【まとめ】主人公が頼りなさすぎる映画トップ5【ヒーロー(笑)】

雑談
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主人公が危機に陥ったり、どうやっても勝てそうにない敵や状況が出現したりで観客をハラハラさせることが映画の基本なのですが、これが行き過ぎると主人公が頼りなく見えるという別問題が発生します。今回は、そんな問題が発生してしまった作品を紹介します。

主人公が強すぎる映画トップ5【ハラハラ感皆無!】

第5位 『ハード・トゥ・キル』(1990年)

主人公:メイソン・ストーム(スティーヴン・セガール)

一度死にかけるセガール

メイソン・ストーム刑事(スティーヴン・セガール)は上院議員がマフィアに殺人依頼をする場面を隠し撮りするのですが、直後に家を襲撃されて妻を殺され、自身も昏睡状態に陥ります。同僚刑事の機転によりメイソンの死は偽装され、身元不明の重体患者として病院に収容されたのですが、7年後、ストームは目を覚まして復讐を開始します。

刑事ニコ/法の死角』(1988年)に続くセガール主演2作目の本作では、セガールが銃弾に倒れるという現在の価値観からすると絶対にありえないことが起こります。実は、決して傷つかず、ピンチにも陥らないという最強のセガール像が確立されたのは本作の次に製作された『死の標的』(1990年)からであり、本作はアクション映画の標準フォーマットで作成された非常に珍しいセガール映画なのです。

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そもそも油断がすぎる

ただし、このメイソンが並みのアクションヒーローよりも隙だらけという点が気になりました。メイソンは隠し撮りの直後にマフィアたちから追われ、敵の慌てぶりから大変な証拠を握ったことは分かる状態だったにも関わらず、帰宅すると呑気にテレビをつけてアカデミー賞授賞式の生中継を見て、奥さんを抱きます。家に誰か来るかもという、この場面なら当然抱くべき警戒心が皆無とはどういうことなのかと思ってしまいました。

これは後のセガールのイメージとの落差も影響しているのですが、「なんでそんなことまで分かるんだ!」と敵や観客をも驚かせるほどの洞察力と、どんな状況でも敵を返り討ちに遭わせる対応力を考えると、易々と敵の手にかかってしまうセガールがかなり間抜けに見えてしまっています。

セガールアクションが不足しすぎている

これは全体の構成の問題なのですが、銃弾に倒れ、昏睡、覚醒、リハビリ、完全復帰という話であり、セガールが動けない時間で結構な尺をとってしまうので、セガールアクションが全然足りていません。そのことが、「普段のセガールなら雑魚を千切っては投げてどんどん黒幕に迫っていくのに」と観客にもどかしさを与える原因となっています。

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第4位 『ガントレット』(1977年)

主人公:ベン・ショックリー(クリント・イーストウッド)

刑事なのに勘が悪すぎる

フェニックス市警のショックリー刑事(クリント・イーストウッド)は、ラスベガスからマリー(ソンドラ・ロック)という娼婦の護送を命じられる。現地に行ったショックリーは、怯えきったマリーから「自分は命を狙われている」と言われ、その言葉通りに襲撃を受ける。

本作の主人公ショックリーは、イーストウッドの当たり役ハリー・キャラハンとは打って変わって、凡庸な刑事として描かれます。冒頭、朝まで飲んで無精ひげのまま出勤するショックリーの姿が描かれ、続く警察署内での場面では、誰からも敬意を受けていないことが分かります。

そうは言っても演じているのがイーストウッドなので、頭の固いお偉方からは評価されていないだけで現場での対応力がめちゃくちゃ高いのかと思いきやそういうわけでもなく、マリーが明らかに普通ではないテンションで身の危険を訴えてもこれに取り合おうとしないし、いざ襲撃に遭っても狼狽しているだけで、むしろ冷静に対応しているのはマリーの方という有様です。

また、あらゆる機関に手を回せる巨大な敵であることが分かっているのに、敵に待ち伏せされる危険性の高いマリーの家にいったん避難するなど、愚かな判断が目立つ点でも頼りなさ全開なのでした。

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第3位 『ターミネーター3』(2003年)

主人公:ジョン・コナー(ニック・スタール)

うらぶれ感のある歪な大作

「審判の日は回避されたのではなく、延期されただけだった!」という超絶ご都合主義で強引にシリーズをリスタートした本作ですが、そこにあったのは1億5000万ドルという史上空前の予算を使いながらも、どこかうらぶれ感のある歪な大作でした。

シュワは必死のワークアウトで『ターミネーター2』(1991年)と同じ体重にまで戻してはいるものの、56歳という年齢には勝てず全盛期と比較すると肉体が萎んでおり、そのことを説明するために前作までのT-800のマイナーチェンジ版であるT-850という設定が与えられています。敵となる女サイボーグT-Xは、未来の武器の持ち込み禁止というシリーズのお約束を破ってまでプラズマ砲搭載の最強ターミネーターという設定が与えられているものの、スペックで劣るはずのT-1000のインパクトに及んでいません。

そして、審判の日の前日の物語という切羽詰まった舞台が与えられながらも、世界規模の危機が迫っているというスケール感がうまく表現されておらず、ひとけの少ない場所でT-850とT-Xが戦っているだけという、なんともこじんまりとした印象を観客に与えています。

あの美少年は一体どこへ

そんな作風を象徴するのが主人公・ジョン・コナーの落ちぶれ加減であり、『ターミネーター2』では美しさの絶頂にあったエドワード・ファーロングの華麗な美少年ぶりから、猿顔で華のないニック・スタールへの変更は衝撃的ですらありました。

実は制作サイドはエドワード・ファーロングの起用を考えていたのですが、当時のファーロングは薬物問題などあっていつ逮捕されてもおかしくない状況にあり、これほどの大作で主演俳優が撮影の途中でしょっぴかれるかもしれないというリスクはさすがに許容できないことから、俳優を一から選び直したという背景があります。

それにしても、です。スタールの見た目はファーロングからかけ離れすぎており、『ターミネーター2』でのジョン・コナーと連続した存在として受け止めることができなくなっています。

弱くヘタレなジョン・コナー

核戦争後の世界で人類抵抗軍を率い、人類滅亡寸前の状態からスタートして最終的には機械軍への勝利にまで持ち込んだ戦略・戦術の鬼。部下のカイル・リースをして、ジョンのためなら死ねるとまで言わせたカリスマ的指導者。それがジョン・コナー像なのですが、本作でニック・スタールが演じたジョンは弱くヘタレです。

肉体労働で日銭を稼ぐ毎日。バイクの自損事故を起こしても無保険なので病院に行けず、動物病院で薬を盗んで自分で治療。T-Xの襲撃を受けても為す術がなく、戦いの中で成長するのはむしろ将来の奥さんとなるケイト(クレア・デインズ)の方であり、ジョンは最後まで逃げ惑っているだけです。加えてT-Xの第一目標はケイトであり、もはやターミネーターのターゲットからも外され、主人公としての威厳が皆無という状態となっています。唯一T-850だけですよ、「彼は人類抵抗軍のリーダーだ」と言い続けてくれるのは。見るも無残なジョン・コナーの姿に、公開当時は批判が殺到しました。

ただし映画を最後まで見て制作意図を理解すると、弱くヘタレなジョン・コナー像は『ターミネーター2』の後にジョンが何をして生きてきたのかという点を追及した結果として非常に合理的であることや、本作で彼が活躍しないことにも納得がいくので、本作は決して駄作ではありません。むしろ、ジョン・コナーの後日談としては優れていると言えるほどであり、『ターミネーター2』と同じものを期待さえしなければ、なかなかイケる続編としてオススメできます。

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第2位 『スナイパー/狙撃』(1996年)

主人公:ワックスマン(ドルフ・ラングレン)

凄腕スナイパーらしからぬ甘さ

世界各地で暗殺任務を請け負ってきた凄腕スナイパー・ワックスマン(ドルフ・ラングレン)。今回は車に乗ったターゲットを狙撃せよとの命が下り、フリーウェイを見渡せる立地にあって、2名の警備員以外のひとけもない建設中のビルの最上階に潜入します。現場で女性スポッター・クレッグ(ジーナ・ベルマン)と合流して車が通過する時間を待っていると、実は強姦魔だった警備員の一人がクレッグに襲い掛かってきます。

本作のワックスマンは殺しに疑問を持ち始めたスナイパーという設定なのですが、冒頭では無関係な少女を巻き込んでしまうことに躊躇して政治家の狙撃に失敗し、本筋でも車の狙撃ができず、またスポッターに襲い掛かってきた強姦警備員を殺すこともしないという人情家ぶりで、殺しの世界に生きてきた男感が限りなくゼロに近くなっています。

少女を巻き込むかもしれないという冒頭は仕方ないにしても、不測の事態が発生したわけでもない車の狙撃任務は問題なくやりきるべきだったし、自業自得の強姦魔は殺しておくべきでした。そのレベルでの殺生すらできないのなら、そもそも狙撃任務なんて引き受けるなと。

しかも、終盤ではワックスマンを殺すために武装集団が屋上から最上階に雪崩れ込んでくるのですが、それまでの大甘な対応とは打って変わってここでワックスマンは兵士達をバリバリと撃ち殺すのだから、まったく筋が通っていません。

そして、武装集団はワックスマンがビルに入る前から屋上で待機していたということになるのですが、その存在に気付きもしなかったワックスマンの勘は鈍すぎやしないかという点も、ガッカリ感を余計に高めています。

暗殺組織もおかしい

おかしいのはワックスマンだけではなく、彼の背後にいる暗殺集団もです。

その組織にはスーパーバイザーと呼ばれるトップがいて、ワックスマンはその指示に従うコマのひとつという設定。実は今回の狙撃任務は組織の言うことを聞かなくなりつつあったワックスマンをテストし、もし不安が的中した場合に備えて彼を始末するための準備もしていたという裏もありました。加えて、警備員の一人に偽装してスーパーバイザーが紛れ込んでいたというドンデンもあるのですが、たった一人のスナイパーを抹殺するためにここまでの手間と人材を費やす組織って一体どうなのという純粋な疑問がどうしても拭えません。話にまったく筋が通っていないのです。

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第1位 『ボディガード』(1992年)

主人公:フランク・ファーマー(ケヴィン・コスナー)

クライアントに無茶ばかり言うボディガード

人気歌手レイチェル・マロン(ホイットニー・ヒューストン)に殺害予告が送り付けられたことから、レーガン大統領の警護も務めた凄腕のボディガード・フランク・ファーマー(ケヴィン・コスナー)が雇われる。当初、レイチェルはフランクを邪魔者扱いしていたが、ライブハウスで暴徒化したファンから命を救われたことから、フランクへの信頼を置き始める。

ご存知ケヴィン・コスナーの代表作にして、1992年に全世界年間興行成績第2位を記録した大ヒット作であり(1位は『アラジン』)、世間的には「ケヴィン・コスナーに守られたいわ~」という女性を大量に出した頼れるヒーロー像の作品だと思われているのですが、本作の主人公フランク・ファーマーは相当ヘンです。

雇い主であるレイチェルに確認もしないまま屋敷の大改造を始めるわ、危険だから公演をすべてキャンセルしろ、アカデミー賞授賞式に出席するななど、あまりに無茶苦茶なオーダーばかりを出します。そりゃ、芸能活動をしなければ外敵から襲われるリスクも減るでしょうよ。ただし、そもそもボディガードってどうしても出て行かねばならない際の護衛として雇われるものであって、外に出て行かないのであればその存在意義って何なのってことになります。

感情的すぎるボディガード

このフランク、レイチェルの初対面時にはプロとは何ぞやというご高説をたれるのですが、そんな言葉とは裏腹に言動が非常に感情的です。

前半、ライブハウスのファンから救ったことでレイチェルと打ち解け、その後すぐに夜を共にするフランク。ちょっと早すぎじゃないかと思って見ていると、翌朝起きるとレイチェルに向かって「やっぱこういうのは良くないわ。プロに徹しなきゃ」と言い出します。やることだけやって今更そんなこと言うなよって感じなのですが、フランクに迷いはありません。

困惑したレイチェルはフランクの元同僚のポートマンを当て馬に使ってヤキモチを妬かせようとするのですが、するとフランクはめちゃくちゃ機嫌を悪くし、運悪くパトロールルートにいたおっさん(ストーカー事件とは無関係)をボコボコに殴って八つ当たりをします。

繰り返しになりますが、プロとは何ぞやというご高説は一体何だったのでしょうか。

その他にも、警護対象のレイチェルも感情的すぎておかしなことになっていたり、犯人の動機が理解不能だったりと、いろいろとツッコミながら楽しめる作品なので、未見の方は心してご覧ください。

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