【凡作】パトリオット・ゲーム_後半に向けてつまらなくなっていく(ネタバレあり・感想・解説)

軍隊・エージェント

(1992年 アメリカ)
ハリソンが演じるジャック・ライアンは良かったのですが、新監督フィリップ・ノイスがハイテク描写を不得意としていたことから、インテリジェントゲームが描かれる後半になるにつれて映画は面白くなくなっていきます。ラストバトルの見辛さ・つまらなさは拷問レベルでした。

作品解説

ジャック・ライアンシリーズ第2弾

ジャック・ライアンシリーズとはトム・クランシー原作の軍事小説シリーズであり、小説の第1弾『レッド・オクトーバーを追え!』が1990年にジョン・マクティアナン監督×アレック・ボールドウィン主演で映画化され、全米興行成績1億2200万ドルを超える大ヒットとなりました。

当初よりシリーズ化を意図していたパラマウントは当然のことながら続編にゴーサインを出し、ジョン・マクティアナンは小説では4作目にあたる『いま、そこにある危機』を原作にすることを希望していたようです。

しかしパラマウントは小説では2作目にあたる『愛国者のゲーム』を映画化することに決定しました。

監督はジョン・マクティアナンからフィリップ・ノイスに変更

IRAを悪者にする『愛国者のゲーム』が原作として選ばれた時点で、自身がアイルランド系のマクティアナンは降板の意を表明。『レッド・オクトーバーを追え!』(1990年)でも組んだショーン・コネリー主演のドラマ『ザ・スタンド』(1992年)へと移っていきました。

代わりの監督としては『ブルーサンダー』(1983年)や『ウォーゲーム』(1983年)などテクノロジー描写を得意とするジョン・バダムが有力候補だったのですが、バダムから要求された監督料があまりに高額だったことからフィリップ・ノイスに決定しました。

フィリップ・ノイスはオーストラリア出身の映画監督で、ニコール・キッドマン主演のスリラー『デッドカーム/戦慄の航海』(1988年)が母国での代表作。

日本映画『座頭市』のハリウッドリメイク『ブラインド・フューリー』(1989年)でハリウッド進出をしたばかりでした。

主演はアレック・ボールドウィンからハリソン・フォードに変更

主人公ジャック・ライアン役はアレック・ボールドウィンが続投する予定だったのですが、前作を断ったハリソン・フォードが今回は主演を引き受けてくれそうになってきたことから、パラマウントはフォードに交代させたいという思いを強くしました。

ボールドウィンによると彼を降板させるための計画がいろいろと画策されていたようです。

シリーズを担当していたパラマウント重役デヴィッド・カークパトリックよりボールドウィンに対して「日付制限のない契約書に同意せよ」との無理筋の要求が突き付けられたことから、ブロードウェイで『欲望という名の電車』への出演が決まっていたボールドウィンは降板せざるを得なくなりました。

かくしてボールドウィンよりも16歳年上のハリソン・フォード主演に置き換えられたことから、ライアンの年齢は引き上げられました。

原作では『愛国者のゲーム』は『レッド・オクトーバーを追え』の前日談なのですが、映画では年代設定を後にし、本作冒頭でのライアンの講義ではレッド・オクトーバー号事件に絡んだと思われる話をしています。

またライアンの奥さんキャロラインも前作のゲイツ・マクファーデンからアン・アーチャーに変更になりました。

興行的には成功した

本作は1992年6月5日に全米公開され、好調だった『天使にラブ・ソングを…』(1992年)や『リーサル・ウェポン3』(1992年)を抑えて初登場1位を獲得。翌週も好調でV2を達成し、『バットマン・リターンズ』(1992年)が公開された3週目にして首位陥落しました。

全米トータルグロスは8335万ドルで、全米年間興行成績第11位という好記録でした。

国際マーケットでも好調であり、全世界トータルグロスは1億7805万ドル。2億51万ドル稼いだ前作からは1割減となりましたが、それでも4500万ドルという製作費を考えると高収益だったと言えます。

感想

ハリソンのライアンはベストではないが良い

歴代ジャック・ライアン俳優の中で、私は成熟と青臭さのバランスがとれていたアレック・ボールドウィンがベストだと思っています。

これがハリソン・フォードに置き換えられたことで成熟や安定感が勝ってしまい、真っすぐすぎて問題にぶち当たってしまうジャック・ライアン像からは遠ざかってしまったように思います。

ただし監督も脚本家もこの欠点をよく認識していたようであり、本作のライアンはすでに現場の分析官を引退済であり、軍事史の研究家として家族中心の生活を送っているという設定とされています。

ハリソンの年齢やパブリックイメージに合わせた変更ですが、そのことが奏功してハリソンのライアン像にも違和感はありませんでした。

「家族を守るため」という軸からブレることなく行動し、必要とあらばIRAの重鎮に対しても臆せず発言するという形で、ライアンらしい向こう見ずさも表現しています。加えてハリソンにはインテリっぽさもあるので、モニターと睨めっこする場面も様になっています。

総じてハリソンのジャック・ライアンは良かったと思います。

話のスケールダウンは残念

ただしハリソンに合わせた脚色が裏目に出ている部分もあって、殺された家族の復讐に走るテロリストと、家族を守るために反撃するライアンという私怨と私怨のぶつかり合いレベルの小さな物語に終始したため、国際的な謀略戦を描くジャック・ライアンシリーズらしいスケール感は失われています。

ショーン・ビーン扮するショーン・ミラーは、IRA本体からも持て余されている武闘派グループの一員なのですが、最終的にはその小さな武闘派グループからのコントロールさえも受け付けなくなり、個人でジャック・ライアンへの復讐に走ります。

ライアンもまた家族のために「寄らば斬る」の姿勢でいるだけであり、国の安全保障などを背負っているわけではありません。

インテリジェントゲームを描けていない

そして妻子を襲われたことに激怒したライアンは古巣CIAに戻り、国外逃亡したテロリストを偵察衛星を使って探し始めます。ここからジャック・ライアンシリーズの持ち味であるインテリジェントゲームが始まるのですが、どうにもこれが盛り上がりません。

象徴的なのが中盤でのリビア砂漠の場面であり、テロリスト側は偵察衛星が上空を通過する時間を読んで身を隠すことでアジトの場所を隠してきたのですが、ライアンは衛星の通過時間を変えることでこれに対抗しようとします。

しかしCIAからは「偵察衛星の軌道を変えるのにいくらかかると思ってるんだ」というお叱りが入り、なかなかライアンの思惑通りにはなりません。

こうして置かれた構図は面白いのですが、映画はこの論点を深掘りせずあっさり流してしまうので、偵察衛星の目を欺くテロリストと、さらにその裏をかこうとするライアンの静かな攻防戦や、官僚機構CIAにおける意思決定の難しさなどがまるで表現できていません。

その結果、ほとんどライアンの記憶力頼みで捜査が進んでいくことから、当時のハイテク機器を駆使した高度なインテリジェントゲームという領域には達していません。

また、発見されたアジトに特殊部隊が送り込まれ、ライアンたちは偵察衛星越しに掃討戦を眺めるのですが、赤外線で映し出された点が消えていくという描写で人の生死を表現したこの場面が驚くほど退屈で、本来持つべき意味を持ち得ていません。

フィリップ・ノイス監督の演出力が素材に追い付いていないというのが正直な感想です。

ラストバトルは見辛い

砂漠のアジトを全滅させたつもりでいたが、実は過激派グループは生き延びており、ライアン邸が襲われることが最後の戦いとなります。

このラストバトル、暗闇の中で暗視スコープ装着の敵に狙われるという恐怖がそもそもの演出意図であり、『羊たちの沈黙』(1991年)のラストみたいにしたかったのかなと思うのですが、演出の下手さ加減のためかその恐怖が伝わってこないので、ただただ見辛いだけの場面になっています。

上映前の試写段階でもこのラストは不評だったようで、公開2か月前に大規模な追加予算を組んでボートチェイスの場面が急遽追加されることになりました。ただしこのボートチェイスもアップが多すぎて見辛いったらありゃしないので、焼け石に水状態でしたが。

またラストにはサミュエル・L・ジャクソンもいるのですが、ジャック・ライアンの活躍にばかりフォーカスされるのでサミュエルの無駄遣い状態が勿体なく感じたし。

ちゃんとしたアクション演出ができる監督を起用すべきだったのですが、興行的には成功したことから続編『今そこにある危機』(1994年)にもフィリップ・ノイスが続投し、本作に輪をかけてつまらなくしています。

≪ジャック・ライアンシリーズ≫
【良作】レッド・オクトーバーを追え!_シリーズで一番面白い
【凡作】パトリオット・ゲーム_後半に向けてつまらなくなっていく
【駄作】今そこにある危機_長いだけで面白くない
【凡作】トータル・フィアーズ_全然恐怖を感じない
【凡作】エージェント:ライアン_役者は良いが話が面白くない
【良作】ウィズアウト・リモース_本当に容赦がない