【良作】猿の惑星_言論封殺の恐ろしさ(ネタバレあり・感想・解説)

SF・ファンタジー
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(1968年 アメリカ)
SF史上の古典なんだけど、本編でやってることはモロに赤狩裁判。こちらは正しいことを言っている、相手の主張をちゃんと崩せているつもりなのに、それがまったく通らない場の恐ろしさが最も印象に残った。

感想

異端審問会≒赤狩り裁判

このシリーズにはなぜか小学生の頃にハマったんだけど、近所のレンタルビデオ屋にはなぜか一作目だけがなかったので2~5をまず見て、後日、日曜洋画劇場で放送された第一作を見るという、超変則スタイルで鑑賞した。

あの有名なラストはすでに情報として知っていたのでネタバレも特段問題ではなく、この順番でも十分に楽しめた。

何らかのトラブルで宇宙船が不時着したら、そこは猿の支配する惑星だったというのがざっくりとしたあらすじ。

集落を築き、科学や文化を持ち、農耕などの生産活動を行う猿に対し、人間はウガーとしか言えない野生動物の一種となっており、畑を荒らしにくるので猿達に駆除される立場となっている。

宇宙飛行士のテイラー(チャールトン・ヘストン)も捕獲されて研究施設に入れられてしまうんだけど、他の人間と一緒にされちゃかなわんということで、「俺はコミュニケーションとれるから」と必死にアピール。

幸いなことに、研究施設を管理しているジーラ博士(キム・ハンター)と、その夫コーネリアス(ロディ・マクドウォール)は偏見よりも合理性で物事を捉えられるタイプだったので、彼らにテイラーの存在は理解されるのだが、猿社会全体が相手となると一筋縄ではいかない。

なぜなら、猿は創造神に似せて作られた唯一無二の種族であり、猿と同等に思考しコミュニケーションできる人間など存在してはならないからだ。

かくしてテイラーの存在は罰当たりであるとして異端審問会が開かれるんだけど、これが茶番もいいところで、その無理問答ぶりが本編中最大の見せ場となっている。

審問官たちは「ジーラ博士が邪悪な手術を施した」と、そんなわけない仮説を恥ずかしげもなく述べてくる。

それに対してジーラ、コーネリアスは論理的な反論を試みるのだが、相手は「でも教典にはこう書いてある」の一点張りでまったく話が通用しない。

そのうち3人の審問官はそれぞれ目・耳・口をふさぎ、「見ざる・聞かざる・言わざる」の状態になってしまう。ジーラ博士に対して反論できない、しかしその主張を認めることもできない者の呆れた醜態を晒すのである。

ピエール・ブールの原作を脚色したマイケル・ウィルソンは、『陽のあたる場所』(1951年)と『戦場にかける橋』(1957年)でアカデミー賞を二度も受賞し、その他に『アラビアのロレンス』(1962年)なども手掛けた大物脚本家だったが、赤狩りでブラックリスト入りしたことからノークレジットでの活動を余儀なくされ、『戦場にかける橋』ではオスカー像を受け取れなかった。

またジーラ博士を演じるキム・ハンターは『欲望という名の電車』(1951年)でアカデミー助演女優賞を受賞した実力派だったが、ウィルソンと同じく赤狩りでブラックリスト入りしたことから、10年近くもハリウッドで干されていた。

そんな彼らの経験が、本作の異端審問にも色濃く反映されているのだろう。

こちらは正しいことを言っている、相手の主張をちゃんと崩せているつもりでいるのに、それがまったく通らない場の恐ろしさ。特にテイラーにとっては己の生殺与奪を握られた状態で議論が空転しているので、まったく気が気ではない。

さらにその後、もう一人の宇宙飛行士ランドン(ロバート・ガンナー)が連れて来られるんだけど、彼のこめかみには明らかに手術をされた跡がある。

こいつら、主張を守るためにはここまでするんだという絶望感が凄い。それまでは猿と人間の立場逆転をユーモラスに映し出す部分もあったけど、ここから映画の空気は一気に重たくなる。

隠ぺい側にも事情がある

ただし苦しい言い訳をしてまで権力者側が秘密を守り続けたことにも、一定の合理性はある。

みなさんご存じの通り、かつてこの星を支配していたのは人類だったが、核戦争を起こして自滅してしまった。

猿の支配階層は人間と同じ過ちを犯すまいと躍起になっており、教典に基づく理性的な社会作りを目指している。そして教典の信頼性を損ないかねない事項は、徹底して排除しようとしているのである。

事実の探求とは一つの価値観であるが、それが絶対ではない。

真実を暴いたことで社会の精神的基盤が壊れては元も子もないという支配階層の言い分も分からんでもないので、見終わった後にもモヤモヤが残る。

このスッキリしない感覚が現実とのブリッジとなっており、ただのSFを越えた作品となっている。

≪猿の惑星≫
【良作】猿の惑星_言論封殺の恐ろしさ
【凡作】続・猿の惑星_こじんまりとした最終戦争
【凡作】新・猿の惑星_猿が動物園の檻に入れられただけ
【凡作】猿の惑星・征服_人類が阿呆すぎる
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