【凡作】パール・ハーバー_退屈なロマンスと壮観なアクション(ネタバレなし・感想・解説)

軍隊・エージェント
軍隊・エージェント

(2001年 アメリカ)
良くも悪くもマイケル・ベイの特性がドバっと出た戦争大作。アクションは徹底的に派手で壮観で見ごたえがあるが、それ以外がボロボロすぎた。真珠湾攻撃の40分だけ何度でもリピートしたくなる。

感想

公開時に映画館で見て、マイケル・ベイ謹製の爆破アクションの数々には満足はした覚えがあるけど、それ以外に際立った要素もない映画に3時間は厳しすぎた。

見ているのがあまりにしんどかったので、その後四半世紀にわたり見返してこなかったのだが、終戦の日が近づいてきたこの時期に再鑑賞してみた。

タイトルこそ『パールハーバー』ではあるが、真珠湾攻撃前後の軍事的動向が描かれるわけではなく、真珠湾攻撃に巻き込まれた3人の男女の恋愛ドラマが全体のベースとなる。

映画全体の構成においても、真珠湾攻撃は中盤の見せ場程度の扱いであり、後半においては対日参戦を決めたアメリカ軍による、最初の日本本土空襲までがカバーされている。

歴史的事件に男女の悲恋を絡ませるアプローチは『タイタニック』由来だし、愛国心を隠さぬ娯楽作は『インデペンデンス・デイ』のようでもある。

そして戦争映画とロマンスの掛け合わせは、1998年度のアカデミー賞で『恋に落ちたシェークスピア』と『プライベート・ライアン』が競ったことに影響されているとか。

なお当初キャスティング案では、『恋に落ちたシェークスピア』でオスカーを受賞したグウイネス・パルトローと、『プライベート・ライアン』でタイトルロールを演じたマット・デイモンの起用が検討されていたとか。

こうして振りかえってみると、本作は実に野心的な企画であり、興行面でも評価面でも最高を目指して作られた作品だったということが分かる。

マイケル・ベイは本作の監督を何度も断ったとされているが、それでも最終的に引き受けたのは、本作からオスカーの匂いがしてきたからだろう。

公開当時の記憶を呼び起こしてみても、本作は戦争映画の決定版になるんじゃないかという期待値が確かにあった。

ここで悪玉にされる日本人にとってはナーバスな問題でもあり、世界最高の映画プロデューサーであるジェリー・ブラッカイマーによって究極の反日映画が出来上がったらどうしようかという不安も、当時は確かに存在していた。

がしかし、出来上がった映画は戦争映画の決定版どころか、おだてられてるアメリカ人からすらまともに評価されないという体たらく。

結果、何が起こったかというと、アメリカでは期待通りに稼げなかった分を、猛烈な拒否反応が懸念された日本市場で取り戻すという逆転現象が生じたのだった。

とんでもない反日映画爆誕を恐れていた日本人からすると「この程度で済んだか」という安堵感があり、また政治的・軍事的・倫理的な問題提起のない単純なアクションとロマンスだったので、日本マーケットとの相性も良かったのだ。

主人公はアメリカの戦闘機パイロットのレイフ(ベン・アフレック)。

幼馴染のダニー(ジョシュ・ハートネット)と共に入隊し、パイロットとして頭角を現し始めたレイフは、上司のドゥーリットル少佐(アレック・ボールドウィン)からの後押しもあり、バトル・オブ・ブリテンに志願兵の立場で参加することに。

愛する恋人イブリン(ケイト・ベッキンセール)を祖国に残しての出征となったレイフだが、その搭乗機はドイツ軍に撃墜され、レイフは行方不明となる。

悲しみに暮れるイブリンを慰めたのはダニーであり、やがて二人は恋仲となるが、そこに現れたのは死んだはずのレイフだった・・・

これが本作の概要であるが、戦死したはずの男が戻ってきて荒れる系のドラマは、のちデンマーク映画の『ある愛の風景』(2004年)と、そのリメイク『マイ・ブラザー』(2009年)とも共通している。

ドラマ映画として高評価を受けた後続2作品と比べると、本作のドラマの評価は際立って悪い。

「全員の言い分が理解できるわ~」じゃないといけないはずの題材で、誰にも感情移入ができないという事態が起こっているのだ。

一番厳しい立場にいるのはレイフだが、自分が死んだと思っていた二人の心境に対する配慮が何もないので、怒りすぎと言えなくもない。もうちょっと自重してほしかった。

ダニーは、親友の恋人に対してのアプローチが軽すぎた。彼女に手を出すにせよ、もっと思い悩むプロセスがあって欲しかった。

そしてイブリンは悲劇の主人公面しすぎ。ちょいとというか、かなりウザい。

あと全体のタッチもウザい。

戦争を背景にした悲恋の物語なのに妙に軽く、笑わせに来たりもする。

ここで笑えればまだ何とかなったかもしれないが、笑いを取りに来たパートがことごとくスベっているので、見ていて本当にキツかった。

後のマイケル・ベイ監督のコメントによると、戦争に入る前の能天気なアメリカ社会を描くため、主人公3人のロマンスは1940年代のコメディ映画を意識しており、ここから開戦後の落差を描こうとしたのだとか。

能天気な青春ものと残虐な戦場描写を絡めた『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年)に影響されたアプローチなのだろうけど、問題は、マイケル・ベイにポール・バーホーベンほどの器用さがなかったことだ。

まぁものの見事に滑りまくっている。

そして真珠湾攻撃を丸々カットしても3人のドラマを描き切れてしまうというという構造的な大問題も存在している。

そのため、『パールハーバー』をタイトルに冠した作品でありながら、真珠湾攻撃の場面だけが妙に浮くという珍現象までが起こっているのだ。

これはもう企画倒れとしか言いようがなく、様々な成功モデルを足し合わせて万全を期したつもりが、全くそうはならなかった。映画とは水モノである。

ここまで否定ばかりをしてきたが、本作の見せ場は確かに素晴らしく、破壊大帝マイケル・ベイの本領がいかんなく発揮されている。

爆破したものの数でギネス記録を持っているほどの破壊量だが、本作の予算はかなり厳しかったという。

当初、ブラッカイマーとベイが要求した予算は2億8千万ドルだったのだが、見たこともない金額要求にさすがのディズニーも首を縦には振らず、1億4千万ドルにまで値切られた。

これでも当初予算としては史上最高額なのであるが(『タイタニック』は結果的に予算超過しただけで、最初から2億ドルの枠を持っていたわけではない)、それでも当初予算の半分に削られたことで、マイケル・ベイもいろいろ諦めねばならなかったことだろう。

それでもベイはやり切って、大物量の真珠湾攻撃を見事モノにしたのだから、アクション監督としては実に良い仕事をしたと言える。

あくまで「アクション監督としては」だが。

本作の失敗後、マイケル・ベイは賞狙いの線などは捨てて、ひたすらにアクションと視覚効果のインパクトのみを追いかける監督になった。

それでいいと思う。

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