アウト・フォー・ジャスティス【良作】セガール最高傑作!(ネタバレあり感想)

(1991年 アメリカ)
下町でたった一人の犯罪者を追いかける一晩の物語というセガール史上もっともミニマルな作品なのですが、こうしたミニマルな作品がうまく機能すれば被写体の個性がよく反映されるものであり、本作こそがスティーヴン・セガールという素材を最大限に活かせた作品だと言えます。

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あらすじ

ブルックリンの刑事ジーノは、白昼堂々相棒をその家族の目の前で撃ち殺される。犯人はジーノの幼馴染でもあるリッチー・マダーノで、リッチーは所属するマフィアからの制御も受け付けないほどの狂犬と化していた。ジーノは地元のネットワークを駆使してリッチーを追いかける。

セガール主演4作目

1988年の『刑事ニコ/法の死角』でデビューしたセガールの4作目に当たり、代表作『沈黙の戦艦』はこの直後にリリースされます。

『沈黙の戦艦』で大作路線に転換する前の暴力刑事路線では本作が最終作となるのですが、脂の乗り切ったセガールがなかなか勇ましく、またセガールさえ暴れていればいいという割り切りの下で設定もプロットも最小限に抑えられており、コンセプトにこだわりすぎてうまくいかなかった前作『死の標的』とは打って変わって、セガールの良さが前面に押し出された快作となっています。

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感想

セガール史上もっともミニマルなストーリー

NYの下町で暴力刑事が狂犬ヤクザを追い込むだけというシンプルなストーリーであり、そこに巨大な陰謀や主人公の特殊な前職といった、セガール作品にありがちな余計な設定は付け加えられていません。

プロットや設定を極限にまで削ぎ落としたことでバイオレンスのみが異常に前に出た作風となっており、また『ローリング・サンダー』のジョン・フリン監督によるガサガサした雰囲気も作品にマッチしており、かなり真っ当なバイオレンス映画として仕上がっています。

度を越した暴力描写の数々

冒頭、セガール扮するジーノ刑事は張り込み中なのですが、その現場にたまたまいたポン引きが娼婦を激しく殴っている様を見て、我慢できなくなったジーノは張り込みを放り出して飛び出していきます。ここでのポン引きの暴力がなかなかエグくてイヤ~な気分にさせられたのですが、作品中の暴力描写は、どれも観客をイヤ~な気分にさせられるものばかりでした。

発端となる相棒の射殺場面にしても過剰なまでの血糊で惨たらしい見せ方にしているし、セガールが暴れる場面にしても刃物が刺さったり、骨が折れたりといった人体破壊の様を丁寧に見せてきます。これらは、バッタバッタと敵を倒す通常のアクション映画とは明らかに異質な見せ方であり、はっきりとバイオレンスを標榜した作品であったと言えます。

板についた下町の暴力刑事ぶり

舞台となるのは刑事とヤクザが紙一重の下町。ジーノはたまたま警察に就職しただけで、いくつかの偶然が重なっていなければ、今頃はマフィアの構成員をやっていてもおかしくない人物であるという設定が置かれています。まさに『アウト・フォー・ジャスティス(正義のためなら道だって踏み外すぜ)』という矛盾したタイトルを象徴する人物なのですが、激しい怒りに駆られたセガールの暴力刑事ぶりがなかなか板についています。

また、下町では警察もマフィアもたいていが顔見知りで、捜査過程で会う人会う人にジーノは「おぉ、久しぶり~」って感じで接するのですが、マフィアを相手に笑顔で昔話をするような柔らかな部分も同時に表現できています。

繊細な演技もできている

そして、こうしたハードさとソフトさの両面を炸裂させるのが、射殺犯であるリッチーの家族への態度です。

リッチーの父は貧しい生活を送っていた少年期のジーノに小遣いをくれる優しいおじさんだったのですが、ジーノはリッチーを捕らえるために、個人的に恩義のあるリッチーの父を拘束するという強硬策に打って出ます。この時のジーノの、表面的には冷徹さを装いつつも内面では葛藤を抱えた演技をセガールはちゃんとモノにしており、実は演技ができる人だったことが分かりました。

アクションがキレッキレ

複数のチンピラを相手にした大立ち回りではいつものセガール・アクションが炸裂。スリムな体格と長い手足から繰り出される技の数々は、相変わらず美しくて見応えがありました。また、セガールは独特な銃の構え方をするのですが、銃口が常にまっすぐ前を向いたその構え方には的にちゃんと当たりそうな説得力があって、この人の身のこなしは相変わらず洗練されているなと感心させられました。

加えて、カーチェイスではちゃんと車を運転していたり、『刑事ニコ/法の死角』の時点では肘から下をグルングルン回しておかしかった走り方をこっそり直していたりと、とても頑張ってアクションをしているという点が伝わってきたことも好印象でした。

願わくば、話がもっと面白ければ

セガール映画としては見応えがあったのですが、話が面白くないという点がボトルネックとなっていました。

ジーノがリッチーとの距離を徐々に詰めていくような大きな流れがなく、最終的に一本のタレコミ電話でリッチーの居場所が判明するため捜査過程に面白みがないし、リッチー側のドラマがまるで描けていないので、幼馴染同士が殺し合う愛憎劇としての側面がほぼ死んでいます。

この辺りがしっかりしていればセガール映画という範疇にとどまらないバイオレンス映画の良作になった可能性もあっただけに、画竜点睛を欠いた点が残念でした。

≪スティーヴン・セガール出演作≫
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