【凡作】マキシマム・ブラッド_満身創痍で戦うヴァンダム(ネタバレあり・感想・解説)

クライムアクション

(2014年 カナダ)
暴力に明け暮れた人生を後悔しながら生きるヴァンダムの老兵感がよく、ロートル最後の戦いというテーマは生きていました。他方で、複雑な家族関係や信仰と暴力といった本編中に散りばめられたテーマは全然活きておらず、シンプルなバイオレンス映画に徹してくれれば良かったのにと思います。

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あらすじ

元フランス軍特殊部隊員のディーコン(ジャン=クロード・ヴァン・ダム)は訪れたフィリピンで女性との一夜限りの関係を楽しんだが、目が覚めると臓器売買組織に腎臓をひとつ切り取られていた。現地の仲間からは残りの腎臓で生きていけるのだから諦めろと言われるが、そもそもディーコンは余命3か月に迫った姪に腎移植をするためにフィリピンを訪れており、その腎臓は決して他人に渡せるものではなかった。誰かに移植されるまでの10時間以内に奪われた腎臓を取り戻さねばならないディーコンは、満身創痍ながら組織の追跡を開始する。

スタッフ・キャスト

主演はジャン=クロード・ヴァン・ダム

開脚君。1960年ブリュッセル出身で、1980年に全欧プロ空手選手権でミドル級王座を獲得した本物の格闘家でした。

チャック・ノリス主演の『地獄のヒーロー』(1984年)にスタントマンとして参加した縁でノリスのスパーリング・パートナーや奥さんのレストランの運転手などを務めました。そして、ノリスの伝手でプロデューサーのメナハム・ゴーランに売り込みをかけて『ブラッドスポーツ』(1988年)の主演を獲得したという頑張り屋さんです。後の『エクスペンダブルズ2』(2012年)には師匠と一緒に出演しました。

1980年代後半から1990年代前半にかけては全米No.1ヒットを連発していたものの、トム・クルーズやニコラス・ケイジが本格的にアクション映画に出演するようになった反動でアクション俳優全般への需要が一気に減った90年代後半からは興行的な結果を残せなくなり、2000年代以降はVシネ俳優となっています。

監督は『ハード・ソルジャー/炎の奪還』のアーニー・バーバラッシュ

クリスチャン・ベール主演の『アメリカン・サイコ』(2000年)のプロデューサーの一人であり、『CUBE2』(2003年)で製作・脚本、『CUBE ZERO』(2005年)で製作・脚本・監督を務めてきたという、ゴリゴリのB級映画界の住人です。

元傭兵のヴァンダムが人身売買組織の起こした誘拐事件で一肌脱ぐという本作と類似した『ハード・ソルジャー/炎の奪還』(2012年)に続くヴァンダム作品2作目となります。

感想

ヴァンダムの老兵感が良い

俳優にとって寄る年波は大敵なのですが、『ユニバーサル・ソルジャー:リジェネレーション』(2008年)あたりからヴァンダムは老いを隠さなくなりました。

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そもそもヴァンダムは演技ができる人なので、老兵という方向に振り切るとなかなか味のあるキャラクターをものにするようになり、今や枯れと現役感を両立したバイオレントな役柄では抜群の安定感を見せるようになっています。本作もそんな一本。

今回演じるのは元フランス軍特殊部隊員で、人質奪還のエキスパートだったディーコン。

最近のヴァンダム作品の例に漏れずディーコンは無茶苦茶をやってきた人生を悔やみながら生きており、「人を殺すのは簡単だ。でもそれを背負って生きていくことが難しい」という含蓄のあることも言います。

そんな厭戦ムード溢れる老兵の心に火が点いた瞬間、猛烈な勢いでバイオレンスが走り出すという緩急の付け方は定番ながらよくできており、ブチ切れた元殺人マシーンが怒りのデスロードをひた走る様にはなかなか興奮させられました。

敵が意外と強くないことにガッカリ

そんな感じでヴァンダムは百点満点に良かったのですが、敵がそれほどでもない点は肩透かしでした。

中国にしか見えないフィリピンのホテルでディーコンが目を覚ますと、臓器売買組織によって腎臓が一つ取られていた。あわてて昔の仲間に連絡すると「この辺りの闇社会はマジでヤバイ。もうひとつの腎臓が残っていれば生きていけるんだから、諦めて帰った方がいい」と言われます。

ヴァンダムが全幅の信頼を置いている仲間をしてここまで言わしめる敵とはどれだけ手ごわいのだろうかとアクション映画的にワクワクさせられたのですが、特に苦戦することもなくディーコンは本丸に到達してしまいます。

加えて、敵は警察をも丸め込んでいる上に、中盤ではディーコンが汚職警官を殺害したように見せかけるという小細工もされたものだから、闇社会と警察の両方に追われる難しい立場に追い込まれるのかなと思いきや、そういった展開もなし。ガッカリでした。

複雑な家族構成は余計だった

ディーコンが腎臓を取り戻さねばならない理由。それは余命3か月の姪イザベラに臓器移植をするためにフィリピンを訪問しており、あの腎臓が無ければイザベラは死んでしまうためです。

弟のジョージとは確執を抱えつつも、姪(ジョージにとっては娘)の命を救わねばならないという目的において兄弟の思惑は一致しており、二人は闇社会へと突撃していきます。

このディーコン・ジョージ・イザベラの関係性がかなり複雑で、理解には一定の集中力を要求されます。

ディーコンとジョージの幼少期に両親は離婚しており、兄ディーコンは父親に、弟ジョージは母親に引き取られたために二人は一緒に育っていません。

若い頃のディーコンはメアリーという女性と付き合っていたのですが、兄に会いに来たジョージがメアリーに一目惚れ。その後、当時のやんちゃなディーコンがメアリーに愛想尽かされたことから、ジョージは兄からメアリーを寝取って結婚することに成功します。

しかしメアリーとジョージの夫婦関係もうまくはいかず、メアリーはディーコンの元へと一時的に戻っていきます。その際に妊娠したのがイザベラだったというわけで、この家族はなかなか厄介なのです。

で、この複雑な家族構成が本編に生きているかというとそうでもなく、家族も持たずに生きてきた老兵にとって唯一の生きがいである姪の命が危ないので、危険を顧みず戦うというストレートな話にしても、さほど違いはなかったんじゃないかと思います。

※注意!ここからネタバレします

信仰と暴力というテーマの掘り下げ方が浅い

本編では信仰について繰り返し言及されます。

弟ジョージの初登場場面は教会だし、腎臓を取り戻そうとホテルを出たディーコンはなぜか聖書を小脇に抱えており、用心棒との乱闘では聖書で人を殴ったり、ハードカバーの角を使って目潰しをしたりと、使い方はもうめちゃくちゃです笑。

起こったことを神の意思として受け入れようとするジョージに対して、「良いことが起こった時には神のおかげなのに、悪いことは神のせいにはならないっておかしいだろ」と身も蓋もないことを言い出すディーコンと、信仰を介して事象を理解するのか、神なんていないという前提で意思決定をするのかという点で常に論争が起こります。

それは腎臓を移植された赤の他人の子供を我が子のために殺そうとするジョージと、殺すなと諭すディーコンという終盤での逆転現象に繋がってくるのだろうと思います。

死にかけている娘を救わねばならないという背に腹は代えられない事情と、手元にその情勢を一変させられる武器がある時に、それでも人は私情を封印して宗教的・倫理的に正しい決断をできるのかという。

そして、ギリギリまで追い込まれると敬虔だったジョージでも人を殺してもやむなしという方向へと振り切れるところに、信仰でも押さえられない人間の暴力的な本質を描いたのだろうとは思います。

が、このテーマがそれほど映画の面白さには直結しておらず、別になくても良かったんじゃないのという感じになっています。

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