レッドブル【良作】すべてが過剰で男らしい(ネタバレあり感想)

(1988年アメリカ)
冷戦時代、アメリカへ逃亡したグルジア人マフィアを追ってシカゴへやってきたロシア人警察官と地元のヤンキー警察官によるバディ・アクション。

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赤の広場でのロケが許可された初のハリウッド映画

東西冷戦時代末期に製作され、赤の広場でのロケが許可された初のアメリカ映画という快挙も成し遂げた作品なのですが、ソ連に対するリスペクトは皆無で共産圏を小馬鹿にしたセリフが多く、よくぞこの内容でロケの許可を取り付けたものだと感心しました。

さらには、マリオ・カサールはバリバリの反共映画である『ランボー3』も同時期に製作していたのですが、そんな状況でよくソ連政府との交渉をまとめたものです。映画プロデューサーとしての評価は割れている御大ですが、ビジネスマンとして各方面と交渉し、プロジェクトを軌道に乗せるという点では、極めて優れた人物だと評価できます。

不器用なシュワと器用なベルーシのコンビは合理的

また、本作はキャスティング面でも成功を収めています。スターとしての頭角を現し始めていたものの、強烈なドイツ訛り(英語圏ではドイツ訛りは怒っているように聞こえるとか)と演技力不足が懸念されていた当時のシュワに無愛想なソ連刑事役を与え、一方コメディアン出身で芸の幅の広いジェームズ・ベルーシに話を進めさせるという布陣の取り方は合理的だし、二人の間ではちゃんと化学反応が起こっています。ベラベラと軽口を叩くアメリカのはみだし刑事の様子を、ソ連の官僚的な刑事がムスっとした表情で眺めるという構図がなかなか笑わせるのです。また、二人の間で友情が芽生えるという定番の展開も無難にこなせており、バディ映画としては水準レベル以上の質は確保されています。

良くも悪くも大味な80年代アクション

内容は、良くも悪くも標準的な80年代アクションです。煮詰めきれていない設定、たまに矛盾のある展開、主人公特権の乱用、スピード感のない鈍重な見せ場と、『ダイハード』登場以前のアクション映画ってこんな感じだったよなぁと懐かしくなりました。この点に郷愁を感じられる世代であるかどうかで本作への評価は変わると思うのですが、この緩い空気、私は嫌いではありません。

また、本作には過剰な点がいくつかあって、それが良いアクセントとなっています。やたら広いサウナでふんどし姿のムキムキ数人が殴り合いをする冒頭のアクションは訳の分からん迫力に満ちているし、ガラスを突き破るとそれまでのサウナからは一転して一面雪景色という急激な場面転換も印象的でした。よくよく考えてみるとこの殴り合いは本編にほとんど関係しておらず、本当に訳の分からんアクションなのですが、80年代はそれでもよかったのです。

主人公がバカでかい拳銃を持ち歩いていたり(ただし「92ミリ口径」という戸田奈津子氏による日本語字幕は誤り。92ミリだと戦車砲よりも巨大になってしまいます)、対するギャング団のメインウェポンがショットガンだったりと、「大きいことは良いことだ」という路線からブレない姿勢が面白かったです。

ウォルター・ヒルお得意のバスチェイスの最終形

そして、この過剰路線の極め付けがクライマックスのカーチェイスであり、ウォルター・ヒルの大好きなバスを使ったチェイスなのですが、追う方も追われる方もバスという点が本作の新機軸。猛スピードで市街地を爆走する大型バスを、もう一台の大型バスが追いかけるという前代未聞の構図は、現在の目で見ても迫力満点でした。ウォルター・ヒルのマッチョイズムとマリオ・カサールの大作主義が高いレベルで融合した奇跡的な見せ場となっています。

傑作の誉れ高い日曜洋画劇場版吹替

日曜洋画劇場の吹き替えが『コマンドー』と並ぶほどの傑作であることでも知られています。シュワ=玄田哲章氏とベルーシ=富山敬氏の掛け合いが最高であり、吹き替えで見れば笑いの量が3倍以上に増えます。

  • (ベルーシが空港でナンパする場面で)今夜暇かい?→糞して寝な→ああどうも、最近のねーちゃんはキツイや
  • (ロシア人の囚人を拷問するシュワを見たベルーシが)お友達みたいだね。ボディランゲージで愛情示してる。
  • (シュワの腕時計のアラームが鳴ったことに対してベルーシが)肉の配給時間か?

現在リリース中のDVD・Blu-rayにはこのバージョンが収録されているので、午後のロードショーでの再放送を待たなくてもこの吹き替えを楽しむことができます。良い時代になりましたね。

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