1983年)のリチャード・マーカンドで、二人はサスペンス映画『白と黒のナイフ』(1985年)、ボブ・ディラン主演のロック映画『ハーツ・オブ・ファイヤー』(1987年)でも組んだ仲でした。

エスターハスによると、オリジナルの脚本は深遠なドラマだったようであり、当初はメル・ギブソン主演として考えられていたのですが、その後ジャン=クロード・ヴァン・ダム主演作となりました。

当時、コロンビアはヴァンダムと3本契約を結んでおり、何か仕事を与えなきゃと思っていたので本作の主演に据えたとのこと。

これに伴い脚本の大幅な変更が必要となり、『デッドフォール』(1989年)のランディ・フェルドマンと『デイライト』(1996年)のレスリー・ボームが雇われてアクション映画としての体裁を作り上げました。

両名ともスタローン作品に関与しているという辺りに、アクションと人情の両立を目指した本作の方向性が見えてきますね。

ジョー・エスターハスはヴァンダム主演になったことで脚本は台無しとなり、完成した作品も好きではないと辛辣なコメントを残しています。そんなに怒るほど悪い出来でもなかったと思うのですが。

監督は『ヒッチャー』のロバート・ハーモン

そして監督はスリラーの佳作『ヒッチャー』(1986年)で名を挙げたロバート・ハーモン。

なぜヴァンダム主演作にヒッチャーの監督なのかはよく分からないのですが、ドラマとアクションの折衷を求められる本作をハーモンは器用にまとめているし、従前、演技ができる人というイメージのなかったヴァンダムから良質なパフォーマンスを引き出している点も評価できます。

興行的には成功した

1993年1月15日に全米公開され、初登場4位。

同年に公開されたジョン・ウー監督の『ハード・ターゲット』(1993年)が全米No.1を獲ったことと比較するとパッとしない成績であり、全米トータルグロスは2218万ドルと絶頂期のヴァンダム映画としては物足りなかったのですが、国際マーケットでは強さを発揮。

全世界トータルグロスは6400万ドルであり、1500万ドルという中規模予算だったことを考えると採算性の良い作品だったと言えます。

感想

現代の西部劇

悪辣な地上げに苦しむ貧民の元に流れ者が現れ、用心棒となって彼らの生活基盤を守るという物語は『シェーン』(1953年)、『ペイルライダー』(1985年)など西部劇の流れを汲んだものであり、現代的なテクノロジーを極力映さないという演出からも、西部劇の再現こそが製作陣の意図だったことは読み取れます。

西部劇のベタながらも力強いストーリーラインは本作でも有効に機能しており、悪い奴らからの嫌がらせに対して忍従を重ねた末に反撃をするという定番の物語には、定番通りの熱さが宿っていました。

ただし、開発と環境という現代的なテーマを絡めるというアプローチはうまく機能していなかったので、これは割愛しても良かったと思います。

ヴァンダムの演技が良すぎる

主人公は脱獄囚のサム(ジャン=クロード・ヴァン・ダム)。ただし彼の罪状とは本来友人が負うべき罪を代わりに被ったことによるものであり、そんなサムに対して恩義を感じている友人の手引きによって脱獄に成功します。

そして逃亡の過程でその友人は死亡し、たった一人で逃げることとなったサムは人里離れた山中に潜伏するのですが、そこで近所に住む子供ムーキー(キーラン・カルキン)と遭遇します。

当初、ムーキーはサムをE.T.だと思って関心を示し、次第にその関係性は父を亡くしたムーキーにとっての親子関係に近づいていくのですが、意外や意外、ヴァンダムと子供という組み合わせはうまくいっており、二人の間のドラマは真っ当なものとなっていました。まさかヴァンダムの映画でほっこりさせられるとは。

そして、ムーキーの母クライディ(ロザンナ・アークエット)は若くして夫を亡くした後には女手一つで二児を育てているのですが、家族の土地を狙う悪辣な開発業者からの暴力を伴う立ち退き要求に困っていました。

当初は身を隠しているつもりだったサムも、開発業者の余りに酷い振る舞いを目の当たりにしてグライディの前に姿を現し、寝泊りのため納屋を借りる代わりに一家の用心棒を買って出ます。

そうすると今度は未亡人グライディと流れ者サムの関係性に作品の焦点が移るのですが、これもまたヴァンダムが無難にこなしており、ロザンナ・アークエットの良質な演技の邪魔をしていません。

アークエットはヴァンダムとの共演が嫌だったようで、インタビューでは役をこなしただけでそれ以上でもそれ以下でもないという言い訳をしていたのですが、そこまで恥じるほど悪くはありませんでした。

それにしても、ヴァンダムやスタローンの映画に出演した俳優が「金のために出演した」「あくまで役を演じただけ」と言い訳する様は、アクション俳優やアクション映画を見下しているようで良い気分がしませんね。

ロザンナ・アークエットは整った顔立ち、細身なのに巨乳、そして高い演技力と資質には恵まれていたのに、イマイチ大成しなかったのはジャンル映画を見下した姿勢に問題があったんじゃないのと思ってしまいます。

卑怯者の横恋慕

開発業者がなぜこんな振る舞いを出来ているのかというと、法執行官たる地元保安官を賄賂で抱き込んでいるためです。

この保安官も根は悪い人間ではなさそうであり、実際、開発業者の悪事に積極的に加担するようなことはしないのですが、金に絡めとられて完全に職務放棄をした状態にはなっています。

金を受け取ってしまった後なので自己保身を優先して悪事を見て見ぬふりし、悪徳業者が引き連れている強面お兄さんたちにビビってしまって口出しすらできないというわけです。

そしてこの保安官は未亡人グライディとの関係を持っていたのですが、グライディがまさに開発業者のターゲットにされているのに何もできないというヘタレぶりを披露。

そこにサムが現れたことで、グライディの気持ちがサムに移っていったことは半ば必然なのですが、保安官はしかるべき立場にありながらグライディを守れなかった自分自身の落ち度も顧みず、信頼を勝ち得たサムを敵視し始めます。

まさに小物、クズ、卑怯者、ダボハゼという感じであり、出てくるたびにムカついて仕方ないのですが、こういうケチな奴がいると主人公の存在が際立つもので、作劇上の重要なスパイスの役割はきっちり果たせていました。

忍従を重ねた末のアクション

そんなわけで本作はいつものヴァンダム映画のような敵をちぎっては投げる様に拍手喝采するタイプの作品ではないのですが、忍従を重ねた末に悪徳業者に反撃するアクションにはカタルシスが宿っていました。

しかも今回のヴァンダムにマーシャルアーツの達人設定はないため、ピンチに陥ることもしばしばあって、それが戦いに緊張感をもたらしています。

加えて、後に『世界最速のインディアン』(2005年)を撮ることとなる撮影監督デイヴィッド・グリブルによるバイクチェイスは素晴らしいスピード感と圧巻の迫力であり、派手さはなくとも印象的な見せ場をモノにできています。