【良作】プレデターズ_殺しのドリームチーム(ネタバレあり・感想・解説)

クリーチャー・メカ
クリーチャー・メカ

(2010年 アメリカ)
世界各国から集められた殺しのプロたちがプレデターの獲物にされるというドリームマッチ感が素晴らしく、第一作の次に面白いと感じた。モーフィアスが出ている場面が猛烈につまらなかったり、プレデター側でパワーのインフレが起こっていたりと、欠点もあるので完璧とは言い難いが、それでも良作レベルではある。

作品解説

幻の『プレデター3』

本作は、名うての戦士たちがプレデターの星に集められて狩猟の対象にされるという内容で、90年代にロバート・ロドリゲスが脚本を書いた幻の『プレデター3』がベースになっている。

それは『1』の勝者ダッチ(アーノルド・シュワルツェネッガー)と、『2』の勝者ハリガン(ダニー・グローバー)がプレデターの星に拉致されて、殺人ゲームの対象にされるというものだった。

ターミネーターとマータフの共演にはぐっとくるものがあったが、90年代のシュワは心臓手術などいろいろ大変だったこともあってか製作の目処が立たず、そのうちシュワがカリフォルニア州知事になったので実現は絶望的となった。

その後、2009年に『プレデター3』を修正する形で本作の脚本が完成し、『アーマード 武装地帯』(2009年)のニムロッド・アーントルが監督に就任した。

興行的にはまぁまぁだった

本作は2010年6月に全米公開されたが、絶好調だった『怪盗グルーの月泥棒』(2010年)と『エクリプス/トワイライト・サーガ』(2010年)に敗北して初登場3位。

その後も興行成績は伸びず全米トータルグロスは5200万ドル、全世界トータルグロスは1億2723万ドルと大ヒットにはならなかったが、コスト節約術に長けたロバート・ロドリゲスによる指導でもあったのか、4000万ドルという控えめな製作費だったので利益は出たと思う。

とはいえフォックスの期待値は越えなかったようで、主演のエイドリアン・ブロディも乗り気だったという続編が製作されることはなかった。

感想

シリーズでは2番目の面白さ

公開時に映画館で見て、それなりに満足した記憶はあるのだが、その後10年以上に渡って再見することはなかったので印象は薄かったのだろう。

いつ買ったのかも覚えていないが、なぜか我が家にはセル版Blu-rayもあるのだが、やはり放置の状態が続いていて一度も見ていない。

なんだけど、最近ディズニープラスでシリーズ最新作『プレデター:ザ・プレイ』(2022年)がリリースされたものだから、久々に本作も見てみることにした。

で、驚いたんだが、記憶していたよりもはるかに面白かった。『エイリアンvs』を含めると7作が製作されているプレデターシリーズだが、『1』に次ぐ面白さだと感じた。

やはりプレデターはジャングルでこそ魅力を発揮するものだし、人間側で殺しのドリームチームが結成されるというワクワク感や、適度なゴア描写など、コンパクトながらもプレデターシリーズに欲しいものがギュッと詰まっている感じがした。

ただしローレンス・フィッシュバーンが出てくる場面が猛烈につまらないなど出来にムラがあるのも事実だし、従来型よりも大型で強いバーサーカー・プレデターという新たな個体の登場も余計な気がした。

今までの奴を最強のままにしておけばいいのに、より強い個体を出してしまうとプレデターの戦力が相対化されてしまい、その存在感がかえって小さくなってしまうということは分かってもらいたい。

そんなわけで不満もあるにはあるので完璧な出来とは言わないが、全体的には健闘していたと思う。

プレデターズvs殺しのドリームチーム

人間の殺しのプロたちが集められ、突貫のチームを組まされる。

プレデター達が「こいつとこいつを出したら面白いんじゃない?」とトレーディングカード感覚で人選したと思うとちょっと間抜けだが、殺しのドリームチーム結成という構図にはやはり燃えるものがありますな。

  • ロイス(エイドリアン・ブロディ):傭兵だが、元諜報員ではないかと推測されている。メインウェポンはフルオート散弾銃。
  • イザベル(アリシー・ブラガ):イスラエル国防軍所属。メインウェポンはデジタルスコープ付きスナイパーライフル。
  • クッチーロ(ダニー・トレホ):メキシコ麻薬カルテルの暗殺集団所属。メインウェポンは短機関銃二丁持ち。
  • ニコライ(オレッグ・タクタロフ):ロシア軍スペツナズ所属。メインウェポンはガトリング銃
  • ハンゾー(ルイ・オザワ):日本のヤクザ。最初はベレッタで武装していたが、後に日本刀を手に入れる。
  • ウォルター(ウォルトン・ゴギンズ):アメリカ人の強姦魔。メインウェポンはナイフ。
  • モンバサ(マハーシャラ・アリ):シエラレオネの反政府武装組織所属。メインウェポンはAK-47
  • エドウィン(トファー・グレイス):医師を名乗っているが、実は…

このドリームチーム、多少の不仲や諍いこそあれど、ここはバトルフィールドだと認識した瞬間に全員が結束し、身勝手な主張をする者が皆無という点が良かった。

小異を捨てて団結しないとこの状況を乗り切れないというキャラたちの姿勢が緊張感を高めるし、殺しとか戦いを知り尽くした者らしい振る舞いは、見ていて気持ちがいい。

そして全員が何かしらの役に立つという点も素晴らしい。

この手の集団アクションだと、役立たずや自ら危険を呼び込むようなキャラが数人いるのが定番だが、本作に関してはそういうのがいないのでノーストレスで見ることができた。

医師のエドウィンは戦闘力ゼロでちょっとおぼつかないが、毒物に詳しいという特技で仲間の命を救ったので許せた。なぜ彼が異星の植物の毒性を知っていたのかは分からないが笑。

ハンゾーがカッコいい

そんな中でも、日本人視聴者として気になるのはハンゾーで、ジャパニーズ・マフィアと言いつつ韓国映画『悪い男』(2001年)を参照しているようにも思えたが、その名前を除けば勘違いした日本人観もなく、なかなか良いキャラだった。

ハンゾーが言葉を発することはなくて、それはただ無口なだけなのか、英語ができないからなのかは分からないが、ハリウッド映画でたまに出てくる外国語にやたら堪能なヤクザよりもリアリティがあって、これはこれで良かった。

ハンゾー最大の見せ場と言えばプレデターとのサシの勝負で、そのシチュエーションといい試合運びといい完璧。

みんなで逃げている中、それまでしんがりを務めていたハンゾーがくるりと踵を返して対決の意思を固めるんだが、それは仲間を逃がすためということでもなく、戦士としての血が騒いだためのように見える。

このまま逃げて体力を消耗するよりも、フルパワーでやれる状態でプレデターと一戦交えてみたかったのだろう。

対するプレデターも空気を読み、光学迷彩も飛び道具も使わない真剣勝負を挑む。この武士道精神がたまらない。

結果的に両者相打ちとなるのだが、事前にプレデターが手負いになっていたわけでも、反撃の機会をうかがってからの奇襲でもなく、プレデターとのサシの勝負で五分の戦いを演じた人間はハンゾーが初。

これは人類にとって偉大な功績ではなかろうか。

モーフィアスは不要だった

一方不要に感じたキャラはノーランド(ローレンス・フィッシュバーン)

10シーズンほど生き延びてきたというこの星のベテランで、プレデターの武装を持っていることから「2体か3体倒したことがある」という彼の話は事実だと思われる。

なのだが、この星で一体何を食べて生きてきたのかなど、重ねた年数分を埋められる情報がないので、ちょっと腑に落ちないキャラになっている。

お腹が出ているモーフィアスが演じると余計に「どうやってその体形を維持してきたんだ」という疑問がわいてくる。

ともかくドリームチームの前に現れたノーランドはこの星の状況を説明し、プレデターに見つからない隠れ家にも案内してくれるのだが、結局は裏切ってドリームチームを殺そうとする。

招き入れてはみたものの、彼らが飲み食いしているのを見て「物資が足らなくなる」と思い直して殺害を決意するわけだが、食い扶持が増えることくらい事前に分からないものか。

そして殺害方法もケチ臭くて、寝ている間にボヤを起こして殺そうとしたら、起きて気付かれるという何ともダサいことになる。曲がりなりにもプレデターを倒してきた戦士らしさは微塵もない。

しかもそのボヤで隠れ家をプレデターに発見されて殺されるのだから、最後まで何がしたいのかよく分からんキャラクターだった。

もしも本作がヒットすればノーランドの前日譚も製作する計画があったのかもしれない。そのためにローレンス・フィッシュバーンという有名俳優を起用したのだろうが、観客が魅力を感じるキャラクターにはなっていなかった。

プレデターは増えすぎ

そんなノーランドによるとプレデターは2種類いて、種族間の仲は悪いらしい。

実際、プレデター達のキャンプには武装を剥がされた肌着姿のプレデターが縛り付けられており、彼は壮絶ないじめを受けているということが分かる。

こいつがこれまで地球に現れていたタイプの顔をしており、我々が強いと思っていたプレデターは、実は彼らの社会では弱い方だったことが判明。

じゃあ彼をイジメているプレデターは一体何なのというと、一回り大きな体にクワガタのような長い牙を持つ、いかにも悪くて強そうなバーサーカー・プレデターと呼ばれるタイプである。しかも彼らは3体でチームを組んで行動している。

人間側にとってはなかなか厳しい状況と言えるのだが、監督の演出力の違いか「こいつらには勝てそうにない」という絶望感が第一作ほどはない。

敵は強くなっているはずなのに絶望感がない。これすなわちプレデターにおいてパワーのインフレが発生しているということでもあり、シリーズ作品としては好ましくない傾向である。

プレデターを闇雲に増やす必要はなく、単独行動で厄介なゲリラ戦を仕掛けてくるハンターという『1』『2』のキャラクターのままで良かったように思う。

それだとタイトルは『プレデターズ』ではなくなってしまうわけだが。

≪プレデターシリーズ≫
【良作】プレデター_マンハントものの教科書的作品
【凡作】プレデター2_キャラ確立に貢献した失敗作
【良作】エイリアンVSプレデター_両雄並び立つ
【駄作】AVP2 エイリアンズVS.プレデター_暗い、見辛い、酔う
【良作】プレデターズ_殺しのドリームチーム
【駄作】ザ・プレデター_要らない新機軸ばかり付け加えられたシリーズ随一の駄作
【駄作】プレデター:ザ・プレイ_政治的配慮をするプレデター

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