【駄作】プレデター:ザ・プレイ_政治的配慮をするプレデター(ネタバレあり・感想・解説)

クリーチャー・メカ
クリーチャー・メカ

(2022年 アメリカ)
プレデターの新作ではあるが、シリーズのアイデンティティをも揺さぶるほどの悪しき改変が加えられており、全然面白くなかった。ヒロインを勝たせねばならないという作劇上の都合が前面に出過ぎていて、戦力描写がおかしい。これはバトルアクションとして致命的な欠点だと思う。

感想

誰が生き残るのか見え見えスリラー

300年前のアメリカ大陸が舞台で、主人公はコマンチ族の少女ナル。

ナルは「女の子なんだから薬草を摘んでなさい」と言われることに反発し、自分でも狩りができるということを証明したがっているという物語が置かれている。この構図から、男たちが手こずるプレデターに彼女が勝利するというストーリー展開を辿るであろうことは完全に読めてしまう。

遡ること第一作では屈強な特殊部隊員たちが造作もなく倒され、あのシュワルツェネッガーですらどうなるか分からないという点に緊張感が宿っていたのに、本作ではドラマがあるべき方向に向かって一直線に流れて行ってしまう。何の捻りもなく。

あまりにも作り手側の政治的意図が前面に出過ぎていて、観客が完全に先を読めてしまうスリラーってのは如何なものなのだろうか。

女性の強さや機転を称える映画であること自体に反対はしないのだが、こうも分かり切った展開を辿って連続活劇としての面白さが犠牲にされているのでは本末転倒である。

しかも本作は『プレデター』。批評家からの賞賛を受けるために存在する映画ではなく、アクション映画好きが拍手喝采すれば御の字の映画のはずだ。

そんな志が低い映画を政治的に正しく作ってどうしたかったんだろう。何だかんだでシリーズを追いかけ続けている身としては激しく理解に苦しんだ。

相手によって手心を加えるプレデター

そしてプレデターの様子も何だか変。

まず本作のプレデターは大蛇や狼、グリズリーといった野生動物にも手をかけて強さアピールをするのだが、従前、プレデターは自然の摂理には介入してこなかったと思う。

彼らの狩猟対象はあくまで人間。

自然の摂理から外れた存在であり、食べるという純粋な目的もないのに高度な武器を使って殺生をする文明人の争いに介入することがプレデター達の美学だったと思うのだが、本作では随分とキャラクターが変わった。

そして現代の特殊部隊員をも血祭りにあげる能力を見せてきたプレデターにとって、300年前の武装なんておもちゃ同然だから、全力でぶつかりにいっていない。

上述した通り最終的にヒロインを勝たせなきゃいけないので、適宜手を抜いて戦っているように見えるのである。

毛皮目当てでバッファローを狩る悪辣なフランス人を襲う時には飛び道具や刃物を使ってかなり派手な大立ち回りを繰り広げるのに、コマンチ族のハンターとの戦いでは彼らからの一撃を喰らう隙を作るためなのか、武器を使わない。

そしてヒロインとの対決に至っては武器を使わないばかりか罠にもハマってくれるという大盤振る舞いで、「どうぞやっちゃってください」状態なので面白くなかった。

そもそもの対戦カードに無理がありすぎで、戦力描写をおざなりにし過ぎである。これはバトルアクションとしては致命的な欠点だと思う。

≪プレデターシリーズ≫
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【凡作】プレデター2_キャラ確立に貢献した失敗作
【良作】エイリアンVSプレデター_両雄並び立つ
【駄作】AVP2 エイリアンズVS.プレデター_暗い、見辛い、酔う
【良作】プレデターズ_殺しのドリームチーム
【駄作】ザ・プレデター_要らない新機軸ばかり付け加えられたシリーズ随一の駄作
【駄作】プレデター:ザ・プレイ_政治的配慮をするプレデター

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