【凡作】ロボコップ3_オムニ社がうっかり過ぎる(ネタバレあり・感想・解説)

クリーチャー・メカ
クリーチャー・メカ

(1993年 アメリカ)
崩壊寸前の世界観、敵のショボさ加減などいろいろ辛かった第3弾ですが、狂ったように盛り上がるラストバトルがとても楽しく、その一点だけは最高でした。

作品解説

お蔵入りなどいろいろ辛かった3作目

前作『ロボコップ2』(1990年)は批評的には苦戦したものの、そこそこ稼いだのでその公開直後から第三弾の企画はスタートしていました。

オライオンピクチャーズは『ドラキュリアン』(1987年)の監督フレッド・デッカーと『リーサル・ウェポン』(1987年)の脚本家シェーン・ブラックの二人に脚本を執筆させるつもりでいました。デッカーとブラックは大学時代のルームメイトであり、後に『ザ・プレデター』(2018年)を共同で製作することになります。

しかし当時のブラックは『ラスト・ボーイスカウト』(1991年)にも関与していた上に『ロング・キス・グッドナイト』(1996年)も執筆中で、さらには個人的な事情でメンタルを病んでいたことから、デッカーのみがこの企画に参加しました。なお、ブラックは俳優として本作に参加しています。

その後『ロボコップ2』(1990年)の原案を書いた漫画家のフランク・ミラーが復帰し、ミラーは『2』本編で未使用だったアイデアを再編成しつつ本作の原案を執筆しました。

しかし『2』に引き続き本作でもミラーの脚本は大幅に書き換えられ、さすがに失望したミラーは映画界に関わらないことを決意。ロバート・ロドリゲスの熱意に負けた『シン・シティ』(2005年)まではハリウッドとの付き合いを断つこととなります。

1992年公開を目指して製作は進み、1991年内には撮影を終えていたのですが、80年代後半から財政難に陥っていたオライオンピクチャーズが1992年に破産したことから、本作の公開は一旦棚上げされました。

シリーズ最低の興行成績

その後1993年夏公開の目途は立ったのですが、『ジュラシック・パーク』(1993年)との競合を避けるために再度延期され、1993年11月5日に全米公開されました。

『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』(1993年)と『フレッシュ・アンド・ボーン/渇いた愛のゆくえ』(1993年)に敗れて初登場3位、翌週には8位にまで落ち込み、全米トータルグロスは1069万ドル。『1』の5342万ドル、『2』の4568万ドルから大幅に見劣りする金額であり、興行的には失敗しました。

なお『ロボコップ』人気の根強い日本では全米に先駆け1993年4月18日に公開されており、こちらでは初登場1位を記録しています。

感想

地上げが終わっていなかった!

冒頭、デトロイトの貧困地域に住む少女ニコ(レミー・ライアン)の一家がオムニ社に雇われた私設軍隊Rehab(リハッブ)に襲われます。部屋のテーブルにはオムニ社発行の立ち退き命令書。

デルタシティと呼ばれる大規模開発プロジェクトは第一作の時点から言及されていたのですが、なんと第三作目に突入しても建設開始どころか地上げすら終わっていなかったという衝撃の事実が発覚します。

前作でオールドマン会長(ダン・オハーリー)はデルタシティの治安維持用と言ってロボコップ2号を作ることにご執心でしたが、実はそんなものなんて作っている場合ではなく、あの時点でなぜ地上げを一生懸命やらなかったんでしょうか。

肝心のデルタシティが出来ていないのに先走って作ってしまったロボコップ2号(『ロボコップ2』(1990年))

しかもそのロボコップ2号が暴れて株価暴落、日本企業カネミツに買収されるに至ったのだから、カネミツ会長(マコ岩松)ならずとも「お前らは馬鹿か!」と一喝したくなります。

しかもオムニ社が持っている法的権利はあと数日で失効するとのことで、夏休み最終日に半泣きで宿題を仕上げる小学生の如く、リハッブを使って強硬な地上げを進めるオムニ。なぜそれほど切羽詰まるまで放置していたのかはよく分かりませんが、ともかく死人を出してでも地上げを完了させてやるという必死さだけは伝わってきます。

そしてオムニの馬鹿だけでは不安だからと言って、虎の子の忍者サイボーグ オートモ(ブルース・ロック)を送り込むカネミツ。

彼らが今回の悪役となるのですが、背景が酷すぎましたね。

あとどうでもいいことですが、思いっきり手書きの「立入禁止」や、「カ」をフィーチャーしたロゴなど、カネミツ周りのデザインがいちいち雑だったことが気になりました。

清々しいほどに手書きの「立入禁止」
「カ」をあしらい、分かりやすいにも程があるコーポレートマーク

すぐポンコツ化するロボコップ

そして今回はロボコップも酷い。

ED209との死闘とスワットからの集中砲火のコンボでボロボロになった『1』、敵の手に落ちてバラバラに切り刻まれた『2』とロボコップのポンコツ化はシリーズの恒例行事ではあるのですが、今回は大した活躍もしないうちからポンコツ化します。

しかもリハッブ隊長マクダゲット(ジョン・キャッスル)が発射したグレネードランチャー直撃という、ED209とかロボコップ2号の攻撃と比べると屁でもなさそうな原因でポンコツ化し、中盤はほぼ寝たきり状態になるのだからガッカリでした。

唐突過ぎる世界観

で、第三作目ともなると世界観にもガタがきています。

第一作目はSFではあるものの社会風刺的な要素も強く世界観は地に足が付いたものであり、現実世界の延長として捉えられるという絶妙な塩梅を実現していました。そして第一作の作風を概ね引き継いだ第二作にも大きな破綻はなかったのですが、本作でいよいよやらかしてしまいましたね。

オムニ社は貧民街にトラックで乗り付け、住民たちを銃で脅して収容所に強制連行。逆らう者には容赦なく発砲して殺害も厭いません。

ここまで来ると法とか世論みたいなものは無関係な異世界に突入していくのですが、このアプローチってロボコップを法的にどう位置づけるのかという議論をし、メディアを操ることで大企業が世論誘導をしていた第一作以来の精神に反しています。

同じく、デトロイトの一角にはパンクギャングと呼ばれるヒャッハー達の巣窟があり、警察官すらそこには立ち入らないという設定になっているのですが、これまた治安というテーマを現実的な形で解体してSF素材に変換していた第一作とは対照的です。

本作の世界観はあまりに唐突過ぎて、理解が進みませんでした。

突き抜けたラストバトルが楽しい

そんなこんなでず~っとグダグダな展開だったのですが、ヤケクソのように突き抜けたラストバトルのみ目が覚めるような出来でした。

地上げの最終日だし、ここで一気に住民を追い出すぞと気合を入れるリハッブ。オムニ社は警察事業も所有しているというご縁もあって警察官達に助っ人を依頼するのですが、あえなく断られます。困ったリハッブはパンクギャングに「好きに撃っていいぞ」と言って装備を持たせます。

一方リハッブからの協力要請を断った警察官達は、市民のレジスタンスに合流して最終決戦に備えます。ここに警察官+レジスタンス VS リハッブ+パンクギャングという燃える図式が唐突に出現。

そしていざ開戦すると戦車は出てくるわ、おばあさんはマシンガンを乱射するわと、チャールズ・ブロンソン主演の『スーパー・マグナム』(1985年)のラストに匹敵する出鱈目市街戦が炸裂し、私の血はたぎりました。

オムニ社の非道には老婆も銃を取る!

そしてテンションがピークに達したところで飛来するロケットパック装備のロボコップ。そのタイミングと言い、一瞬で戦況をひっくり返す痛快さと言い、ほぼ完璧。ヒーローものはこうあって欲しいと思うほどのいい意味での出鱈目さと痛快さが詰まった素晴らしい見せ場でした。

そこから先はオートモとロボコップが実にいい加減な形で決着を付けたり、オートモは核自爆装置搭載でしたという突如飛び出すカメバズーカ設定にポカンとしたりで余りいい印象はなかったのですが、まぁ市街戦が面白かったので良しとしましょう。

≪ロボコップ≫
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