ロッキー4/炎の友情【凡作】良いのはアクションだけ(ネタバレあり感想)

(1985年 アメリカ)
ソ連からアマチュアボクシングの世界チャンピオンであるイワン・ドラゴが訪米し、プロボクシングの世界チャンピオンであるロッキーとの対戦を要求する。政治色を帯びた対戦にロッキーは乗り気ではなく、引退していたアポロが代わりにリングに上がることになるが、ドラゴはアポロを本気で潰す気で来ていた。

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かつてはテレビで頻繁に放送され、シリーズ中もっとも馴染のあった本作ですが、シリーズを連続で見ると、本作だけが浮いていることが分かります。ドラマ性は皆無だし、例のテーマ曲は使われていないし、ロッキーが戦う必然性のある敵ではないし、シリーズ番外編とでも言うべき内容となっています。

前半のセレブ描写がしんどい

『3』の時点でもたいがいだったバルボア一家の成金趣味にはさらに拍車がかかり、ありえないほどの豪邸に住み、高級スポーツカーを乗り回し、年端もいかぬ息子に当時としては高級品だったビデオカメラを買い与え、ポーリーには元祖ペッパーみたいなロボットをプレゼント。

シベリアの山奥で修行(トレーニングというよりも修行でしたね、あれは)する後半との落差を付けるために前半パートをあえてこうしていることは分かるのですが、それにしても成功に有頂天になってクラバー・ラングに敗北した『3』の反省は一体どうなったということが引っかかりました。

先に仕掛けたのはアメリカ側

そこに、赤くて悪くて汚い国から殺人マシーン・イワン・ドラゴがやってきます。ここから両国家の威信をかけたボクシング対決が始まるのですが、最初に仕掛けたのはアメリカ側なんですよね。

スポーツ交流を目的にやってきたドラゴに悪意ある質問をぶつける記者達、エキシビジョンマッチを組んだアポロは後に岡田圭右のハッピーボーイの原型となる過剰なパフォーマンスでドラゴを威圧し、観客たちは星条旗を振って熱狂的にアポロを応援。

ドラゴ陣営は政治目的ではなくスポーツをしに来たのだと事前にあれだけ念を押していたのに、アメリカ側が政治色を全開にしてしまうわけです。ここまでやられれば、ドラゴが殺意を抱いても不思議ではありません。

ロッキーの人格が変わりすぎ

そして、ほぼ自業自得で殺されたアポロの弔い合戦の決意を固めたロッキーはドラゴ戦を決意しますが、彼を引き留めるエイドリアンに対して「ファイターとして生まれた自分の本質は変えられない」と言います。

ロッキーってそんな人でしたっけ?高利貸しの手伝いはするが、気が良くて債務者の指を折れと命令されても折れない男、ドン臭くて、バカにされてもノホホンとしている男、それがロッキーだったと思います。ここに来て彼の根本的な人物像が変わったことには違和感を覚えました。

またこの場面は構成もおかしくて、エイドリアンを振り切って家を出ると、”No Easy Way Out”の悲しくも勇ましい歌詞とアポロとの思い出をバックに車を走らせるロッキー。どう見てもこのまま敵地に乗り込む勢いなのですが、次の場面では自宅の寝室で息子とお話をしており、実はただのドライブだったという素っ頓狂なことになっていました。

後半の盛り上がりは素晴らしい

ただし、ソ連に舞台を移してからの盛り上げ方は尋常ではなく、アクション映画として本作は極めて真っ当な仕上がりとなっています。

ドラゴのパワー描写は的確で、「こんな敵にどうやって勝つんだ」と観客にも不安を抱かせます。私がこんなに不安になったのは、キン肉マンで悪魔将軍が登場した時以来です。両者のトレーニング方法の対比もベタながらよくできており、科学により管理されたイワンと、野生の本能に従ったロッキーという構図をうまく見せられています。ファイトシーンの迫力はシリーズ随一で、大変楽しめました。

【余談】ドン・シンプソン風MTV映画になった理由

前述した通りロッキーのテーマが使われていない異色作であり、歌詞付きの楽曲によって全編をデコレートしたMTV風の演出によってかなり雰囲気が変わっているのですが、これはドン・シンプソンからの影響であるように感じました。

スタローンとドン・シンプソンの関係

本作の前年に公開されたドン・シンプソン製作の『ビバリーヒルズ・コップ』は元々スタローンが主演する予定であり、スタローンは脚本のリライトにまで参加していたのですが、そもそもコミカルな刑事ものを意図した企画だったにも関わらずスタローンはこれをシリアスに改変した上に、アクションを増やしたために製作費も吊り上がる見通しとなったことからシンプソンはスタローンとの話を白紙に戻してエディ・マーフィに変更したという経緯があります(スタローンの脚本は後に『コブラ』として制作されました)。

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”Eye of the Tiger”の大ヒット が与えた影響

ここで面白いのがスタローンとシンプソンの関係性であり、シンプソンはMTV出身の監督を重用することで知られるプロデューサーですが、彼がその方向に振り切るきっかけとなったのは『ロッキー3』のテーマ曲”Eye of the Tiger”の大ヒットでした。

これに触発されて映画には特徴的な主題歌が必要であるとの認識を持ち、その方針を実行に移した『フラッシュ・ダンス』が映画・主題歌ともに大成功したことでした。そして、スタローンは『ビバリーヒルズ・コップ』でシンプソンと一時期仕事をしたことでその方針を学習し、自身の企画である『ロッキー4』に反映したのではないかと思います。

ブリジット・ニールセンとドン・シンプソン

さらに余談ですがスタローンとシンプソンの因縁はそれだけに留まりませんでした。

『ビバリーヒルズ・コップ2』制作の際にインパクトある悪役を求めたシンプソンはブリジット・ニールセンこそが適役だと考えたのですが、ニールセンは第一作の紆余曲折で気まずい関係になっていたスタローンの奥さんでした。

しかし男気溢れるスタローンは過去の経緯を水に流してニールセンの出演を快諾したのですが、あろうことか撮影中に監督のトニー・スコットとニールセンが不倫をしてしまい、スタローンが離婚する理由となったのでした。

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